日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.180

1.第4回PXフォーラム終了!
2.今後の予定

1.第4回PXフォーラム終了!


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では12月4日に「第4回PXフォーラム 変革から成熟へーWithコロナ時代のPXがもたらすものー」を開催。100人以上の方に参加いただき、盛況にて終了しました。

 

今年のフォーラムは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックのなかで、Withコロナを前提とした医療提供とPX(Patient eXperience;患者経験価値)向上にどう取り組むべきかを参加者で考える場となりました。

2つのシンポジウムのうち、1つは「Withコロナ時代のPX」をテーマに掲げました。2021年の夏は東京五輪開催とCOVID-19流行の第5波が重なるなど、医療者と患者にとって厳しい時期が続きましたが、外来や入院、ICUの現場での対応とPXへの取り組みについて、現場の医師3人が発表しました。

 

板橋中央総合病院の小坂鎮太郎さんは総合診療医として300人近くのCOVID-19患者を診た経験を紹介しました。ジャーニーマップをもとに、COVID-19のクリニカルパスを作成。遠隔による回診、栄養指導などDXを活用した医療の質低下への対応策について言及。面会制限などがある入院患者・家族の不安解消に、隔離病棟でのAmazon利用、Wi-Fi設定、遠隔での面会ツールを持っていない人へのデバイスの貸し出しといった取り組みについて話しました。

小坂さんは「COVID-19によってPXやEX(Employee eXperience;従業員経験価値)についてより深く考えるようになりました。施設や地域を超えた仲間や患者・家族との助け合いが加速しました」と語りました。

 

神戸市立医療センター中央市民病院で集中治療領域の管理者をしている瀬尾龍太郎さんは、自院のICUで1041人の患者を受け入れを行った状況を説明。意思疎通を図ることが困難な人工呼吸器をつけた患者に対し、専門看護師とMSWによる患者支援チームがサポートした時の対応について話しました。

一定期間ICUにいる患者のケアのゴール設定を行う多職種カンファレンスのほか、現場スタッフの負担軽減を図るための権限移譲などに触れ、「自分の置かれている状況がわからない患者、スタッフに大きなストレスがかかっていました。患者さん、家族の価値観の共有や持続可能な体制づくりが必要」と力を込めました。

 

発熱外来でのPXおよびEXの向上を目指した実践を紹介したのは、広域紋別病院診療部長の松本卓さんです。「患者さんの受け入れが増えたことで、患者さんと医師との間に挟まれた看護師への負担が大きくなり、発熱外来の運営を見直さなければなりませんでした」と振り返りました。

患者の視点に立った発熱外来のワークフローと、発熱外来のビジョンを考えるために、ジャーニーマップを作成。夕方の受診が多いことへのスタッフの不満については、受診するまでの患者の不安や葛藤などを慮ること、患者さんが院内では気持ちよく過ごせる環境づくり、行政や開業医との協力体制が必要だと結論づけました。

 

メインのパネルディスカッションでは、流行の第5波で重症者、死亡者を1人も出さなかったなど、PXの高い対応で全国的に注目されている東京都墨田区のCOVID-19対策について、墨田区保健所所長の西塚至さんにプレゼンテーションしてもらいました。

COVID-19対策が成功した取り組みとして、PCR検査、ワクチン接種、専用病床を確保するなど抗体カクテル療法の積極的な推進の3つを指摘。「医療崩壊を食い止めた『地域完結型医療モデル』は保健所が扇の要となって地域のローカル力を高めるということです」と説明し、区内の全病院の院長と毎週オンライン会議で情報共有を行い、3次救急医療機関任せではなく、全病院、医療従事者で負担を分け合ったことなどを話しました。

また、「住民との信頼関係づくりにはリスクコミュニケーションが必要」として、区長が「速く、正確に、正直に、共感を示しながら」を意識した情報発信、区民との対話を行ったことで住民の不安解消ができたことなどを強調しました。

ディスカッションは在宅のCOVID-19患者支援を行ったごはんがたべたい歯科クリニック院長の齋藤貴之さん、ICUでCOVID-19重症患者と向き合った松下記念病院看護師の小松良平さん、病院の環境改善に取り組む、イトーキワークスタイルデザイン統括部の能勢恵嗣さんがそれぞれの立場から、墨田区の取り組みとCOVID-19下でのPXについて、思いを語りました。

 

2つめのシンポジウムはPX研究会がPXを語れる人材育成として始めた、PXE(Patient eXperience Expert)の2期生5人による成果発表(現在の取り組み)でした。

富士通株式会社の治田茂さんは現在、企業立のクリニック運営にかかわっています。COVID-19の職域接種会場の動線や各チームの課題発見・改善に取り組んだ内容を紹介。「接種会場を見て回り、来場者の視点で考え、改良を図っていきました」と話しました。今後はクリニックの改善活動のフレームワークづくりをしていきたいなどと話しました。

京都市立病院の看護部長、半場江利子さんは看護部での一連の取り組みを示したうえで、▽PXサーベイを活用し、職員同士の対話を深める、▽患者さんの声を聞き、気がかりに気づくために潜在的ニーズを掘り起こす、▽患者からのメッセージカードをPXサーベイと連携させ、PX向上に活用していくーーとしました。

 

PXサーベイ実施病院からの報告として、改善・サービス向上といった成果について、国立病院機構九州医療センター小児外科医長の西本祐子さんが話しました。Withコロナ時代における変化を、PXの視点から検討を重ねたうえで退院支援や地域連携につなげたこと、EXサーベイの実施報告など、PXの先進病院としての取り組みを惜しむことなく紹介しました。

 

昨年に引き続きオンライン開催となりましたが、PXに向けた取り組みがいろんなところで進んでいることがわかるなど、PX研究会としても実り多いフォーラムとなりました。ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。参加、申し込みいただいた方には12月22日までの期間限定で、アーカイブ配信を行います(アドレスは個別にお知らせします)。

PXフォーラムはもちろん、来年も開催予定です。詳細が決まり次第、当メールマガジンで紹介します。

 

 

2. 今後の予定


第4期PXEの募集を開始しました!PXについて体系的に学び、私たちと一緒にPX向上への取り組みを進めていきませんか。来年7月開講となります。詳細およびエントリーは下記リンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


オフィスの近くにあるランチでよく行くお店が夜の営業を再開したとのことで、仕事を抜け出しておじゃましました。飲んだビオワインのエチケットがかわいかったです。(F)