日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.227

1.医療者が提供するPXの弱点
2.在宅患者の不安を軽減する4つの方法
3. 今後の予定

1.医療者が提供するPXの弱点


一貫性のない、バラバラなPX(Patient eXperience;患者経験価値)が医療従事者の慢性的な弱点であることが判明――。米国カリフォルニア州のクラウド型コンタクトセンターサービスを提供するTalkdesk社と、医療ITリーダー向けの専門組織であるCollege of Healthcare Information Management Executives (CHIME)が共同で制作した調査リポート「The Future of Patient Experience」の概要です。

 

調査は2022年7月、ヘルスケア分野のシニアリーダーを対象に実施。調査結果は、医療システム、病院、外来施設・医師会、介護施設の幹部に対する115件のグローバルインタビューに基づいたものです。

医療機関は近年、患者を中心としたケアを向上させるために多大な投資を行ってきました。その努力に伴い、多くの医療機関がデジタル技術を導入しましたが、その結果、予期せぬ弊害が発生しています。チャネルへのアクセスや自動化が進む一方で、時にサイロ化したデータや断片的な患者とのやり取りを生み出しています。実際、調査回答者の71%は、組織内で患者エンゲージメント機能の統合が限定的、またはまったく行われていないと答えています。

患者との交流の分断は、医療機関にはびこっている問題であり、重要な情報格差、患者の問題に効果的に対処できないこと、さらには患者のアウトカムを悪化させることにつながります。また、患者だけでなく、患者サービスのスタッフにも軋轢を与え、スタッフの燃え尽き症候群や離職を引き起こす可能性があります。

回答者は、PXに関する最も緊急の課題として、一貫性のなさ(63%)とバラバラであること(58%)を挙げています。患者が医療サービスを受けるための選択肢を増やし、優れたサービスに対する期待が高まるなか、医療機関は患者とのエンゲージメント機能を変革するためにテクノロジーを活用することが不可欠となっています。

調査を実施した、CHIME Digital Health AnalyticsのLorren Pettitさんは「診療前から診療の最中、診療後の一貫した高品質のエクスペリエンスは、患者の健康とWell-beingに不可欠ですが、真に患者中心でわかりやすい、アクセスしやすいジャーニーへと進化するためにはさらなる発展が必要です。患者とのやりとりのさまざまな構成要素を統合し、簡単でナビゲートしやすいエクスペリエンスを提供することはビジョンを実現するための好機といえます」と指摘します。

回答者の55%が患者向けのシステム機能の統合を優先していますが、エンゲージメント機能の所有権が分断されていることや、ITインフラの制限がこれらの機能を単一プラットフォームに統合するうえでの障害になっているとしています。

Talkdeskのヘルスケア・ライフサイエンス戦略担当であるPatty Haywardさんは次のように述べています。「患者エンゲージメント・ソリューションを統合するには、高いコストと時間、組織の意志が必要なため、医療機関のリーダーが直面する内部障壁は驚くことではありません。さまざまなチャネルや機能領域をサポートするクラウドベースの統合優先プラットフォームは、カスタム統合プロジェクトに代わるものであり、より統合的でシームレスなペイシェント・ジャーニーへの道を開くものです」

 

調査レポートの全文は、下記リンク本文中からダウンロードできます(要登録)。

Link:https://www.talkdesk.com/news-and-press/press-releases/chime-research-2022/

 

 

2. 在宅患者の不安を軽減する4つの方法


在宅医療に携わる人が患者の不安を軽減し、PXを高めるためにできる、実践的なことは何でしょうか。14年間、在宅リハビリの臨床医を務め、現在は臨床施設の管理者であるMike Dellossoさんの寄稿を紹介します。

Mikeさんは「在宅医療は、医療における他のどのような環境とも異なるため、PXのパラダイムを転換することが必要です。患者が自宅でケアを受けることに対して抱いている不安、恐怖、懸念について考えてみてください。患者の不安を軽減するために、安全性、環境、ホスピタリティについて考えてみましょう。臨床医として私たちが目指すべきは、患者さんの不安を取り除き、素晴らしいケアを提供し、思い出に残るエクスペリエンスをすることです」と話し、具体的には次の4つを挙げています。

 

1. 患者の家にいる「他人」であることを忘れないこと。多くの場合、患者が最も安心できる場所は自宅です。玄関のドアは外界とのバリアであり、そこを通る時、私たちは患者の安全な空間に入り、未知のものを持ち込むことになります。患者の無防備な姿は、不安を増幅させるだけです。不安を軽減するために、話し方とボディランゲージに気を配る必要があります。やさしく、親切に話す。よく微笑む。患者さんと同じ目線に立ち、上から目線にならないようにする。患者さんに触れる前には許可を得て、何をするのか、なぜするのかを説明します。

2. 患者の家は、さまざまな形や大きさ、清潔さや整頓の度合いがあるが、患者が快適に感じる場所、思い出がつくられる場所、家族が訪れる場所、涙を流す場所、笑い声が響く場所であることを認識する必要があります。家にある物にも敬意を表しましょう。不快感や嫌悪感を示してはなりません。快く私たちを彼らの領域に受け入れてくれているので、それを尊重する必要があります。

3. 患者が主導権を握るようにします。私たちは専門家かもしれませんが、それでも彼らの家ではただの訪問者です。不安を減らすには、教育が重要です。決断の背後にある理由を説明し、私たちが何をし、何を求めているのか、その理由と方法について患者を教育してください。そして、その背後にある科学について、患者が容易に理解できる言葉で説明することを恐れないでください。私たちの科学的、医学的知見は、彼らの不安を軽減します。何をすべきか指示するのではなく、なぜそうすべきなのかを納得させるのです。治療計画の策定や目標設定において、患者自身が重要な役割を果たすことができるようにしましょう。目標や期待値が患者の希望に沿いつつも、現実的で達成可能なものになるように、そのプロセスを通じて患者をやさしく導いてください。

4. 適切なユーモアを用いることです。笑いはエンドルフィンを分泌させ、不安の軽減に直接的かつ即効的な影響を与えることができます。患者と一緒に笑うことを怖がらないでください。それは、あなたが患者と過ごす時間を楽しんでいること、そして患者を患者以上の存在として見ていることを示すものです。適切な時に適切なユーモアを交えることは、不安を軽減するための重要なツールです。

 

Link:https://www.theberylinstitute.org/blogpost/947424/481820/Four-Ways-to-Reduce-Anxiety-in-Home-Health-Patients

 

 

3. 今後の予定


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会主催の一大イベント、第5回PXフォーラムがいよいよ今週末、12月10日14:00~17:00に開催します。

テーマは「各国の取り組みから学ぶ ~グローバルにおけるPX~」。医療機関でのPX導入が進んでいる海外事情、日本でのPX導入・改善事例などを紹介します。

フランスのPX推進団体「French Patient Experience Institute」のCEOであるAmah Koueviさんによる特別講演「Patient experience: universal vision, specific actions(PX:普遍的なビジョンと具体的なアクション )」があります。

 

参加費3000円(会員は無料)です。満席御礼につき増席しました。

申し込みは、本日8日23時59分までとなります!

Link:https://www.pxj.or.jp/pxforum2022/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


通りがかった東京・表参道のイルミネーションがまぶしかったです。まだコロナ第8波の最中ですが、クリスマスのころにはピークアウトしていますように。(F)