日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.206

1.ユーモアがPXを高める!?
2.Press GaneyによるPS調査
3. 今後の予定

1.ユーモアがPXを高める!?


職場で効果的にユーモアを発揮する方法とは? ハーバード・ビジネス・レビューに掲載された、米Press Ganeyが患者に実施した調査回答を分析した結果をもとにした考察です。

 

Press Ganeyは多くの医療機関でPS(Patient Satisfaction;患者満足度)調査を行い、PX(Patient eXperience;患者経験価値)向上をサポートしています。記事を執筆した、同社のバイスプレジデントで言語分析を担当するSenem Guneyさんと最高医療責任者のThomas H. Leeさんは、医師と患者とのやりとりに着目。2020年に全米の患者から集めた98万8161件の回答(入院患者17%、外来患者83%)から、AI(人工知能)と自然言語処理を用いて、ポジティブなコメントとネガティブなコメントを抽出しました。

分析では127万件のインサイトを抽出し、テーマとサブテーマに沿ってコメントを分類。この技術によって、患者にとって重要でありながら、標準的な調査質問では把握できない問題を特定できるといいます。

たとえば、「担当医があなたに理解できるように説明した頻度は?」という質問では、医師が患者に情報を伝えたかどうかはわかるが、患者がどのように感じたかはわかりません。しかし、患者が記述したコメントを分析したところ、医師とのポジティブな経験を語る時は、発言のユーモアに繰り返し言及していることがわかりました。患者は医師が難しい場面でユーモアを使うことで、思いやりを示す行動を補強できるかどうかに注目しているようです。

筆者らは思いやりについて、「ユーモアはコースのメイン料理ではなく、味を決める重要なスパイスに似ている」と指摘。患者が医師を評価するメイン料理とは、礼儀、敬意などで、専門的なスキルにはあまり言及しないが、共感、やさしさ、助けられたこと、忍耐力については具体的に言及しています。これらにユーモアを付け加えることで、患者から歓迎されるのです。

 

ユーモアを使うためには目の前のやり取りに集中し、思いやりが伝わるには信頼性が必要となります。つまり医師は共感とやさしさを示し、患者に手を差し伸べることに意識を向ける必要があります。一方、礼儀や敬意が欠けていると患者が感じる際にユーモアを使うと、患者をさらに傷つけることになります。

 

ユーモアによって、医師と患者を隔てる垣根を取り払うことができます。こういったアプローチは、患者に対してだけでなく一般化できるとしています。

思いやりを伝える際のユーモアの使い方の事例は下記リンク(日本語版)に掲載されています。

 

Link:https://www.dhbr.net/articles/-/8233

 

 

2. Press GaneyによるPS調査


先の記事に続いて、Press Ganey関連の話題です。Press Ganeyは民間会社であり、1986年に設立。米国の病院における患者満足度調査でかなりのシェアを占めています。4万1000以上の医療施設と連携していて、4000万人超の患者、300万人超の医療者の声を、2000医療機関の安全性と質データと融合させるプラットフォームを提供しています。PXをはじめ安全性、臨床的卓越性、ワークフォース・エンゲージメントに対応する統合ソリューションを展開しています。

 

西海岸を拠点に400以上の医療施設を運営するAdventist Healthは6月28日に、23の病院と300の診療所におけるPX向上のパートナーに、Press Ganeyを選んだと発表しました。カリフォルニア州、ハワイ州、オレゴン州における年間440万人の患者との対話に影響を与えることになります。

Adventist Healthは信仰に基づく非営利の統合医療システムで病院、診療所、在宅ケア機関、ホスピス機関、合弁のリタイアメントセンターでケアを提供しています。Adventist HealthのCXO(Chief Experience Officer)のStephanie Abbotさんは「Press Ganeyが継続的に改善の機会を特定し、フラグを立てることで、我々のフロントラインのリーダーはデータの検索や分析に負担をかけることなく、患者とのあらゆる接点で質の高いエクスペリエンスを提供するために必要なツールを手に入れることができます」とコメントしています。

 

Press Ganeyは、Adventist Healthがシステム全体の改革を迅速に展開できるよう、以下のような支援を行います。

Dynamic Surveying:SMSテキストメッセージやメールで共有される、カスタマイズ可能なeサーベイを簡単に設計し、患者インサイトを迅速に引き出す。

NarrativeDx:患者からのフィードバックに対し、発言内容だけでなく、感じたこともレビューするセンチメント分析。オープンテキストの調査回答から新たなテーマを予測する。

Digital Communities:医療行為について、患者がリアルタイムにフィードバック、写真、ビデオを投稿できるインタラクティブなソーシャルメディアスタイルのアプリケーション。

HCAHPS surveys and benchmarking:HCAHPS(Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)プログラムの要件を満たし、CAHPSスコアを向上させるための堅牢なツール群および専門知識を提供する。

 

PSは医療の質との相関があり、米国では2012年以降にPay for Performance制度によって診療報酬にも影響を及ぼすものとして注目されてきました。また、PS調査は医師やNPなど医療者の査定やボーナスにも反映されていることから、「Press Ganey」の言葉は医療者にとって恐怖でもあるようです。

 

Press Ganeyホームページ

Link:https://www.pressganey.com/

Adventist Healthとのパートナーシップに関するリリース

Link:https://www.businesswire.com/news/home/20220628005774/en/

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では医療機関や企業でPXを広めるエバンジェリストとして、PXEの認定を行っています。現在、2022年度の第4期生を募集中です。PXについて体系的に学べる内容となっております。詳細と申し込みはリンクからお願いします。

PXEの第1~3期生は5000円で受講可能です。改めてPXを学び直したいという方もぜひエントリーください。残席わずかなのでお早めにお願いします!

https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

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第9回PX寺子屋を、7月23日(土)12:30-13:30に開催します。PX概論のほか、病院でのPX向上の取り組み事例を紹介します。

 

「PX概論」
松下記念病院 看護師 小松 良平

「小松市民病院におけるPX向上推進WG立ち上げについて」
小松市民病院 看護部長 湯野 智香子

 

研究会会員は無料、非会員の方は1000円です。

下記リンクから申し込みできます、奮ってご参加ください!

https://www.pxj.or.jp/events/

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


6月なのに早くもうだるような暑さ! それこそ、スパイスが効いたものを投入したくなります。写真は、私が一番好きなカレー(激辛)です。(F)