日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.194

1.2022年の5つのイノベーション
2.PXとCXの違いとは?
3. 今後の予定

1.2022年の5つのイノベーション


「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる混乱と不確実性の後、記録的なレベルの投資が市場に投入され、医療機関は遠隔医療の技術を活用して医師と患者双方のエクスペリエンスを向上させています」と、Google Cloudのグローバルヘルスケア&ライフサイエンスソリューションリーダー、Joe Milesさんは指摘。そのうえで、2022年に起こるイノベーションから5つをピックアップしています。

 

⒈ヘルスケア・ライフサイエンスデータの呪縛を解く

自分自身の健康データにこれほどアクセスでき、理解できる時代はこれまでなかったと言えます。より個別化された医療のベースができ、さらにウェアラブルデバイスが加わることで、患者はリアルタイム、それに近い状態で自分の健康を把握できるようになります。安全なデータアクセスと相互運用性に、保険会社や研究者、公衆衛生行政などを巻き込めば、患者に恩恵をもたらす強力なネットワークの効果は高まり、個別化医療と予防医療はまったく新しい時代に突入します。

⒉M&Aブームが続く

2020年初頭以降、ヘルスケア・ライフサイエンス業界は急速に立ち直り、取り引きが加速しています。COVID-19ワクチン、テレヘルスの重要性、分子モデリングとゲノムベースの医薬品開発が注目され、新規市場への参入、治療法の開発などが投資を後押ししています。M&A投資は今年、4000億ドルに近づく可能性があるとPWCのアナリストは推定しています。企業がこうした投資を活かすには、優れたビジョンや知的財産だけでなくテクノロジーや、パートナーシップ、買収をより大規模で実現可能かつシームレスにするためのデータ相互運用モデルも重要です。

⒊PXは新たな速度で変革

COVID-19は世界のヘルスケア市場の非効率性と複雑性にスポットを当てました。プロセスやモデルの変更、持続的な変化の実現のために変革の速度を速める必要があります。遠隔医療の提供などテレヘルスの重要性を認識し、医療機関は応答性を向上させています。また、民間企業や公的機関は社会科学、公衆衛生、生物医学情報学、コンピュータサイエンス、公共政策、コミュニティグループから、公平で包括的な消費財や医療IT戦略を構築する方法を学び、協力関係を深めています。医療の透明性、可視性、説明責任のレベルは競争を促進し、すべての患者にとってより効果的、公平、効率的で、何より健康的な市場を提供することになります。

⒋AIは医薬品開発のコアなコンピテンシー

COVID-19ワクチンの開発におけるイノベーションの加速は、研究者がAI(人工知能)や機械学習を使ってタンパク質や細胞の相互作用をモデル化することでサイエンスを迅速に発展させることができる、新しい医薬品開発プラットフォームの利用により実現されました。研究者はAIを使ってコンピュータ上でのシミュレーションを可能にしています。AIを利用した創薬モデルは研究プロセスから数カ月〜数年を省くことができるため、開発期間を短縮し、個々の患者の治療までの時間を短縮できます。

⒌エコシステム・パートナーシップがイノベーションを促進

テクノロジーは機能やプラットフォーム、市場のあらゆる側面を一変させるため、今後も重要な役割を果たすでしょう。携帯電話、ウェアラブル端末、その他のテクノロジーは血糖値から医療サービスの支払いに至るまで患者にリアルタイムの情報を提供し、通知するようになります。次の危機が発生した時に、新しいパートナーシップをさらに築き、それを容易にするためにもテクノロジーは私たちを団結させ、目の前にある課題を克服し続ける手助けをすることができます。

 

全文は下記リンクからご一読ください。

Link:https://cloud.google.com/blog/topics/healthcare-life-sciences/healthcare-industry-trends-2022-life-sciences-technology-predictions-data-ai-interoperability

 

 

2. PXとCXの違いとは?


ITを通じて医療界の方向性や技術の向上を目指す組織であるHIMSS(The Health Care Information and Management System Society) の2022年カンファレンスが3月14~18日まで米国で開催されました。そのなかのシンポジウムの1つに、PX(Patient eXperience;患者経験価値)をトピックとしたものがあり、CX(Customer eXperience;顧客経験価値)との違いについて議論が行われました。Twitterによるヘルスケアソーシャルメディアコミュニティの共同設立者である、Colin Hungさんの投稿を紹介します。

 

患者は均質ではない

1日目のプレカンファレンスシンポジウムでのオープニングパネルは「PXの現状」がテーマで、CXとPXのトピックが取り上げられました。パネラーの1人、患者支援を行うEnlightening Results社の創設者であるGrace Cordovanoさんは、「患者という言葉は医療において最もわかりにくい言葉の1つです。すべての患者が同じではないのです」と指摘しました。

そのうえで、▽普段は健康で、健康志向が強い人、▽骨折、食中毒など急性疾患の人、▽慢性疾患をもつ人、▽人生を左右するような、命にかかわる症状を抱えている人、▽終末期医療を必要とする人――を挙げ、「これらの、どのカテゴリーに属していたとしてもPXである」と話します。「健康になりたい、積極的に医療にかかわりたいとしても、ヘルスケアに簡単にアクセスできない、育児に追われていたり交通手段がなかったりする場合は、それは非常に困難です。あなたがどのカテゴリーに属していても常にサバイバルモードになります」。つまり、医療の消費者と言えるような患者はごく一部なのです。

消費者vs患者vs顧客

「患者とは、すでにあなたの世話になっている人です」とOrlando Health社の患者ケア管理者のBrian Martinezさんは言います。さらに「その時点で、彼ら患者はもはや選択肢を持たず、ケアを受けてよりよくなることを望んでいるのです。消費者は急性期ではなく、治療や予防を求め、受診先を選択する機会があります」と説明し、患者も消費者という言葉も使用しないとしました。Brianさんは患者や家族、医療者を含めた総合的なCXを向上させることを目指しているといいます。「私たちの仕事は、すべてのお客さまに可能な限り、シームレスな体験を提供し、お客さまのためにすべての点を線につなげることです」

どの言葉を使うか?

Amazon Web Servicesのコンシュマーヘルスソリューション責任者のPaul Torreyさんは、2人の考えに同意したうえで「CXとPXには明確な違いがある」としました。

CXは患者全体のなかのごく一部の人たちだけに適用されるということで意見が一致。より消費者的なエクスペリエンスを提供することによって医療を改善していくのは崇高な考えだが、より広いPXを改善するための努力を完全に覆いかくしてしまうようなことがあってはならないということでした。また、CXをすべての患者に適用することは、治療を選択できない患者を疎外することになるという無声の合意がありました。

 

Link:https://www.healthcareittoday.com/2022/03/14/consumer-and-patient-experience-same-or-different/

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では医療機関や企業でPXを広めるエバンジェリストとして、PXE(Patient eXperience Expert)の認定を行っています。現在、2022年度の第4期生を募集中です。PXについて体系的に学べる内容となっており、多くの方のエントリーをお待ちしています。詳細と申し込みはリンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


お店で「ホタテの生白子」という品書きがあり、何かわからないまま食べたのですが後で調べてみたらネット上でこんな写真を見つけました。オレンジと白の色違いは個体差だと思っていたので新たな気づきを得ました。(F)