日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.204

1.日本プライマリ・ケア連合学会でPX

2.今後の予定

1.日本プライマリ・ケア連合学会でPX


6月11~12日に開催された「第13回日本プライマリケア・連合学会学術大会」で、PX(Patient eXperience;患者経験価値)に関するシンポジウムがありました。同学会でPXを扱うのは初めてとのことで、意義深いものとなりました。

 

シンポジウムは「患者のエクスペリエンス/ジャーニーを医療の質向上にどう活かすか」がテーマ。プライマリ・ケア領域で特に重視される患者中心性の指標であるPXは、有効性や患者安全とも深い関係があることがわかっています。また、縦断的なPXをPJ(Patient Journey)とし、より柔軟な活用が可能です。シンポジウムではPXやPJの意義や評価・活用について、患者と医療者の双方の視点から解説。プライマリ・ケア領域における患者中心の医療のあり方を考えました。

COVID-19の流行後、久しぶりの会場開催でした。予想以上に多くの人が来場してにぎわっていました。

 

7月からスタートするPXE(Patient eXperience Expert)養成講座で講師を務める、東京慈恵医科大学総合医科学研究センター臨床疫学研究部の青木拓也さんが座長・演者として登壇。PXとPJの概論を紹介しました。

PXに関するエビデンスとして、▽他の医療の質の中核特性(有効性、安全性)と正の関連、▽アドヒアランスやセルフマネジメントなどの患者行動に影響、▽不良なPXは、退院後の救急外来受診や再入院といった医療リソースの利用増加と関連、▽良好なPXは、病院のスタッフ離職の減少や財務実績の向上と関連――の4つを指摘。さらに海外や日本でのPXの活用状況を紹介しました。PJについては、「患者がケアプロセスでたどる一連の道のりを評価するもの」と定義し、質的方法(Patient Journey Mapping;PJM)を用いて評価すると説明しました。「PXは国際的に重視される医療の質指標であり、PX向上には『患者協働』が重要」と結論づけました。

 

PJMについては、PXEでもある練馬光が丘病院総合診療科の小坂鎮太郎さんが、その活用について語りました。

小坂さんは「PJMを使ってPXを豊かにする」をテーマに、「患者の背景(これまでの人生)と意向(これからの人生)のPXを合わせて旅路(ジャーニー)とする」とPJの基本的な考え方を説明。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック初期にPJMを使って、患者目線のフローを作成し、問題点を抽出し、業務改善につなげた取り組みに触れました。

PJMをもとに実行したこととして、IoTデバイスなどを活用した遠隔によるリハビリや回診、栄養指導により、多職種や患者家族のつながり低下の予防となり、医療の質低下を防いだことを挙げました。さらに患者・家族の不安解消として、隔離病棟でのAmazonの利用、院内フリーWifiの設定、遠隔面会ツールを持たない人へのデバイスの貸し出しを行いました。また、COVID-19在宅療養患者のPJについての取り組みを紹介しました。「COVID-19のような緊急事態でも慢性的な問題でも、PXやEX(Employee eXperience;従業員経験価値)についてPJMを活用した改善を検討することで施設や地域を超えたチームや患者・家族との助け合いが加速されます」と話しました。

 

名古屋大学大学院医療の質・患者安全学講座の栗原健さんは、「PXを向上させる患者安全における患者協働について」のテーマで、医療の質や安全性を高めるための患者協働について発表しました。

医療の質や患者安全における患者協働については、「医療従事者など医療にかかわる者が患者、家族などの協力を促すことにより、患者中心性を向上させ、医療の質や安全を向上させること」と定義。患者協働を実践するためには戦略が必要と指摘し、「プライマリケアにおける患者・家族との協働による患者安全改善ガイド」*内で提案されている戦略として、次の4つを示しました。

1.「患者が診療において協働するための準備」を用いて、診察時の概要を把握することでエラーを減らし、診療を効率化する

2.「安全な薬のリストを患者と作成する」を用いて、薬剤投与の安全性を高める

3.「教え返す」を用いて、コミュニケーションとヘルスリテラシーを改善する

4.「患者も引継ぎに参加」を用いて、コミュニケーションの協同を支援する

そのうえで戦略実装のための具体的な設計の仕方、患者協働の効果を測定する指標例を紹介。「実装する際には質改善手法が必要で、効果測定にはPXが有用」としました。

 

患者の立場からは私、藤井が登壇しました。AYA世代のがん患者としての治療の過程においての感情の変化や、患者視点からのPXサーベイのあり方、PX研究会としての活動、そしてグローバルでのPXの取り組みについてお話ししました。プライマリ・ケアとPXとの親和性の高さを改めて認識し、PXへの関心とニーズの高まりなどが感じられました。同学会会員は8月31日までオンデマンド配信がありますので、シンポジウムに参加できなかった方はぜひご視聴ください。

演者として学会に初めて参加しました。シンポジウムでご一緒した先生方、会場でお声がけくださった方、ありがとうございました!

学会シーズンが続きますが、日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会のメンバーが7月8~9日開催の「第24回日本医療マネジメント学会学術総会」で発表を行います。学会終了後に、当メールマガジンで発表内容を紹介したいと思います。

 

*プライマリケアにおける患者・家族との協働による患者安全改善ガイド

Link:http://qsh.jp/wp/wp-content/uploads/2021/02/65525d10f4ee4dff2ac44b7a66e7110a.pdf

 

 

 

 

2. 今後の予定


PX研究会では医療機関や企業でPXを広めるエバンジェリストとして、PXEの認定を行っています。現在、2022年度の第4期生を募集中です。PXについて体系的に学べる内容となっております。詳細と申し込みはリンクからお願いします。

PXEの第1~3期生は5000円で受講可能です。改めてPXを学び直したいという方もぜひエントリーください。残席わずかなのでお早めにお願いします!

https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

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第9回PX寺子屋を、7月23日(土)12:30-13:30に開催します。PX概論のほか、病院でのPX向上の取り組み事例を紹介します。

 

「PX概論」
松下記念病院 看護師 小松 良平

「小松市民病院におけるPX向上推進WG立ち上げについて」
小松市民病院 看護部長 湯野 智香子

 

研究会会員は無料、非会員の方は1000円です。

下記リンクから申し込みできます、奮ってご参加ください!

https://www.pxj.or.jp/events/

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


韓国ドラマ好きの友人たちと新大久保のカフェに入ったら、BTSの結成9周年イベントをしていて、特典のカードが積まれていました。私の推しのカードばかりでテンション上がりましたが、「やっぱり人気がないからね……」と友人。ガチでないARMY(ファン)な私ですが、本当に活動休止なのか、動向が気になります。(F)