日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.84

1.Press Ganey社のPX関連イベント
2.連載「Patient Stories」第22回  “4人目の天使”との出会い
3. 今後の予定

1.Press Ganey社のPX関連イベント


医療機関がPXを理解し、改善につなげる活動を30年以上にわたりサポートしてきたアメリカのPress Ganey社は、PXサーベイの分析などを行っています。同社は毎年「National Client and Executive Leadership Conferences」というイベントを開催。今年は11月18~20日、フロリダ州オーランドで開かれました。その概要を紹介します。

 

イベントは、3400人を超えるヘルスケアの専門家が集まり、ヘルスケアの課題改善を加速し、患者の苦痛を軽減するための革新的な戦略を学ぶものです。基調講演のほか、安全性や質、PX、従業員エンゲージメントなどに関するセッション、すぐれた患者中心のケアを実践した個人や組織の表彰などを行いました。

オープニングビデオとして、ある看護師の1日の生活を追ったものを公開しました。患者に対してすぐれたケアを提供するうえでの共感の重要性と、過酷だけれどもやりがいのある看取りをフューチャーした内容です。下記リンクから見ることができます。

Link:  https://www.youtube.com/watch?v=ls6rVZsLHX8&feature=youtu.be

 

「医療に変革をもたらす実践的アプローチ」「安全性とサービス改善を促進する診断ツール」「戦略的な看護師の募集と定着」などのワークショップや、「エビデンスに基づいたベストプラクティスの採用により高いPXを提供」「データに基づいた患者中心性の文化づくり」といったPXに関するセッションが組まれていました。次回は、2020年11月16~18日の開催を予定しています。

Link: https://www.pressganey.com/events/2019-conference-highlights

 

日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では年1回の一大イベントとして「PXフォーラム」を開催していますが、もちろん来年も開催します。より多くの人に参加していただける学びの場、交流イベントとして日本のヘルスケア界でもPXを盛り上げていきたいと思います。

 

2.連載「Patient Stories」第22回“ 4人目の天使”との出会い


クリーブランドクリニックがんセンターでは、がんサバイバーが“4番目の天使”、メンターとなり、がん患者をサポートするプログラムがあります。第22回「Patient Stories」は、そのプログラムが1人のがん患者を精神的に支えるストーリーを紹介します。がん患者の苦しみ、不安は誰でも受け止められるものではなく、時に患者側が自ら「見えない壁」をつくってしまうことがあります。日本でもこのような“がん友”ができるプログラムがあったら素敵ですね。

 

☆コーヒーショップでの面会が患者に希望をもたらす

Chuckさんは前立腺がんで2005年に手術しましたが、予後は良好で再発リスクも低いとされました。定期的に前立腺がんの腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)検査を受けていましたが、2015年の検査で数値がわずかに上昇。主治医はがん細胞が残っている可能性があるといい、2019年になって7週にわたって週5日、放射線治療を受けることを勧めました。

治療を受けて数週間後、Chuckさんの不安はひどくなっていきました。クリーブランドクリニックがんセンターのソーシャルワーカーは、このことについて誰と話したいかをChuckさんにたずねました。彼女は心理学者を紹介し、さらに 「4th Angel Mentoring Program」というがんサバイバーが仲間と話せるプログラムのこともChuckさんに伝えました。

このプログラムは患者と介護者に対して、同じような経験をし、トレーニングを受けたボランティアのメンターとのマッチングを、診断内容や性別、年齢などではかるものです。

「再発がんと放射線治療を経験した誰かと話をしたかったのです」。Chuckさんはすぐにプログラムへの参加を同意しました。数日後、Mikeさんというメンターの名前と電話番号を受け取りました。

Chuckさんはすぐに連絡をとり、近所に住むMikeさんと地元のコーヒーショップで会いました。2人とも76歳で妻に先立たれており、再発性前立腺がんの闘病を経験していました。見知らぬ2人を、親しい友人に変える毎週の面会が始まりました。

Mikeさんは1994年から、前立腺がんの快復と再発を繰り返してきました。2014年の再発では、がんが骨に拡がり、ステージ4と診断されましたが、定期的な化学療法により、がんは抑えられています。Mikeさんにプログラムを紹介したのは妻のJaneさんでした。「Janeはメンターになりたかったんです」とMikeさん。乳がんを克服したJaneさんは後に肺がんとなり、2011年に亡くなりました。Janeさんが持ち帰ったプログラムのパンフレットを2017年に見つけてMikeさんはボランティアをするために電話をかけたのでした。

「助言は1回の電話から始まります。がん患者は医師、看護師、家族、友人からサポートを受けています。しかし、時には同じ経験をした誰かとも話したいのです」

Mikeさんはこれまでがん患者数人と話しましたが、電話で話す“長距離の友情”でした。メンターとして初めて会ったのがChuckさんでした。「私たちはがんと深い悲しみ、信仰とクリーブランドのスポーツについても話しました」

「すぐにMikeが好きになりました」とChuckさんは言います。「彼はとても話しやすく、態度もいい。がんが再発したと知り、どのような不安を感じるかを知っています。何も遠慮する必要もありません」

2人は毎週の面会に加えて、クリーブランド・インディアンスの試合を観に行きました。お互いの家族についての話もします。「特につらい時には面会の合間に電話をかけることがあります。Mikeの存在は非常に心強いです。彼は私に、希望があることを思い出させます」とChuckさん。

Mikeさんは、自分は強い精神を持っているのではなく、ただ前に同じ経験したことがあるだけだと主張します。「がんの治療を恐れるのではなく、緩和や治癒、あるいは神様が考えたプランに一歩近づいたとみなすことが必要です。あなたは一緒にいる他者と、幸せな言葉をシェアしてください。治療は他者に恵みを授けられる機会とみなしてください」

MikeさんはChuckさんに、メンターになることの検討を勧めています。「わずか3カ月で、Mikeはがん治療のメンターとなりました。彼はまた、私の心理学者であり、精神的な助言者、そして真の友人にもなりました」とChuckさんは言います。

 

出典:https://my.clevelandclinic.org/patient-stories/340-4th-angel-mentoring-turns-cancer-patients-into-friends

 

 

3. 今後の予定


第31回勉強会を12月14日(土)に開催します。今年の振り返りと来年に向けた活動報告、発表を行います。PXの“年納め”にぜひご参加ください!

 

第31回 PX研究会 勉強会

12月14日(土)15:00-17:00

場所:イトーキ SYNQA

https://www.synqa.jp/access/

※通常と開催時間が異なります。間違えのないようにお越しください。

 

「PX概論」 松下記念病院 看護部看護師長 小松良平

「PX分科会リーダーによる活動報告」

「1年の振り返り」 公立昭和病院 事務局業務課課長 笹野孝

 

会費:勉強会参加費 1000円(研究会員は無料)

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

 

編集部から


友人3人でそれぞれの誕生日に、少しだけぜいたくして美味しいものを食べる「生誕祭」を開いています。写真は先日の祭での一品、「砂浜に見立てた海の幸のジュレ寄せ フランス産キャビア添え」。小さな葉に美しい水滴が載っていて、舌だけでなく眼でも料理を味わえました。(F)