日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.185

1.ロックダウン中のPX
2.PXの改善は難しい?
3. 今後の予定

1.ロックダウン中のPX


ニュージーランドの保健品質安全委員会(HQSCNZ;Health Quality&Safety Commission New Zealand)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のロックダウン中のPX(Patient eXperiece;患者経験価値)についての調査を実施していて、その結果を紹介します。

 

調査は2020年6月に行われ、レベル3(公共施設や飲食店は閉鎖、クリック&コレクト<ネットなどで注文した商品を店舗で受け取る>や接触を伴わないサービスのみ提供できる)のロックダウン中に一般診療を受けた患者を対象としました。

対面で予約したのは57%、電話では55%、オンラインは4%でした。ロックダウンが解除されてからは対面での予約はCOVID-19以前のレベルに戻り、2020年8月においては約90%となっています。遠隔による予約を支持する理由として、「体調の悪い人が周りにいない」「来院するための移動や待ち時間などが短縮された」「自宅でリラックスした状態で対応できる」といったことが挙げられています。一方、10%超の人が遠隔での予約を好ましくないと思っており、その理由は「身体的症状や悩みを説明するのが難しい」「聴き取りや理解しづらい」などとなっています。

PXをたずねる設問としては医師や看護師の対応として、「あなたの言うことに耳を傾けましたか」「健康状態、治療やケアについて望むだけの情報を得られましたか」「わかりやすい方法で説明しましたか」「やさしさと理解を示しましたか」「敬意をもって扱われましたか」「十分な時間をかけてくれましたか」「治療とケアの決定にあなたの意思を尊重したか」を聞いています。すべての質問で2019年のデータよりもスコアが2~8ポイント上がっていました。分析では、「調査方法の変更か、COVID-19がPXにプラスの影響を与えたのかはわからない」としています。

 

将来利用したいサービスとしては、回答者の90%が処方箋を薬局に直接送って受け取り、テスト結果をオンラインポータルから入手することを挙げていました。

調査および結果の詳細は下記リンクからご確認ください。

Link:https://www.hqsc.govt.nz/our-programmes/health-quality-evaluation/projects/patient-experience/covid-19-patient-experience-survey/survey-results/

 

 

 

2. PXの改善は難しい?


米国の病院で実施しているPXサーベイ、HCAHPS(Hospital consumer Assessment of Healthcare Providers Systems; エイチキャップス)が2016年以降、改善につながっていないと指摘されています。なぜ改善がとても難しいのか。PatientVoicesのCEOであるMary Kay O’Connorさんが投稿ブログのなかで分析しています。

 

多くの医療機関はPX改善のために時間、お金、リソースに多額の投資をしていて、優れた医療を提供できている一方、素晴らしいPXを提供できていません。その要因として、PXがサーベイの質問結果・評価によって定義されているが、PXはもっと複雑なものだとMary Kayさんは説明しています。

最初に患者が何を経験しているのか、エクスペリエンスを理解しなければならないといいます。そのために次のことを考えています。

・患者はケアのどの部分を高く評価していますか

・何が患者をいら立たせているのでしょうか

・患者がほかの受診する病院を変える原因は何ですか

また、患者は一人ひとり病状や置かれている環境が違っていること、“変数”がPXに影響を与えることを認識しておかなければなりません。変数とは、医療機関での過去の経験、言葉の壁、待ち時間、医療者の聴き取りのスキル、問題を解決する診断と治療の迅速さ、退院時のフォローアップに関する医療者の理解などです。

 

こういった問題を解決し、PXを高めるのは「患者に、自分の話をするように頼むこと」です。

患者にご自身の話をしてもらい、PXサーベイの質問をフォローアップすることで、PXの改善のために知っておく必要があるすべての情報が得られます。患者のPXに関する情報を集めることで改善のための優先順位を特定することができ、それは次世代のAIテクノロジーが実行します。

 

PXサーベイは医療機関のベンチマークにおいて大事な役割を果たすものの、PXについての適切な説明はできません。Mary Kayさんは、PXの改善に取り組んできたなかで学んだ3つの教訓を挙げています。

1.患者にとって最も重要な問題を明確にする

2.患者にとって重要なことは驚くべきことである

3.ポジティブとネガティブ、両面からのフィードバックを共有する

 

全文は下記リンクからご一読ください。

Link:https://www.theberylinstitute.org/blogpost/947424/390856/Why-Is-Improving-Patient-Experiences-So-Difficult

 

 

3. 今後の予定


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では、2022年もオンライン勉強会「PX寺子屋」を開催します。3月5日(土)、7月23日(土)、11月26日(土)の3回、いずれも12:30-13:30を予定しています。内容などは決まり次第、メールマガジンやホームページでお知らせします。

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PX研究会では医療機関や企業でPXを広めるエバンジェリストとして、PXE(Patient eXperience Expert)の認定を行なっています。現在、2022年度の第4期生の募集を開始しています。PXについて体系的に学べる絶好の機会です、多くの方のエントリーをお待ちしています。詳細と申し込みはリンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


魚のフリットが好物で、幼少時からマクドナルドの定番はフィレオフィッシュです。友人とイタリア料理を食べに行き、勘違いして小魚の「フリッタータ(キッシュのような卵料理)」を頼んだら写真のものが出てきて驚いたのでした(苦笑)。(F)