日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.141

1.第2期PXE養成講座が修了
2.第4回PX寺子屋開催
3. 今後の予定

1.第2期PXE養成講座が修了


第5回PXE養成講座を2月13日、オンラインで開催しました。2019年度からスタートしたPXE(Patient eXperience Expert)ですが、第2期の講座は今回で修了となります。

日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では、医療現場などで患者視点の医療サービスの提供を実現していただく人材育成を行っています。全5回の講座は、PX(Patient eXperience;患者経験価値)とPS(Patient Satisfaction;患者満足度)の相違点や関係性、PX向上に必要なコミュニケーションなど、PXを体系的に学ベる構成となっています。

 

この日の講座は、「PXを高めるためのコミュニケーション」がテーマ。当研究会理事で、医療コーチングを実践している安藤潔さんと出江紳一さんが講師を務めました。「患者にとって心地よいコミュニケーションとは、不安や心配に寄り添うこと。患者が話しやすい環境づくりが医療現場に求められています」と安藤さんは説明したうえで、病院にかかった時の自分あるいは家族の体験について話すペアワーク、PXを高めるコミュニケーションについて話し合うディスカッションを行いました。

PXは患者中心の医療を評価する指標ですが、その実践においては患者の「病いの語り」を聞くことが重要だとされています。講座では患者から情報を引き出す「問診」と、どのような治療を受けたいのかといった患者自身が話す「語り」との違いについても説明がありました。患者と医療者とのコミュニケーションのなかで語りが生み出されていること=PXが高い状態と捉えます。

このような前提のもと、対患者コーチングの具体的な手法についても紹介がありました。「医療コーチングでは患者の希望、さらにその先の目標などを聞きますが、『傾聴』『承認』『質問』を意識して能動的に働きかけようにします」と出江さんは指摘。結果として患者の気づきを促し、行動変容をもたらし、目標達成をサポートすることにつながっていくといいます。

コーチングの概要を学んだうえで、普段のコミュニケーションと比較して共通点、異なる点などを挙げるワークでは、参加者から「自分では話を聞いているつもりだったが、相手の受け止め方は違うかもしれない」「傾聴、承認はできても、質問、さらに提案といったところまではできていない」「目標達成のために提案するとして、相手にとって達成できる内容かどうかも考えなければならない」といった意見が聞かれました。対患者に限らず、日常のコミュニケーションのあり方を振り返る機会になりました。

 

PXE養成講座では毎回ホームワーク(課題)の提出が必須となっています。今回は、周囲のどなたかに対して「現在気になっていること」をテーマにしてコーチングを実施。うまくいったこと、うまくいかなかったことを報告するという内容でした。

受講者は講座参加と全5回の課題提出をしたうえでPXEの認定試験を受験、合格者はPXEとしてそれぞれの職場や当研究会で活躍していただいています。2021年度、第3期は7月から開講します。受講生の募集をすでにホームページ上で行っております。下記リンクから申し込み可能です。PXについて学びたい、PXに医療現場で取り組みたいという方のエントリーをお待ちしています。

 

Link:https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

 

2. 第4回PX寺子屋開催


PX研究会の勉強会は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、昨年から「PX寺子屋」と題し、オンラインでの開催となっています。4回目の寺子屋を2月13日に実施しました。

 

初めての参加者向けに毎回、PXについて紹介する「PX概論」を設けています。研究会の運営メンバーが毎回演者として、それぞれの視点からPXを語っています。今回は代表理事の曽我香織さんが「PXとは何か?+α」ということで話しました。PXの定義やなぜPXに取り組むのか、PSと何が違うのかといった説明に加えて、コロナ禍でのPXについても触れました。

COVID-19によるPXへの影響として、外資系コンサルティング会社の調査結果を紹介。医療機関のCOVID-19対応が期待に添わない場合、患者の64%は受診する医療機関を変更することが予想されていて、COVID-19対応に満足していない患者は満足している患者より1年以上治療が遅れる可能性があると指摘されています。COVID-19への対応次第では患者離れに加えて、患者が不利益を受けることが想定されています。つまり、COVID-19対応はPXを決定づける大きな要素となっていて、PXに注力しなければ収益減など経営に大きく影響するということです。

 

今回の寺子屋では初の試みとして「PX研Book Club(ブッククラブ)」を行いました。ブッククラブとは、参加者が特定の本を事前に読んできたうえで意見を交わす、話し合いの場です。欧米では長い歴史があり、アメリカのPX推進団体「The Beryl Institute」でも定期的に開催しています。当研究会のブッククラブでは、PXについての考えを深められる本を課題図書にして、話し合いのなかでPXにつながる新たな知見、気づき、学びなどが生まれたらいいなと思っています。

ブッククラブのいいところとは、次の4つだと考えています。

☆楽しい:ほかのメンバーとのやりとり、話し合いから自分を表現できる

☆読むことが好きになる:本が好きになる、読む力がつく

☆学びがある:他者の理解・解釈・問いから読みが深まる、読解レベルの向上

☆人間関係が築ける:本の話し合いを通して他者を知れる、自分を知ってもらう

 

今回の課題図書は、『対話する医療-人間全体を診て癒すために』(孫大輔著 さくら舎)でした。大学で医療コミュニケーションを教え、家庭医・総合診療医でもある著者が実践している家庭医療、地域・コミュニティ活動、医学教育などについて、「対話」をキーワードに語られています。

ブッククラブでは4~5人のグループに分かれて、「この本から学んだこと(新しい発見)、気づかされたこと」「患者中心の医療の実現に向けて患者、医療者それぞれの役割を考える」の2点について意見交換を行いました。各グループからはこの本のテーマである「対話」について、「会話との違いとして、対話ではその人の背景が大きく影響する。クリエイティブさが求められる」「対話は間が合う、合わないといった人と人との関係性がかかわってくる」「医療における対話は大事だが、人によって意識はバラバラである。食べログのように外から見える化することで、その意識が変わってくるのではないか」といった声が上がっていました。

PX研究会では今後もブッククラブを開催していきたいと思います。課題図書としてみんなで読みたい本があれば、ぜひご推薦ください!

 

The Beryl InstituteのBookClubには日本から参加できます。どういった本が課題図書に選ばれているかもわかります。

Link:https://www.theberylinstitute.org/page/PXBookClub

 

 

 

3. 今後の予定


2021年も引き続き、PXを学べるオンライン勉強会「PX寺子屋」を開催します。今後5月15日、8月21日、11月13日の開催を予定しています。

 

第4回PX寺子屋

・日時:2021年5月15日(土)13:00-14:00

・テーマ:「PX概論」

※詳細は決まり次第、ホームページ、当メールマガジンに掲載します

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

 

編集部から


ふるさと納税で奄美大島から大好きなたんかんが届きました。住んでいた土地に少しだけど寄付ができ、おいしいものがいただけるって素敵な制度です。(F)