日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.63

1.患者のよりよい「経験」を考えるHX
2.連載「Patient Stories」第4回 自分の人生を取り戻す
3. 今後の予定

1.患者のよりよい「経験」を考えるHX


ヘルスケア・エクスペリエンス(Healthcare Experience;HX)という言葉をご存知でしょうか。「患者さんのよりよい『経験』を考えるこれからのヘルスケア」を、ヘルスケア企業として示している大日本住友製薬が提唱する考え方です。

 

HXは患者を中心に、かかわるすべての人にとってよりよい経験の実現につなげていく取り組みになります。その背景にあるのが、患者中心の医療です。HXを形にする手法として、同社では「デザイン思考」の活用を挙げています。

デザイン思考とは人を中心とした視点で創造的に問題を解決するアプローチ。人が「経験した」安心や不安、幸福、不満などの感情を観察やインタビューなどから発見し、ジャーニーマップなどの各種手法を通じて、製品やサービスの改善、開発につなげていくものです。グーグルやアップル、ナイキなどの企業ほか、メイヨークリニックなどの病院でも取り入れています。

2002年に病院として、最も早くデザイン思考を導入したメイヨークリニックでは医師、看護師、検査技師、事務職員、デザイナー、そして患者が集まってアイデアを考え、プロトタイプをつくって現場で実験するためのデザインラボを院内に開設。100年前とほとんどデザインが変わっていなかった診察室の潜在的な問題を洗い出し、機能やレイアウト、内装デザインをリデザインしたとのこと。現在では50人以上のデザインラボのスタッフが、6万4000人の職員と年間で50万人の患者のために、ヘルスケアソリューションの開発に取り組んでいます。

「国内のヘルスケア業界でもデザイン思考の考え方は有用だととらえ、特に地域包括ケアシステムにおける多職種連携や意思疎通においても有効な手段であると考えています」と、大日本住友製薬はコメントしてます。患者中心の医療の実現に向けて、患者を含めてかかわるさまざまな人たちのいい経験をつくっていくというアプローチはPXと共通しています。日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では法人会員である同社と協働し、新しい経験価値をつくっていきたいと考えています。

出典:https://ds-pharma.jp/learning/hx/

 

 

2.連載「Patient Stories」第4回 自分の人生を取り戻す


米オハイオ州のクリーブランドクリニックが公開する、さまざまな患者の物語を紹介する「Patient Stories」。第4回はアラブ首長国連邦の首都アブダビにあるクリーブランドクリニックで難しい脳腫瘍手術を受けた30歳の女性を取り上げます。彼女は同院のことを「アメージング・プレイス」と表現しています。その理由はどこにあるのでしょうか。

 

☆自分の人生を取り戻す

Marwa Ahmさんは何年もの間、次第に悪化していく頭痛や筋肉痛に悩まされていました。2017年10月に休暇から仕事に復帰した時には市販の痛み止めでは頭痛は収まらず、一日中めまいと嘔吐があり、左脚と腕が重く感じられました。Marwa さんはクリーブランドクリニックアブダビを受診し、神経科医と面会した2週間のうちに、頭蓋骨底にある4~5cmの良性腫瘍が神経に作用し、症状を引き起こしているとの診断を受けました。Marwa さんの腫瘍は10万人のうち4人にしかないような珍しいものでした。

MarwaさんはVPシャント術を受け、数日後に腫瘍を摘出するための非常に複雑な手術を受けました。術後1カ月で仕事に復帰することができました。手術の後遺症として顔面のしびれ、複視、脳卒中のような症状、嚥下障害などを引き起こす可能性がありましたが、これらの症状は出ませんでした。そして新たな生きがいを持てるようになりました。

「クリーブランドクリニックアブダビは素晴らしいところです。私をサポートしてくれたスタッフのおかげで再び、人生を取り戻すことができました。彼らは私の家族にも、親切にサポートしてくれた素晴らしい人々。今まで行ったことがあるなかで一番いい場所でした」とMarwaさんは振り返ります。

「私はこの経験によって、以前よりはるかに強くなりました。健康であることが、生きるということです」

 

出典:https://www.clevelandclinicabudhabi.ae/en/patients-and-visitors/patient-stories/pages/young-woman-given-second-chance-at-life-after-being-diagnosed-with-rare-brain-tumor.aspx

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日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では今年から、PXの高い医療機関を投票によって決める「PXアワード」を開催します。医療従事者、患者、企業の方、どなたでも投票可能です。PXの高い医療機関として推薦する医療機関名と推薦理由、あなたの患者としてのストーリーをぜひお寄せください。

PXアワード2019

3. 今後の予定


第28回勉強会を7月13日(土)に開催します。PX研究会のホームページから申し込みができます。多くの方のエントリーをお待ちしています。

 

第28回 PX研究会 勉強会

7月13日(土)13:30-15:30

場所:株式会社イトーキ SYNQA 2F

「PX概論」 講内源太

「PX最近のあゆみ」
演者:齋藤貴之・斎藤恵一・曽我香織・西本祐子・講内源太

会費:勉強会参加費 1000円(研究会員は無料)

 

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

※7月13日(土)開催の第3回PXE養成講座の会場ですが、ヒューリック銀座会議室Eとなります。

https://www.relo-kaigi.jp/thespace/room/hulic-ginza/access/

 

編集部から


マンションのロビーの七夕飾り。短冊に書かれた子どもたちの願いごとに癒されます。(F)