日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.234

1.PXの定義は?
2.出江理事の最終講義
3. 今後の予定

※メールマガジンの配信が遅れましたことお詫び申し上げます

1.PXの定義は?


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会ではPX(Patient eXperience;患者経験価値)を、「患者が医療サービスを受けるなかで経験するすべての事象」と捉えていますが、実は世界共通の定義はありません。それは個人や医療機関によって多様な考えが存在するからです。米国のPX推進団体、The Beryl Instituteが発行するオープンアクセス・ジャーナル「Patient Experience Journal」(PXJ)に投稿された、PXの定義についての考察を紹介します。

 

Beryl InstituteではPXの定義を、「PXとは一連のケアだけにとどまらないインタラクション(=かかわり)の総和であり、組織の文化によって形成され、患者の捉え方に影響をあたえる」としていますが、この記事では「実用的な定義として推奨するには根拠が不足する」と指摘しています。研究や品質改善の取り組み、および一般的な医療行為に適用可能で、「実用的なPXの定義を特定することで、ヘルスケアにおけるPXの取り組みが今以上に効果的になるのではないか」と言います。

 

PXを定義づけするためのリサーチを行った目的として、以下の3つを挙げています。

1.既存のPXの定義に共通かつ頻繁に引用されている概念、構成要因、テーマをみつける

2.これらを共有する可能性のある定義にする

3.見逃されている可能性のある、または、既存の定義をよりよくする重要な概念をみつける

 

まず、PXの定義を扱っている2000~2014年までの文献からPXの定義、説明、概念を明確に示している18の資料に絞り込みました。

ピックアップした資料のなかでは、「PXは単発的な出来事ではなくて、多くのタッチポイントに影響される」との指摘があります。PXは単なるケアではなく、医療機関にコンタクトをとった時から退院後までの患者の経験の合計です。それにはスタッフや組織文化のかかわりが重要であり、医療的行為にかかわらないことも含まれています。

また、患者中心性のケアに重点を置いているものもありました。スタッフの有能さ、質の高いケア、個々に対応したケア、タイミングよく反応すること、ケアの調整力、信頼性がある適切な対応などの要素が、患者中心のケアを構成しているとしています。そしてPXとは、医療機関のブランド力、スタッフとかかわる際に起きる出来事によって影響を受けるといいます。

別の資料では、組織内の全スタッフがPXにかかわっており、患者中心のケアに尽力し、PXを向上させることは患者満足度のデータやHCAHPS(Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)の改善がみられると述べています。複数の資料ではPXの重要な項目として、患者や家族の精神的なサポート、患者・家族・友人の積極的な関与、コミュニケーションなど個人に注目した定義が示されていました。

さらに別の資料では、PXの測定はWHOの用語である「responsiveness(応答性)」を捉えることが目的であり、PS(Patient Satisfaction;患者満足度)以上であり、同等に扱うものではないと指摘。HCAHPSやPS調査のような単純な測定以上の調査を行う必要性があるとしています。さらに、PXをよりポジティブに提供するため、▽個人に対応した医療を提供すること、▽患者と協力すること、▽従業員を力づけること――の3つを提案しています。

このリサーチでは、結果として共通したPXの定義を見出すことには至っていません。しかし共通の概念(身体で感じる体験、個人的なかかわり、連続性、組織/カルチャーにより形づくられること、患者の積極的な参加の重要性、知覚、情報、反応性 )の存在や、テーマ(PXはPSに限らない、調査の結果だけにとどまらないことの必要性、一連のケア、期待値に注目すること、個々に対応したケアやサービス、PXは患者中心のケアの原則に沿ったものであること)を確認することができたといいます。

 

全文は下記からダウンロードして読むことができます。

Link:https://pxjournal.org/cgi/viewcontent.cgi?article=1004&context=journal

 

 

 

2. 出江理事の最終講義


直前のご案内となりますが、日本PX研究会理事で、東北大学大学院医工学研究科教授の出江紳一さんが本日2月3日15:15~、最終講義を行います。題目は、「回復する身体と脳」。PXに関連した、患者中心性についてのお話しがあります。ライブ配信、アーカイブ配信があります。予聴会に参加したメンバーがとても面白い内容だったと申しております。ぜひご聴講ください!

 

2023年2月3日(金)15:15~15:45

場 所:医学部百周年開設記念ホール 星陵オーディトリアム講堂

ライブ配信:https://youtu.be/IS8jVwkzii8

アーカイブ配信:https://youtube.com/playlist?list=PLXFt7jahEagFr9Tzbe_AXCIsuMwPu3P5s

※公開日2023年3月6日(月)〜2023年12月末日

 

 

 

 

3. 今後の予定


第5期生のPXEの募集を開始しております。

2023年7月開講の全5回の養成講座では、PXの基本的な考え方からPXサーベイの実践、患者ジャーニーマップの作成、患者の思いを引き出すコミュニケーション法などを学ぶことができます。

患者視点の医療サービス提供を実現したい方であれば、医療者に限らず、どなたでも受験可能です。医療現場や職場でPXを向上させる旗振り役として、私たちと一緒に活動しませんか?

概要および申し込みは下記リンクからお願いします。

Link:https://www.pxj.or.jp/pxe5/

*PX研究会の運営サポートメンバーの募集は締め切らせていただきました。ご応募くださったみなさま、感謝申し上げます!

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


今週も食レポです笑。愛媛の金ゴマとアンチョビのタヤリン。隣で食べている方から漂ってきたゴマの香りに負けて注文。五感で楽しめました。(F)