日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.183

1.豪州の遠隔医療PX調査
2.GPの患者調査
3. 今後の予定

1.豪州の遠隔医療PX調査


本年も日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会をどうぞよろしくお願いいたします!

日本においても年明け早々から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第6波が懸念されていますが、オーストラリアでは1月3日に1日あたりの感染者数が約7万人に達しています。COVID-19の流行によって世界で遠隔医療サービスが推進されているなか、遠隔医療のPXに関する大規模な調査研究を行っています。

 

オーストラリアでは2020年3月30日に遠隔医療のスキームを導入し、電話またはビデオ会議を介して提供される医療サービスに補助金を給付しました。COVID-19のパンデミック前は、一部の地方や遠隔地に限定されていましたが、現在ではすべての診療相談を遠隔医療で行うことができ、すべての医療サービスの36%を占めています。同年4月末にオーストラリア統計局が実施した調査では、6人に1人が遠隔医療サービスを利用しており、女性の利用者は男性の約2倍でした。また、慢性疾患や精神的な疾患の人はそうでない人より2倍利用していました。

 

調査は2020年6月、SNSのターゲット広告を介して集められた18歳以上のオーストラリア在住の1369人を対象としました。遠隔医療のエクスペリエンス(経験)を聞いていて、一般化線形モデルと呼ばれる回帰分析を使い、従来の対面診療よりも遠隔医療の経験が低い理由を特定するために調査結果を分析しています。調査項目は、▽遠隔医療の使用法、▽遠隔医療と対面診療の比較、▽COVID-19後の遠隔医療への関心、▽対面診療の予約のキャンセル状況、▽遠隔医療へのアクセスの障壁――となっています。

1369人のうち、596人(43.5%)が遠隔医療サービスを利用していました。年齢はやや高め、慢性疾患をもった高いレベルの教育を受けた女性が多く、自己申告ですがサービスを利用しなかった人より健康状態は劣っていました。遠隔医療は半数以上となる326人が複数の医療機関でサービスを受けており、71.6%が電話で行われています。369人(61.9%)が遠隔医療の経験は、対面医療と比べて「同じぐらい良い」「より良い」と肯定的でした。従来の対面医療よりも経験が悪かったと回答したのは205人でした。否定的な回答をしたのは男性、うつ病などのメンタルヘルスに関する病歴があるといった傾向がみられました。

遠隔医療の経験が低い理由としては、▽コミュニケーションがよく図れていない、▽オンライン接続の悪さといったテクノロジーの問題、▽処方箋や病理結果へのアクセスの悪さ、▽包括的に診てもらえない、時間的制約などによる医師への信頼の低下、▽複雑なケアへの対応が難しい――といったことでした。

コミュニケーションの低さについては、医療者と患者との間のコミュニケーションを改善するための方法・手法などの導入で対処できるとしています。具体的には、ティーチバック法によって患者自身の健康情報への理解を深めたり、患者ポータルを介して遠隔医療についての概要を書面で提供するといったことが挙げられています。

結論として、「遠隔医療の経験は対面医療と同等であり、経験が低い場合はその理由を特定したうえで改善するための戦略を立てる必要がある」などとしています。全文は下記リンクからご確認ください。

Link:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7732356/

 

 

2. GPの患者調査


このほど公開された、英国のNHSが実施した2021年のGP(General Practitioner)の患者調査の結果を紹介します。

調査はGPに登録している約241万人の成人に郵送し、2021年1~3月にかけて実施したアンケートにもとづくものです。約85万人(35.3%)から回答を得ました。患者の83%がGPによる診療を「良い」と評価し、そのうち48.2%は「非常に良い」としています。2020年の調査と比べて、PXは1.2ポイント上がっています。GPへのアクセスについては3人に2人(67.6%)が電話での診療が簡単にできると回答し、前年比で2.4ポイント増えています。また、4人に1人(26.1%)が過去1年間でオンラインサービスを利用して処方を依頼していますが、自分の診療記録にアクセスした患者は7.1%と少なくなっています。

また、患者の86%が医療者がメンタルヘルスのニーズを認識または理解していると感じており、前年比で0.6%増となっています。一方で、患者の7人に1人(14.9%)がほかの患者から孤立していると感じていて、2020年と比較して7.4%と大きく増えています。

2021年の調査はCOVID-19のパンデミック後、初めて実施されました。全体的にGPへの評価、信頼が高くなっているほか、オンラインサービスの利用増、患者の孤立感などCOVID-19の影響が反映された結果となっています。詳細は下記リンクをご一読ください。

 

Link:https://www.england.nhs.uk/statistics/2021/07/08/gp-patient-survey-2021/

 

 

3. 今後の予定


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では、2022年もオンライン勉強会「PX寺子屋」を開催します。3月5日(土)、7月23日(土)、11月26日(土)の3回、いずれも12:30-13:30を予定しています。内容などは決まり次第、メールマガジンやホームページでお知らせします。

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PX研究会では医療機関や企業でPXを広めるエバンジェリストとして、PXE(Patient eXperience Expert)の認定を行なっています。現在、2022年度の第4期生の募集を開始しています。PXについて体系的に学べる絶好の機会です、多くの方のエントリーをお待ちしています。詳細と申し込みはリンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


2021年は息をつく暇もなく過ぎていき、2022年が明けました。みなさまにとってよい1年になりますように!(寅年なので、わが家の茶トラです)(F)