日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.155

1.今年もPXEはじめます!
2.医療の安全性とPX
3. 今後の予定

1.今年もPXEはじめます!


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会が一昨年からスタートさせた人材育成事業、PXE(Patient eXperience Expert)の養成講座が7月3日からスタートします。開催まであと1カ月となったところで改めて、PXEについてご紹介します。

 

PXEは、医療現場などで患者視点の医療サービスの提供を実現する旗振り役を育てることでPXをもっと広めたいとの思いから、認定資格制度として2019年度にはじめました。PXに興味がある方は医療にかかわるなかで、以下のようなことを考えたことがあるのではないでしょうか。

  • 「患者中心の医療」とは何だろうか?
  • 現行の患者満足度調査は、患者さんにとってプラスになっているのだろうか?
  • どうすれば、患者さんに選ばれる医療機関になるのだろうか?
  • 患者満足度を高めるには、何をすればよいのだろうか?
  • 患者想いの医療者を増やすにはどうしたらいいだろうか?
  • 患者視点のサービスは、どうすれば生み出せるのだろうか?

PXEではこれらの疑問・課題を解決するための知識と実践方法を学ぶことができます。取得のメリットとして、▽PXを体系的に学べて現場に活かせる、▽患者満足度向上に必要なアクションが明確になる、▽患者視点の医療実現に関心のある仲間とのネットワークづくり――などがあります。

 

PXE受験の要件となっている養成講座は全5回。PXの概論からはじまり、PXとPS(Patient Satisfaction;患者満足度)の相違点や関係性、PX向上に必要なコミュニケーション方法など、PXを体系的に知ることができます。講座は講義プラスワーク形式で、オンライン上でグループ討議などを行います。第4回ではジャーニーマップ(患者が受診の際のプロセスを視覚化したもの)を作成します。

講座のテキスト、講義内容は毎年ブラッシュアップしています。8月21日開催の第2回では、日本でPXサーベイに取り組んでいる3病院の事例を紹介。入院と外来のPXサーベイを病院全体で複数年にわたって実施している国立病院機構九州医療センター、iPadを用いて通年でPXサーベイを実施している稲波脊椎・関節病院、PXサーベイを一部で導入し改善活動に力を入れている飯塚病院と、病院機能や規模、導入方法が異なる取り組みを知ることができます。

 

講座は1回につき2.5時間、計12.5時間で毎回、課題を提出していただきます。3期生となる今年の参加者は現在のところ、過去最多となっています。PX研究会ではより多くの仲間を得ることで、さらなる展開をしていきたいと考えています。一人でも多くの方にエントリーいただけますと幸いです。

Link:https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

 

2. 医療の安全性とPX


PXは患者中心の医療サービスの提供をめざしたものであり、PX向上によって平均在院日数、投薬ミスの減少といった医療の質改善につながるとされています。医療の安全性、インシデントとPXとの関連について言及している、米国テネシー州のヘルスケア関連のマルチプラットフォームメディアHealthLeadersの記事を紹介します。

 

患者視点を考慮することにより、医療の安全性と質向上の取り組みにさらなる価値が生まれる――。PXはインシデント対応と質改善、患者中心のケアにおいて重要な要素です。シカゴを拠点とし、医療の質改善の活動を行う非営利団体Project Patient CareのPat Merryweather-Argesさんは「PXを定義するときに最も重要なのは患者の視点です。さまざまなレベルがありますが、PXを生み出すのは1対1の出会いであり、PXをより幅広く理解するためのサンプリングツール、もしくは調査ツールが必要かもしれません」と話します。

Patさんはインシデントが発生した際に、PXが重要な役割を果たす可能性についても指摘します。「PXは患者が被害を受けた際に非常に価値があります。なぜなら患者は診断を見逃した、何も聞いていなかった、もしくはほかの要因があったといった批判ができるからです。

またインシデントが発生した場合に、PXはケアチームやその他の医療関係者のモチベーションを高めることができると、医療に関する品質管理の資格認定を行っているNational Association of Healthcare QualityのCEO兼エグゼクティブディレクターであるStephanie Mercadoさんは指摘します。「PXを取り入れることで安全についての出来事を、人間味のあるものにすることができます。また、プロセスに焦点を当て、どうやって改善を達成できるかといったことに非常にストレートにアプローチすることが可能です。重大な医療ミスで患者の視点を持ち込むことは感情的になってしまいますが、その感情は医師やステークホルダーの心とマインドを医療の大義に向けて動かすことができるのです」

事故対応のプロセスにPXを含めることは、医師やステークホルダーが何がうまくいかなかったのか、どれほどひどいものだったかを反芻する機会となります。

そして、患者の安全に関するインシデントが発生した場合、多くの患者とその家族は対応に関与したいと考えています。「患者は医療の質改善に貢献したいと考えています。非常に大きなダメージを被った場合に、ほかの患者にもインシデントが発生しないように、と決意をもってコミットメントします。患者とその家族が医療機関とともに、状況を改善することで、ケアチームなどの医療関係者はやりがいのある状況に身を置くことができます」とStephanieさん。

ただし、「慎重かつ意図的に取り組む必要がある」とPatさんは言います。「危害を加えられた患者やその家族の心が治癒し、その経験を生々しく感じないようにするには一定期間が必要です。インシデントが発生した場合、医師は改善に向けて学ぶ際に患者や家族から教わるのが最適ですが、その過程でしばしば追体験することになり、非常に感情的になってしまうことがありますが、変化へのコミットメントがある限り、彼らは起こったことを大目に見てくれます」

 

「PXを品質改善に、率先して含めるべき」とStephanieさんは話します。たとえば病院が、プライマリケアの実践として、何かを改善したいと判断した場合は患者に意見を求め、患者の視点を得るためにかかわることが有効だとしています。Patさんは「その際に重要なのは、患者は単なる相談役や承認者ではないということ。彼らは変化へのコミットメントを望んでいて、そのために自分の時間と経験を費やしているのです」

 

Link:https://www.healthleadersmedia.com/clinical-care/patient-experience-key-element-safety-and-quality-improvement-initiatives

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では12月4日(土)に「第4回PXフォーラム 変革から成熟へーWithコロナ時代のPXがもたらすものー」をオンラインで開催します。PX研究会会員(法人・個人)は無料。会員外の方は第1・2部で3000円となります。第1部、第2部のみ(各1500円)参加も可能です。フォーラムの詳細と申し込みは下記リンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxforum2021/

 

***********

第5回寺子屋を8月21日(土)に開催します。詳細は決まり次第、PX研究会ホームページと当メールマガジンでお知らせします。

 

第5回PX寺子屋

・日時:2021年8月21日(土)13:00-14:00

・テーマ:「PX概論」 訪問看護ステーションアクティホーム 事業責任者 講内源太

「九州医療センター2020年度PXサーベイ実践報告」 国立病院機構九州医療センター 小児外科医長 西本祐子

https://www.pxj.or.jp/events/

 

***********

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

 

編集部から


少し前の編集後記にポストしましたが、通勤時の快適さにすっかり味を占めてしまいスニーカー熱が沸騰。Tabi(足袋)は見た目は奇抜ですがとても歩きやすいです。(F)