日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.208

1.CXOの役割
2.PX関連の最新ホワイトペーパー
3. 今後の予定

1.CXOの役割


米国では多くの病院にCXO(Chief eXperience Officer;エクスペリエンスの最高責任者)が中心となり、PX(patient eXperience;患者経験価値)向上のための取り組みを行っています。C-suiteと呼ばれる最高幹部のポジションが、PXで果たす役割とは? 米イリノイ州のITソリューション・プロバイダーであるCDW社が発行するオウンドメディア、HealthTech誌の記事を紹介します。

 

CXOは近年生まれた役職ですが、責任の所在が変化しています。当初は米国のPXサーベイであるHCAHPS(Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems;エイチキャップス)のスコアを改善することが重視されていました。また、患者安全や医療の質への取り組みと同時に、駐車場や待合室、院内の案内図の整備など臨床とは関係ない問題に取り組んでいました。現在では、組織全体の業務改善や技術活用の取り組みの際に、患者の声を代弁する立場も担っています。

UChicago Medicineで7年間、Chief Experience and Innovation Officerを務めたSusan Murphyさんは、「HCAHPSのスコアは依然として重要ですが、スコアを追い求めるだけではなくなっています。患者が私たちに何を伝えようとしているのかを理解しようとしています。それは、私たちの仕事が正しいかどうかということだけではなく、患者ニーズについて、患者と対話するということなのです」と話します。SusanさんはCXOの仕事について、Q&A形式で次のように答えています。

 

Q:CXOは、他の役職とどのように違うのでしょうか?
A:患者=真に重要な目標だと浸透させるのが役割

CXOは、ケアチームが毎日行っていることに光を当て、日常が驚くべきものであることを示します。私は看護師なので、臨床チームの目線を持っています。また患者だけでなく、介護者やその家族などすべての人に毎日、特別な体験を提供するために役立てることを考えています。患者は私たちの「真に重要な目標」であり、患者のために何をすべきかを考えるよう、チームの全員に浸透させたいのです。リーダーが戦略的な計画を立てる際には、常に患者のことを念頭に置いてほしいですね。

Q:プロセス改善にはどのようなアプローチをとられていますか?
A:スタッフのエンゲージメントとPXに焦点を当てる

私の目標は、スタッフのエンゲージメントとPXを取り入れることです。現場リーダーを指導し、ストレングスをベースとしたコーチングを通じて、チームを導く役割を理解させたいと考えています。

たとえば、血液検査室では待ち時間が長く、末端のほうまで影響を及ぼしていました。そこで、実際に作業をしているスタッフが解決策を生み出す手助けをするようにしました。待ち時間を短縮することは重要ですが、血液ラボが毎日行っている素晴らしい仕事にも焦点を当て、プロセスを修正し、新しい戦略を立てることが、ラボのさらなる活動の助けになると伝えました。以前は、私たちはスタッフがいる場所の“ドアをノックし”、座って、何をすべきかを教えていました。今では、彼らが頑張って取り組んでいることにスポットを当てるため、別の方法をとっています。私たちは良い行動を広げていこうとしているのです。

Q:PXは病院の壁を越えて、どこにまで広がっていくのでしょうか?
A:入院前後までを含めたケアの継続性を考慮

私たちが重視していることのひとつは、ケアの継続性です。その重要な要素として、患者を消費者として考えています。さまざまな状況、あるいは住んでいる場所で必要なケアを受けるために、どのように思いやりをもって消費者主義を通せばいいのかということです。また、新しいサービスを検討する際には、連続したケアについて考える必要があります。あるものは入院前に有効かもしれませんが、別のものは入院中に有効かもしれませんし、別のものは退院時に有効かもしれません。このことは、患者・家族諮問委員会の前で説明する必要があります。私たちは、このような決定を下すために患者の声を頼りにしています。

Q:新しいテクノロジーが患者のニーズに合致していることを、どのようにして確認しますか?
A:デバイスを使う際にも共感とヒューマンタッチが必要

私たちは、エクスペリエンスに共感をもたらし、ヒューマンタッチを取り入れるようにしています。MyChart(患者と医療者が検査結果などを共有できるアプリ)にログインして検査結果を見るのと、Amazonで注文をするのとはわけが違います。共感を純粋に引き出していくことが必要です。テクノロジーを使って医療を進歩させることはできても、医療には共感的な会話が必要なのです。

