日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.201

1.PXと臨床の質との関係
2.職場安全とPX
3. 今後の予定

1.PXと臨床の質との関係


欧米において、PX(Patient eXperience;患者経験価値)の高い病院は利益率が高く、財務的に優れていると言われており、調査結果などもあります。コンサルティング会社・デロイトのヘルスソリューションセンターではこのほど、PXと臨床の質とのあいだに正の相関があるといった調査結果を公表しています。

 

エクスペリエンスをベースとした考え、患者中心のケアモデルに医療マーケットがシフトするのに伴い、PXを高めることは価値のある目標であり、支払者はケアの質の指標の一部としてPXをますます重視するようになっています。PXスコアは、病棟の夜間の騒音レベルや、看護師や医師が患者とどの程度コミュニケーションをとっているかなど、さまざまな要素を反映しており、病院の重要な業績評価指標となっています。

 

同社ではこれまでの研究で、PXスコアが高いほど病院の収益性が高いこと、このことは臨床ケアの向上に最も関連すると思われるPXの側面(特に看護師の配置)で最も強く現われるとしています。また、PXの改善は、ケアの質を向上させることにつながるため、PXスコアの向上が臨床の質の向上と関連する可能性を示していました。

患者の多くは病院を選ぶ際に、臨床結果とケア体験の両方を重視しますが、これまでPXと臨床の質との関連性は十分に研究されていません。このテーマをより深く理解するために回帰分析を行い、PXスコアと幅広い病院の臨床品質指標(POC;Process Of Care)との関連性を調べました。病院の業績に影響を与える病院の所有権、所在地、教育状況、支払者、患者構成などについて、病院および市場の特性に照らし合わせて調査しました。その結果、2つの主な知見が得られました。

 

1つは、患者の報告による評価が高い病院は、POCの品質スコアも高いこと。もう1つは、エクスペリエンスが高い病院は、すべてではないが、いくつかの医療アウトカムのスコアが高くなっています。

病院の経営幹部は、複数の優先事項やリソースの需要などから、PXデータを分析して対応することに対して疑問視している可能性があります。この新しい知見は、PXのビジネス・ケースを強化するのに役立ちます。さらに調査結果は、消費者を巻き込み、PXを向上させるツールやメカニズムへの投資において、病院のリーダーが優先順位をつけたいと考える可能性のあるケアの特定の側面を指摘しています。

 

ケアの質の中核的要素としてPXを重視する患者や支払者が増えていることから、病院は予約の取りやすさや意思決定の共有、便利な支払いプロセスや効果的なケアフォローの提供など、患者をより惹きつけ、PXを高めるために必要なメカニズム、ツール、テクノロジーへの投資を検討すべきです。

PXスコアは、必ずしも病院のケアの質を反映していないかもしれませんが、今回の調査結果は、PXと臨床の質への投資が相互に補強しあう関係であることを示唆しています。さらに病院のリーダーが消費者を引きつけ、PXを改善するのに役立つツールや、メカニズムへの投資を優先したいと思うかもしれないケアの特定の側面を示しています。

調査についての詳細はオープンになっていませんが、PXと臨床の質とが相関関係にあるという結果は興味深いですね。同じようなエビデンスがないか、注目したいと思います。

 

Link:https://www2.deloitte.com/us/en/pages/life-sciences-and-health-care/articles/patient-centered-care-and-experience-scores.html

 

 

2. 職場安全とPX


米のPX推進団体「The Beryl Institute」はこのほど、ホワイトペーパー(論文)を発行しました。タイトルは、「 Restoring Safe Workplaces in Healthcare;A Commitment to the Human Experience(ヘルスケアにおける安全な職場を取り戻す;HXへのコミットメント)」です。

 

このホワイトペーパーは、医療職場における非礼と敵意がもたらす影響と、安全な環境を確保することが全体的なケアとHXにおいて最高のものを提供するキャパシティを強化する理由について明らかにしています。また、なぜ職場の安全がHXに関係するのか、基礎的な約束として職場の安全に取り組んでいないことの意味についてもクリアにしています。

安全な職場を確保する方法として、「予防」「教育」「介入」の枠組みで、具体的な行動を提示しています。HXというレンズを通し、癒しのための安全な空間をつくるために、組織がより広いコミュニティーのなかでどのように行動しているかを紹介しています。職場の安全問題が対処されないままだと、職員の士気の低下、離職率の上昇、自信の喪失、ミスの増加などの具体的な影響をもたらすことも実証しています。

 

会員でない方は29.95ドルで、下記リンクから購入できます。

Link:https://www.theberylinstitute.org/store/viewproduct.aspx?id=20262195&utm_source=newsletter&utm_medium=email&utm_content=here.&utm_campaign=Restoring%20safe%20workplaces%205.12.22

 

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では医療機関や企業でPXを広めるエバンジェリストとして、PXE(Patient eXperience Expert)の認定を行っています。現在、2022年度の第4期生を募集中です。PXについて体系的に学べる内容となっております。詳細と申し込みはリンクからお願いします。

PXEの第1~3期生は5000円で受講可能です。改めてPXを学び直したいという方もぜひエントリーください。残席わずかなのでお早めにお願いします!

https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

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第9回PX寺子屋を、7月23日(土)12:30-13:30に開催します。PX概論のほか、病院でのPX向上の取り組み事例を紹介します。

 

「PX概論」
松下記念病院 看護師 小松 良平

「小松市民病院におけるPX向上推進WG立ち上げについて」
小松市民病院 看護部長 湯野 智香子

 

研究会会員は無料、非会員の方は1000円です。

下記リンクから申し込みできます、奮ってご参加ください!

https://www.pxj.or.jp/events/

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


もはや懐かしいGWの話ですが、キノコ好き(シイタケを除く)を歓喜させる火鍋を食べました。気のせいかもしれませんが、キノコをたくさん摂取するといつもお腹が膨らみます……。エビデンスがあれば教えてください!(F)