日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.166

1.第2回PXE養成講座
2.PX寺子屋も開催!
3. 今後の予定

1.第2回PXE養成講座


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では8月21日、第2回PXE養成講座をZoom(Web会議ソフト)にて開催、42人が参加しました。

PXE(Patient eXperience Expert)は、医療現場などで患者視点の医療サービスの提供を実現する旗振り役となって活躍していただく人材を育てるため、2019年度から始めた認定資格制度です。今回の講座のテーマは「PX(Patient eXperience;患者経験価値)サーベイの実践」。3つの病院でのPXサーベイ実施に向けた取り組み、および導入事例を紹介しました。

 

国立病院機構九州医療センターでは2015年から、米のPXサーベイであるHCAHPS(Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers Systems; エイチキャップス)を翻訳して実施していましたが、2017年からは並行して日本版PXサーベイ(入院編・外来編)も行っています。

講師を務めた同院の小児外科医長である西本祐子さんは病院での導入準備や実施方法、集計、結果公表までの流れを紹介。「従来の患者満足度(PS;Patient Satisfaction)調査とどこが違うのか、どうしてPXサーベイをしなければいけないのかを説明することがマストです」と話し、PSとPXの違いなどをわかりやすく示しました。

PXサーベイについて、同院では入院・外来ともに年1回開催。それぞれ600~800の回答を集めています。「当院では、実施にあたって協力が不可欠な看護部へのお願いからスタート。サーベイの実施前から終了後まで、スタッフへの4かけ(気にかけ・目にかけ・声かけ・心がけ)を意識して行いました。サーベイ結果の分析・グラフ化では、スタッフの心にヒットするような見せ方が大事です」と実施上のポイントを強調。また、サーベイの結果をもとに、栄養管理室と出産後のお祝い膳をリニューアルした改善事例を紹介しました。「PXサーベイの円滑な運用に至るまで3年、院内で広く認知されるのにさらに1年。導入から6年を過ぎたころから組織横断的にPDCAサイクルをまわすスキームが整いました」と話しました。

 

既存の問診支援システムとタブレット端末を使い、日本版PXサーベイを実施している稲波脊椎・関節病院。同院の広報・IT部門副部長の古川幸治さんは、実施方法の検討について細かく説明を行いました。多くの病院ではある一定期間を決めてPXサーベイを実施していますが、同院ではデータ管理の効率化を図ったことにより、通年で実施しています。

2019年6月の開始から2021年6月までの実施件数は2952件。入院経験について10段階評価で回答してもらう設問では、平均の「5」以下と回答した約9%は10~40代の若い年齢層の割合が多かったことなどを報告。また、悪い評価が多かった設問について、分析結果を紹介しました。

「医師や看護師はご家族やご友人にあなたのケアに必要な情報をすべて伝えましたか?」の設問では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって病棟への立ち入り禁止となったことが「いいえ」の回答割合が増えた要因だと指摘。「高齢の患者さんのほうが『いいえ』の割合が多かったです」と古川さん。「結果は電子カルテのコメント機能に登録されるので個人が特定されています。そのことで回答にバイアスがかかっているかどうかを分析したいです。法人内の他病院でも実施し、結果を比較分析できればと考えています」と締めくくりました。

 

飯塚病院は「患者・顧客ファースト」をスローガンに掲げ、2018年からの中長期計画にはPXの向上を明記しています。同院のPX推進の責任者である特任副院長・総合診療科部長の井村洋さんが、自院でのPXの位置づけと取り組み状況を語りました。

「何のためにPXの組織活動に取り組むのか、何を改善したいのかをはっきりさせておくことが大事。そのことを全スタッフが“腹落ち”するストーリーをつくることを考えました」と述べたうえで、グループに分かれてPXに取り組む理由について話し合いました。井村さんは「当院では、隣町にある同機能・レベルの病院に受診数、紹介患者数で負けないことと、スローガンだけでなく患者優先の目標となる指標づくりの必要性を訴えました」と説明。組織を3つにタイプ分けし、PX向上への取り組み方を解説しました。

また、組織全体でPXサーベイの実施などが難しい場合に部署ごとでの取り組みができるとして、実際に看護部や検査部門での活動を紹介しました。

 

病院の取り組みの手法や規模、職種や組織での立ち位置が異なる3人の講師の話からは、どんな病院でもPXを実践できることがわかったのではないでしょうか。次回、9月11日に開催する第3回講座ではPXの分析手法などを学びます。

※受講者で第2回講座を欠席した方は、講座メンバー専用ページにテキスト・ビデオをUPしていますので視聴のうえ、課題の提出をお願いします。

 

 

 

2. PX寺子屋も開催!


PX研究会が発足当初から開催してきたイベントである勉強会。そのオンライン版である「第6回PX寺子屋」も8月21日に開催しました。

 

毎回冒頭では「PXとは何か?」を紹介する概論を行いますが、今回は研究会の運営メンバーである訪問看護ステーションアクティホーム事業責任者の講内源太さんが講師役に。米国でPXを推進していることで知られるオハイオ州のクリーブランドクリニックの動画を始め、PXとPSとの違いや日本における今後の展開について語りました。

 

PXE養成講座でも講師を務めた、国立病院機構九州医療センター小児外科医長である西本祐子さんが、自院における「2020年度PXサーベイ実施報告」を行いました。

同院は、入院と外来でPXサーベイを行っています。2020年度は入院患者761部(回答率81%)、外来患者767部(同76.7%)の回答が得られました。設問を入院10、外来8にカテゴライズしたうえで、それぞれの最高評価を出して強み・弱み・経年変化をレーダーチャートに示します。併せて総合評価をスコア化してほかの設問との相関関係を出すことで、改善行動の優先度を可視化しています。

西本さんは「上層部の心にいかに届けるかが取り組むうえで大事。サーベイ結果は、院内のQM発表会で報告し、幹部職員と各部門・部署の責任者には個別で送付しています。評価が極端に低かった設問については、当該部署と協議して改善案を立案、改善行動につなげています。そのうえで翌年のサーベイで、改善結果を評価しています」と話しました。また、試行的に実施したEX(Employee eXperience;従業員経験価値)サーベイについても触れ、結果の公表の仕方や院内で理解を得るための説明の必要性などを指摘しました。

 

 

 

3. 今後の予定


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では「第4回PXフォーラム 変革から成熟へーWithコロナ時代のPXがもたらすものー」を12月4日に開催します。COVID-19の影響により、今年はオンラインのみでの開催です。PX研究会会員(法人・個人)は無料。会員外の方は第1・2部で3000円となります。第1部、第2部のみ(各1500円)参加も可能です。フォーラムの詳細と申し込みは下記リンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxforum2021/

 

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PX研究会では2020年は勉強会を「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していく予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、すべてオンラインでの開催といたします。「第7回PX寺子屋」は11月13日(土)開催予定です。詳細が決まり次第、研究会ホームページや当メールマガジンでお伝えします。

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


週末に東京の各地で開催されている横尾忠則さんの展示を観て回りました。コロナ禍のマスク生活をコラージュ作品に落とし込んだプロジェクト「WITH CORONA」や異なるタッチで描く肖像画シリーズなど、85歳で精力的に創作活動を続けるパワーに圧倒されました!(F)