 

全文は以下のリンクからお読みください。

Link:https://healthtechmagazine.net/article/2021/03/qa-how-chief-experience-officer-role-evolving

メールマガジン読者で使用している方もいるかと思いますが、個人の創作を支援するメディアプラットフォーム「note」にもCXOがいます。CXOの深津貴之さんがその仕事について紹介していますので、こちらも読んでみるとCXOの仕事のイメージが膨らむかと思います。

Link:https://note.com/fladdict/n/n72e99da621a2

 

 

2. PX関連の最新ホワイトペーパー


米のPX推進団体、The Beryl InstituteではPXに関するホワイトペーパーを発行しています。最新のテーマは、「Restoring Safe Workplaces in Healthcare: A Commitment to the Human Experience(医療における安全な職場への回帰;ヒューマンエクスペリエンスへのコミットメント)」です。

 

この論文は、医療職場における非礼と敵意がもたらす影響と、安全な環境を確保することが全体的なケアとHX( Human Experience;人の経験価値)の観点から最高のものを提供する能力を強化する理由を明らかにしています。なぜ職場の安全がHXと関係するのか、そして職場の安全に取り組んでいないことで引き起こされるであろう結果を明らかにしています。

対処されていない職場の安全問題は従業員の士気の低下、離職率の上昇、自信の低下、ミスの増加など、具体的な影響につながることを実証しています。そのうえで、安全な職場を確保するための予防、教育、介入という枠組みで、具体的に何をすればいいかの行動を提供しています。

またHXという“レンズ”、見方を通して、癒しのための安全な空間を創造するために、組織がより広いコミュニティーの中でどのように行動しているかを紹介しています。

 

 

ホワイトペーパーは29.95ドルで下記リンクから購入可能です。

Link:https://www.theberylinstitute.org/store/viewproduct.aspx?id=20262195

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では医療機関や企業でPXを広めるエバンジェリストとして、PXEの認定を行っています。現在、2022年度の第4期生を募集中です。PXについて体系的に学べる内容となっております。詳細と申し込みはリンクからお願いします。

PXEの第1~3期生は5000円で受講可能です。改めてPXを学び直したいという方もぜひエントリーください。

満員御礼ですが増席しましたのであと少し募集します!

https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

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第9回PX寺子屋を、7月23日(土)12:30-13:30に開催します。PX概論のほか、病院でのPX向上の取り組み事例を紹介します。

 

「PX概論」
松下記念病院 看護師 小松 良平

「小松市民病院におけるPX向上推進WG立ち上げについて」
小松市民病院 看護部長 湯野 智香子

 

研究会会員は無料、非会員の方は1000円です。

下記リンクから申し込みできます、奮ってご参加ください!

https://www.pxj.or.jp/events/

 

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「患者・家族メンタル支援学会 第6回学術総会」が11月12日、東海大学医学部松前記念講堂(神奈川県伊勢原市)で開催されます。PXをテーマにしたシンポジウムでは、日本PX研究会のメンバー、関係者などが登壇します。登壇者およびテーマは次の通りです。

1.医療の質とペイシェント・エクスペリエンス

青木拓也(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター臨床疫学研究部)

2.日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会の活動

曽我香織(日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会)

3.新型コロナ・パンデミックにおけるペイシェント・エクスペリエンス

小坂鎮太郎(練馬光が丘病院総合診療科)

4.ペイシェント・エクスペリエンスとコーチング

出江紳一(東北大学大学院医工学研究科リハビリテーション医工学分野)

 

当研究会理事で、学会長を務める東海大学医学部内科学系血液・腫瘍内科学教授の安藤潔さんによる教育講演「医療と対話」をはじめ、PXの学びにつながる内容となっています。

詳細は学術総会ホームページからご確認ください。

http://smspf.org/6th/index.html

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


ふるさと納税で奄美市からパッションフルーツが届きました。奄美では「時計草」の名で親しまれています。食べるのはもちろん、置いてある部屋いっぱいに広がる香りも楽しんでいます。(F)