日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.186

1.PSを高めて改善する方法
2.PXを気にする15の理由
3. 今後の予定

1.PSを高めて改善する方法


米国の医療機関においてはPS(Patient Satisfaction;患者満足度)は医療の質向上だけでなく、患者の定着率や病院経営に直結するため、マーケティング戦略としても重要とされています。米サウスカロライナ州のヘルスケアマーケティング企業Practice Buildersのレポートでは、PSを高め、改善する方法について紹介しています。

 

PSに関連する8つの要素として、①看護師とのコミュニケーション、②医師とのコミュニケーション、③薬剤に関するコミュニケーション、④病院スタッフの迅速な対応、⑤痛みに関するマネジメント、⑥病院の清潔さと静かさ、⑦退院指示、⑧総合的な病院評価――を挙げています。

さらにPS向上の重要性について、いくつか言及しています。

1)満足度が高い患者は、5人に対してその経験(エクスペリエンス)を共有し、満足度が低い患者は9人以上に不満を伝えます。さらにオンラインのレビューは火に油を注ぎます。よい経験、悪い経験ともにオンラインに投稿されるレビューが増えると、潜在的な患者は見えないところで何が起こっているのかを垣間見るようになります。優れたケアを提供している場合は、そのことをより多くの人が知ることになり、否定的な発言は雪だるま式に、多くの潜在的な患者の目を引くことになりかねません。

2)新規患者の増加、医師へのボーナスと有益なパートナーシップなどがPSに関連しています。米国では、PSが低いことによる患者減少は20万ドル以上の損失につながる可能性があります。Press Ganey社の調査では、PSが90パーセンタイルの病院では患者数が約3分の1、もしくは年平均で1382人増えるとしています。PSが下位10パーセンタイルの病院では平均で17%の経済的損失となりました。

3)ソーシャルメディアやレビューサイトなどにポジティブな面をみせることにより、患者のなかで提供する医療のイメージがつくられ、新しい患者をひきつけることができます。マーケティング戦略として、口コミは効率的かつ低コストであることが証明されています。PSが高いほど、提供する医療に高い料金を請求することができます。

4)学術研究によると、医師を信頼する患者はより臨床アウトカムが高くなります。言い換えると治療の有効性は、患者が医師をどれだけ信頼しているかに依存することを意味します。患者のニーズに応えることは、PSを高めるだけでなく、医師の仕事を楽にすることにもなります。

 

PSを改善、向上させるための方法については、次のようなものを挙げています。

1)スタッフの個々のスキルが高いだけでなく、PX(Patient eXperience;患者経験価値)を高めることを共通目標として念頭に置き、そこに集中しているかを確認します。チームのなかで診療の際にPSを改善するためのアイデアを提案したり、PXに対してスタッフに責任を持たせることが重要です。

2)患者に必要な情報を提供することは、PXに重要です。患者のエンパワーメントが向上すると、アドヒアランスも高まり、PSと臨床アウトカムが改善されることが明らかになっています。

3)看護師はPXおよびPS向上において重要な役割を果たします。より経験が豊富で自立した看護師は仕事を任せることで、よりよい患者ケアを提供します。

4)診療の効率性を図ることで、患者の最大の不満の1つである待ち時間を減らすことができます。患者に待ち時間をお知らせするシステムの導入、医師と患者の間でコミュニケーションを図るシステムづくりなど、テクノロジーを活用することです。

 

詳細は下記リンクからご一読ください。

Link:https://www.practicebuilders.com/blog/patient-satisfaction-why-it-matters-and-how-to-improve-it/

 

 

 

2. PXを気にする15の理由


米国の病院で実施しているPXサーベイ、HCAHPS(Hospital consumer Assessment of Healthcare Providers Systems; エイチキャップス)のスコアは病院にとって財政面からも重要です。またPSとPX向上は病院や医師にとって、長年にわたって最大の関心事となっています。医療の専門家がどうしてPXを気にするのかについて、米カリフォルニア州にあるHealthcare Successの共同創業者で、コンサルタントをしてきたLonnie Hirschさんは15の理由を挙げています。

 

1)ポジティブなPXは患者のコンプライアンスとアドヒアランスをもたらし、治療計画や健康的なライフスタイルの推奨をより受け入れるようになる

2)各医療機関や保険会社、オンラインの医師評価サイトは消費者向けのランキングを公開していて、評価はPXを反映している

3)新しい患者の獲得は、既存の患者を維持するより約10倍のコストがかかる

4)患者の60%以上はPXを、提供された医療ではなく人としてどう扱われたかと考える

5)PXは患者の紹介に影響を与え、PSが低ければPSが高い他の医療機関に患者を紹介される可能性がある

6)PSが高いと訴訟を回避できる

7)個人的、専門的な部分に関する満足度は、医師とスタッフの満足度をさらに高める

8)スタッフが仕事と職場環境に満足し、離職率が下がる

9)PSが高い患者は友人や家族を紹介する可能性が高い

10)PSが高い患者は、同じ医療機関を受診する可能性が高い

11)口コミは影響力を持ち、否定的なコメントにより10%以上の患者が受診先を変える可能性がある

12)患者のクレームが少なくなり、事務部門の組織文化と生産性が向上する

13)患者は質の高いサービスを高く評価し、より高い価値を求めるため、PSが高い医療機関を選ぶ

14)最大の患者層であるベビーブーム世代は最ービスや治療の成果を高く評価するのと同じぐらいエクスペリエンスを大切にする

15)医療の専門家としての評判が高まる

 

Link:http://patientexperience.com/15-practice-reasons-professionals-care-patient-satisfaction/

 

 

3. 今後の予定


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では、2022年もオンライン勉強会「PX寺子屋」を開催します。3月5日(土)、7月23日(土)、11月26日(土)の3回、いずれも12:30-13:30を予定しています。内容などは決まり次第、メールマガジンやホームページでお知らせします。

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PX研究会では医療機関や企業でPXを広めるエバンジェリストとして、PXE(Patient eXperience Expert)の認定を行なっています。現在、2022年度の第4期生の募集を開始しています。PXについて体系的に学べる絶好の機会です、多くの方のエントリーをお待ちしています。詳細と申し込みはリンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


小学生の姪2人と、近所にある創業350年!という金魚の卸問屋で金魚すくいをしました。子どもの時以来でしたが、金魚を獲るにも作戦と工夫が必要ですね。釣果の一部は姪たちが連れて帰り、プチと紅葉と名付けられました。(F)