日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.196

1.クリーブランドクリニックの改善モデル
2.認知症患者のPXを大幅に改善
3. 今後の予定

1.クリーブランドクリニックの改善モデル


米国で最もPX(patient eXperience;患者経験価値)を推進している病院の1つに、オハイオ州のクリーブランドクリニックがあります。メールマガジンを長く購読している方にはおなじみですね。PX向上のためには継続的な改善が必要であり、ケアスタッフ一人ひとりの仕事に取り組む意識を変えるものとして、「改善モデル」が示されています。ケアスタッフがよりよい質の高い医療を、より低いコストで提供するための思考法です。「目標達成に向けた一人ひとりの取り組み」を掲げ、すべてのケアスタッフが権限を与えられ、毎日改善を行う組織文化をつくっているという、改善モデルの概要を紹介します。

 

「Cleveland Clinic Improvement model」(CCIM)と呼ばれる改善モデルは、4つにカテゴライズされています。それぞれ「何が最も重要か」を問うことから始まります。それぞれ、リーダー、管理職、スタッフに対する改善のヒントが書かれています。

1. 組織のアライメント

何が一番大切かを見極め、伝えること。戦略展開とは人々に目標を押し付けることではなく、アライメント(連携)を生み出すことです。リーダーは地域の目的と将来について、共通の明確で一貫したビジョンを継続的に共有します。そして患者やケアスタッフと何が最も重要かを話し合います。チームの成功のための指標と目標を設定します。日々の仕事を組織目標に整合させます。アライメントを作成する際、患者、シニアリーダー、チームメンバーに何が最も重要かを定期的に尋ねます。チームの一員としては自分の仕事を、地域や組織の目標につなげます。クリーブランドクリニックの目標をサポートし、プロセス指標を特定します。

2.ビジュアルマネジメント

トップは患者やケアスタッフを訪ね、最も重要なことを見聞きし、確認します。何が最も重要か、そして私たちの文化を支える望ましい行動を強化するようにします。また、クリーブランドクリニックでは、測定とその結果の視覚的な管理を重視しています。指標に有意な変化があった場合に対応すること、チームで共有し、議論することで改善を進めるとしています。

3.問題解決

問題解決能力を養うために、すべてのステークホルダーにとって最も重要な問題へのフォーカスを提供します。信頼性の高いプロセスをサポートするために、ケアスタッフが心理的に安全な環境を作り、情報を共有します。チームとしては、安全な環境とチームワークを育むとしています。学習できるように、問題やエラーをオープンに議論し、改善点も共有します。チームが根本原因を発見できるような質問をし、実験を奨励するほか、価値を付加しない活動や、うまくいかない可能性のある活動を特定します。チームの問題解決プロセスを利用して、無駄をなくしつつ、小さな変化や大きな変化でイノベーションを起こします。

4.標準化

トップは組織内の標準的な原則や望ましい行動を示し、導きます。すべてのケアスタッフのためにプロセスが設計されていることを確認。すべての活動において、多様性を確保します。また、標準的なプロセスが維持され、遵守されていることを確認する一方で、安全性、品質経験、公平性の問題について指摘するケアスタッフをサポートする環境を確立します。不必要なばらつきを減らし、毎日、標準に従うことに責任を持つほか、PDCAプロセスを通じて標準を共有し、改善します。

 

CCIMから学ぼうとする際には、このモデルを医療機関の状況に合わせて適応させ、時間をかけてモデルを改良していきます。またはこのモデルのプロセスをもとに、独自のものをつくることもできるといいます。

CCIMの図は下記リンクから見ることができます。

Link:https://my.clevelandclinic.org/departments/patient-experience/depts/continuous-improvement#improvement-model-tab

 

 

2. 認知症患者のPXを大幅に改善


英国バースにあるRoyal United Hospital(RUH)では、認知症患者のPXを大幅に改善させました。その取り組みについて紹介した、ローカルニュースサイト、バース・エコーの記事を紹介します。

 

RUHの入院患者の約25%は認知症または認知機能障害と診断されています。認知症コーディネーターは、チームで専門的なケアを提供することにより、認知症患者と家族をサポートします。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、認知症の人に社会的孤立などを招いたとされています。そのため、病院内では特に苦痛や方向感覚の喪失が生じやすくなっています。

パンデミックに対応するため、RUHでは新たに認知症サポートワーカーを導入するなど、PX改善のためにサービスを再設計しました。その結果、サポートできる患者数は最大に、なおかつ一対一の時間を増やすことができました。認知症コーディネーターのAstrid Siddornさんは、「病院という慣れない環境にいることは、認知症の人にとって困難な状況であることは理解しています。認知症サポートワーカーの導入は、一人ひとりに合ったケアを提供することに力を入れたいと思ったからです」と述べています。「一人ひとりに合ったケアとは、真の意味でパーソナライズされたケアの提供です。好きなもの、嫌いなもの、日常生活や家族といった背景を知ることは、苦痛を軽減し、コミュニケーションの問題を克服するのに役立ちます」

2020年11月に認知症サポーターに任命されたJulia Daviesさんは、「この仕事は、さまざまな形で患者に変化をもたらす、本当に素晴らしい仕事です。認知症サポートワーカーになってからの私のハイライトは、患者の誕生日に一緒にダンスをしたことや、ジグソーパズルを完成させるのを手伝いながら笑い、おしゃべりをしたこと、病院の庭で患者と新鮮な空気を吸いながら軽いエクササイズを楽しんだことなどです」と話します。「ささいなことが大きな違いを生み、愛する人と一緒にいられない家族にも安心感を与えます」

 

この新しい働き方が、患者と家族にポジティブな影響を与えたとして、RUHの「Improving Patient Experience Awards」で第1位を獲得しました。患者や家族からのフィードバックを検討し、認知症患者のニーズに迅速に対応してきたことが評価されました。

 

キュアではなくケア、高齢患者の入院生活の質を高めることがPX向上につながる取り組みは、今後、認知症対応がさらに必要となっていくなかで参考になります。全文は下記リンクからご一読ください。

Link:https://www.bathecho.co.uk/news/health/dementia-service-ruh-redesigned-patient-experience-97844/

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では医療機関や企業でPXを広めるエバンジェリストとして、PXE(Patient eXperience Expert)の認定を行っています。現在、2022年度の第4期生を募集中です。PXについて体系的に学べる内容となっており、多くの方のエントリーをお待ちしています。詳細と申し込みはリンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

 

***********

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


わが家の猫が最近覚えた「水芸」。浄水器から水を飲む様子を撮影しろとせがみます。かわいいので何回でも応じてしまうので、この構図の写真が山のようにたまっていきます。(F)