日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.176

1.「診断とPX」に関する調査
2.PXJ最新号
3. 今後の予定

1.「診断とPX」に関する調査


正確な診断と、医療者と患者の認識の違いが、PS(Patient Satisfaction;患者満足度)に影響を与える可能性がある――。米イリノイ州のヘルスケア関連企業・アボットがこのほど公表した、グローバル市場調査の概要を紹介します。

 

調査は心血管疾患の1289人の患者、408人の医師、173人の医療機関のトップを含む、約1800人に対して複数年にわたって実施。このオンライン調査の回答者には日本人も含まれています。血管疾患患者のPX(Patient eXperience;患者経験価値)をデザインすることを目的としたものです。ペイシェント・ジャーニーの初期の段階で医師と患者との間に生じる課題に焦点を当てていて、医療システムと病院がテクノロジーを活用することでその障壁をなくし、患者のケアを改善する転機になると指摘。同社は、調査結果からの考察は病院や医師がPXを改善する一助になるとしています。

調査結果から得られた重要なポイントは以下になります。

 

☆PXの改善は、ペイシェント・ジャーニーの初期段階での適切な介入に拠る

診断ツール、プロセス、トレーニングなどの基準を業界全体で設定することでPXを最適化できます。それにより医師は、より迅速かつ正確に個別診断と照会を行えます。

☆病院管理者と患者は現在のPXについて異なる見解をもっている

病院管理者は心血管疾患に苦しむ患者のPXを、患者自身の評価よりも肯定的に評価する可能性が高いことが明らかになっています。PAD(peripheral Arterial disease;末梢動脈疾患)の患者について、病院管理者の65%がPXは理想的だと考える一方、それを正しいと信じている患者は38%に過ぎません。

☆電子カルテの相互運用性の欠如は、患者に多くのフラストレーションを引き起こす

PADの患者の3分の1以上が、医師に病歴と関連する情報を常に提供しなければならないと述べています。医師と医療機関のトップの35%は、患者の医療記録が統合されていないため、情報へのアクセスが制限され、迅速かつ正確な診断に障壁が生じると考えています。

☆AI(人工知能)とデジタルソリューションは患者のケアを改善させる

AIのような高度なテクノロジーは診断を最適化、以前は検出されなかった患者の症状を特定し、PXを改善することによってプライマリケア医、専門医それぞれに役立ちます。

☆医療サービスの行き届いていない地域住民は医療アクセス、症状への理解や診断を受けるといった大きな課題を抱えている

医療サービスが十分でないと特定された地域のPADとCAD(Coronary Artery Disease;冠動脈疾患)の患者は十分なサービスを受けている患者よりも有意に感情的な影響が出ていると報告されています。社会経済的地位、年齢、性別に関連する健康格差の問題は、タイムリーな診断とPXの改善の両方につながる重要な障壁と考え、取り組む必要があります。

 

全文は下記リリースから読むことができます。

Link:https://abbott.mediaroom.com/2021-11-10-New-Research-Finds-Challenges-in-Symptom-Recognition-and-Diagnostic-Testing-can-impact-Patient-Satisfaction-for-People-with-Vascular-Disease

 

 

 

2. PXJ最新号


米国のPX推進団体・The Beryl Instituteが発行するオープンアクセス・ジャーナル「Patient Experience Journal」(PXJ)の最新号がリリースされています。

 

今号のテーマは、「The Impact of Inequity & Health Disparities on the Human Experience」(人のエクスペリエンスにおける不平等と健康格差の影響)。

今号に掲載されているレポートの1つ、「Using design-thinking to investigate and improve patient experience」(PXの調査と改善のためにデザイン思考を活用する)。

入院患者のPXで不足しているものと満たされていないニーズを特定するためのカナダ・カルガリー大学での研究に関する内容です。カナダの入院患者用のPXサーベイを使い、PXに関する定量的データを集めたうえで、患者への聴き取りを行った結果、ナースコールへの応答時間と夜間の騒音、疼痛管理、薬の副作用についての指導などの課題が明らかになりました。また、医療チーム間のコミュニケーション、最新の患者のケアをどれだけ維持できているかといったことにも注目。患者を含めた関係者が改善に向けて、効果的かつ持続可能な解決策を見つけるまでの取り組みが紹介されています。

「The effect of service excellence training: Examining providers’ patient experience scores」(サービス・エクセレンス・トレーニングの成果:医師のPXスコア調査)は米テキサス州のアンダーソンがんセンターが開発した、医師に対するコミュニケーショントレーニングプログラム「Service Excellence」についての考察です。

プログラムを修了した医師の患者のPXが改善されたか、成果とスタッフの関与との関連性についての調査結果を紹介。エンゲージメントの低い医師をプログラムに参加させる動機づけなど、医療機関への影響について触れています。

 

そのほかにも世界での最新の取り組みを知ることができます。全文は下記リンクからダウンロードできるので興味があるものをピックアップして読んでみてください。

 

Link:https://pxjournal.org/journal/

 

 

 

3. 今後の予定


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では「第4回PXフォーラム 変革から成熟へーWithコロナ時代のPXがもたらすものー」を12月4日に開催します。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって患者と医療者、入院患者と家族が直接的なコミュニケーションを図ることが難しくなっています。Withコロナを前提とした医療におけるPXを、参加者で考えていきたいと思います。

メインとなるパネルディスカッション「患者・住民に寄り添う墨田区モデル」は墨田区保健所所長の西塚至さんにプレゼンテーションしていただくなど、見どころ、聴きどころ満載です!

COVID-19の影響により、今年はオンラインのみでの開催です。PX研究会会員(法人・個人)は無料。会員外の方は第1・2部で3000円となります。第1部、第2部のみ(各1500円)参加も可能です。フォーラムの詳細と申し込みは下記リンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxforum2021/

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


先日、友人と期間限定のフィットネスジムに行ってきました。帽子を被って落とさないように気をつけながら体幹を鍛えるなどユニークな内容。オブジェのような美しいロッカーが素敵でした。(F)