日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.179

1.コロナ禍での患者と医療者の関係性
2.看護師のマインドフルネス
3. 今後の予定

1.コロナ禍での患者と医療者の関係性


世界中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新たな変異株、オミクロン株が注目されているなかで医療者と患者とのコミュニケーションのあり方も再考する時です。コロナ禍では、患者と医療者がどうやって関係性を築いていくかは大きな課題となっていました。医療機関のPX向上をサポートする米Press Ganey社は35万の患者コメントから約1万2000のCOVID-19関連コメントを抜き出したうえで分析しています。それによって患者ニーズの高まり、効果的なコミュニケーションプランとして、以下に注目しています。

 

コメント分析によって浮かび上がってきたのは、患者の医療者に対する感謝の気持ちです。「スタッフは礼儀正しく、プロフェッショナルで親切。COVID-19に照らし合わせた対策を講じていました」といった声が患者から寄せられます。医療者と患者との友好関係を築くための、普遍的なコミュニケーションスキルとして次のものを挙げています。

・アイコンタクトをとってボディランゲージを理解する

・あなたとあなた自身の役割を紹介する

・心から安心させるメッセージを伝えて現在の状況を確認する

・常に心配ごとをシェアするように患者を促す

・あなたが提供するケアを語る

 

一方で、COVID-19関連の患者からの否定的なコメントは検査と治療の遅れに言及されていたものの、医療者がわかりやすいコミュニケーションを図ることで軽減されました。ケアの安全性にも強い関心を寄せていました。診療とプロセスにおける患者の信頼づくりには一貫してコンタクトを図ること、コミュニケーションの確認とコーチングを行うためのスキルを養っておく必要があるとしています。そして次のことを行います。

・手洗いや消毒などの症例と確認

・握手などの行為は危険なので思いとどまる

・提供するすべてのケアを説明する

 

不確実性が長く続くと予期せぬニーズや不安が生じます。COVID-19のパンデミックにより患者と医療者は、医療システムとリーダーに安心を求めるようになりました。そこでは患者家族とのコミットメント、リスクに重きを置くこと、コミュニケ―ションによりニーズを理解し、満たすことが不可欠だと指摘します。COVID-19による患者と家族との強い信頼のきずなづくりは、パンデミックをはるかに超えて広がっていくものとしています。

 

☆How COVID-19 Is Shaping the Patient Experience

Link:http://images.healthcare.pressganey.com/Web/PressGaneyAssociatesInc/%7Bc9fff1e9-07f6-4c62-a333-7890fbbb270e%7D_Press_Ganey_Analysis_Special_Report.pdf

 

 

2. 看護師のマインドフルネス


米国国立研究所によると、看護師は最もストレスの多い職種と認識されており、今の自分の状態に意識を向けて心を整える「マインドフルネス」という考え方がストレスをコントロールするテクニックの1つだといいます。看護師がマインドフルネスによってストレスが軽減し、患者と医療者とのケアおよびアウトカムが改善されたというホワイトペーパーがBeryl Instituteから発刊されています。

 

米カリフォルニア州にあるKaiser Foundation Rehabilitation Centerの看護師であるGail L. Simsさんが、患者をリハビリテーションから在宅に移行させるために看護師、患者とその家族に対して行ったマインドフルネス・トレーニングの影響を検証したものです。ヒューマン・ケアリング理論とハートマス研究所が開発した感情マネジメントスキルを導入・応用し、トレーニングの前後でマインドフルネスの尺度であるMAAS( Mindful Attention Awareness Scale)を用いて測定したところ、看護師の自己申告によるマインドフルネスが向上しました。「自分自身の不安を軽減し、落ち着きを取り戻すことができた。その結果、患者に対してより親切で思いやりをもってサポートできるようになった」といいます。

看護師は他の医療職と比較して、ストレスや燃え尽き症候群の状態を抱えやすく、それが大きな問題と認識されています。ストレスや燃え尽き症候群を引き起こす要因として、看護師の年齢やキャリア、感情コントロール、幸福感といったものがあります。また不安の原因として、患者のケア、意思決定、責任の引き受け、変化への対応の4つが挙げられています。

このレポートでは、①急性期リハビリ施設でのマインドフルネス・トレーニングは医療者のマインドフルネスへの気づきの向上に役立つという既存のエビデンスを強化、②マインドフルネス・トレーニングはPX(Patient eXperience;患者経験価値)を測るケアスコアにいい影響を与える、③患者と家族はマインドフルネスのトレーニングを受けた看護師とのやりとりに満足している――といった考察がなされています。

 

ホワイトペーパーは下記リンクから購入可能です。

Link:https://www.theberylinstitute.org/store/viewproduct.aspx?id=19303293&utm_source=newsletter&utm_medium=email&utm_content=https%3A//d31hzlhk6di2h5.cloudfront.net/20211116/ed/80/81/e7/4915ed7b8aaafbc37cd5c359_326x420.png&utm_campaign=The%20power%20of%20self-healing

 

 

3. 今後の予定


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会主催の「第4回PXフォーラム 変革から成熟へーWithコロナ時代のPXがもたらすものー」がいよいよ今週末、12月4日に開催されます。COVID-19のパンデミックによって患者と医療者、入院患者と家族が直接的なコミュニケーションを図ることが難しくなっているなか、Withコロナを前提とした医療におけるPXを参加者で考える場です。

メインとなるパネルディスカッション「患者・住民に寄り添う墨田区モデル」は墨田区保健所所長の西塚至さんにプレゼンテーションしていただくなど、見どころ聴きどころ満載です!

COVID-19の影響により、今年はオンラインのみでの開催です。PX研究会会員(法人・個人)は無料。会員外の方は第1・2部で3000円となります。第1部、第2部のみ(各1500円)参加も可能です。本日18時まで申し込みできます!フォーラムの詳細と申し込みは下記リンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxforum2021/

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


猫好きですが猫グッズはあまり好きではありません。でもおいしいものは別。ずっと売り切れで買えなかったクッキーを購入でき、今年の運を使い果たしました。(F)