日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.91


1.第11回PXサミット@クリーブランド
2.連載「Patient Stories」第29回 希望を捨てない!
3. 今後の予定

1.第11回PXサミット@クリーブランド


第11回目となるPXサミットが5月18~20日、米オハイオ州クリーブランドで開催されます。

 

恒例となった毎年のサミットでは、患者とその家族に最善の臨床的、身体的、感情的なエクスペリエンスを届けるため、世界中のヘルスケア業界のリーダーが協働する場を提供しています。今年も、クリーブランドクリニックとHIMSS(The Health Care Information and Management System Society;医療情報管理システム協会) との共同開催となります。

今回のテーマは、“Experience Reimagined”(再認識されたPX)。共感とイノベーションによるPXを改善する活動で上手くいったもの、いかなかったものについての率直なコメントを探っていくというものです。

主なトピックとして▽アクセス、▽テクノロジー、▽デザイン思考、▽リーダーシップ、▽品質、▽イノベーション、▽バーンアウト(燃え尽き)、▽コミュニケーション、▽継続的な改善、▽エンゲージメント、▽看護、▽職場の安全性――などのキーワードが挙がっています。

PXサミットのカンファレンスは基調講演や多様なワークショップ、没頭できる体験、ネットワーキングの機会などにより、PXの改善とそのために何が必要となるかを集中して考える場です。PXを推進する医師、経営幹部、ケアスタッフが集まり、患者が何を望んでいて、理想とするPXをつくっていくために医療の質、安全性、経験、デザイン、テクノロジーをどのように再構築できるかを検討します。

 

過去のPXサミットには日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会のメンバーも参加し、世界の最新PX情報の聞き取りや各国のPX推進団体、関係者などと交流を図っています。日本からの場合、メインとなる19、20日の参加パスは1050ドルですが、3月23日までに申し込むと早期割引で650ドルとなります。申し込み・登録は下記リンクから可能です。

Link: http://www.empathyandinnovation.com/cleveland/2020/register

 

 

2.連載「Patient Stories」第29回 希望を捨てない!


第29回の「Patient Stories」は長く、厳しい道のりを経て子どもを授かった女性の話です。想像がつかないほどのつらい治療を乗り越えられたのは、強い気持ちと、それを支える医療スタッフの共感力。「共感」はPX向上に欠かせないキーワードの1つだと改めて認識できるエピソードです。

 

☆ 技術だけでなく患者の心に寄り添う

2019年 1月16日、オハイオ州メディナのBacho夫妻のもとに美しい息子Eddieが誕生しました。彼を迎えるのに6年しかかかりませんでした。Bacho夫妻が2012年に結婚したとき、多くのカップルのように子どもをもつことを想像していました。ただ、その夢を実現するための、感情の激動的な揺れを伴う数年にわたる不妊治療と金銭的ハードルについては想像していませんでした。

妻のRobinさんは37歳で、排卵障害の1つである多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と原因不明の不妊症と診断されました。クリーブランドクリニックの不妊治療センターにかかって数年後、7回の子宮内人工受精(IUI)をしたものの成功しませんでした。体外受精(IVF)により3個の胚ができましたが、遺伝子検査後に1つに減り、その胚を“Baby B.”と名付けました。

Robinさんは“Baby B.”の妊娠に成功したものの、彼女の身体はすぐに拒否反応を示し始めました。流産までの過程を、「ゆっくりと、痛みを伴うプロセスでした。ついに落ち込み、悲しみのあまり何も感じなくなりました」と振り返ります。

「深く悲しんでいます」。Robinさんは不妊治療をするカップルに経済的な支援をする組織の申請書に書きこみました。「毎朝で出かける前、私は子ども部屋に行きます。部屋はベビー服やおもちゃ、本でいっぱいです。私はBaby B.をついに迎えたときの音、におい、光景を想像します。そのような祝福から得られる愛と、無限の喜びを想像することしかできません。私がまだ希望を持っている理由です」

2回目の申請でしたが、今回は受け入れられました。Bacho夫妻は医療費が積み重なっていたうえ、 夫のEdさんは解雇された後、自分でビジネスを始めたところでした。

2018年にIVFの第2ラウンドを開始しました。「私は42歳でした。11個の胚ができ、そのうち7つの遺伝子検査を受けました。疑わしい2つと、本当にいいと思われる1つがありました。1つでしたが、ただ1つあれば済みます」

2018年4月30日に胚移植を行い、5月14日に妊娠がわかりました。「今回は間違いなく違う、素晴らしい妊娠だと感じました」とRobinさん。Robinさんは合併症により、フェアビュー病院のレベルⅢ出産センターの産婦人科医は安全に出産するためのセクションを選択しました。

クリーブランドクリニックの不妊治療専門医であるMarjan Attaranさんは「RobinさんのようにPCOSの女性がIUIでうまくいかなければIVFに進むことは珍しくありません。経済事情はIVFを行うかどうかを決めるのに大きく影響します。私のアドバイスは、妊娠するのは簡単ではないので、早めに開始することです。多くの人は薬の使用により、妊娠できます」

「私たちには素晴らしい研究室と、体外受精で長年の経験がある医師のチームがあります。成功率は高く、Society for Assistive Reproductive Technologyによると一貫して平均を上回っています」とMarjanさんと、Robinさんを治療した不妊治療チームの別の医師Cynthia Austinさん。ただし、技術が成功を保証するものではなく、Cynthiaさんは患者の心に寄り添うことの大切さを指摘します。

「私は不妊治療センターでよい経験をしました」とRobinさん。「間違いなくチームの努力によるものでした!医師たちは共感し、すべてを説明し、一度も『やめなさい』と言いませんでした。彼らは私に厳しい知らせを伝えなければならなかったのですが、最初のIVF後に流産したとき、Cynthiaさんは私の手をずっと握ってくれていました。私のようなほかの女性へのメッセージは『希望を捨てないで!』です。私たちはいつもうまくいくと思っていました。今、Eddieは小さな人間です!存在感があります!あらゆる奇跡を起こしてきました!」

 

出典:https://my.clevelandclinic.org/patient-stories/328-baby-blues-turn-to-joy-for-couple-struggling-with-infertility

 

3. 今後の予定


福岡市で2月29日(土)に開催される「日本医療マネジメント学会 第19回福岡支部学術大会」で、PXについてのシンポジウムを行います。

日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会からは代表理事の曽我香織さん、世話人の井村洋さん(飯塚病院特任副院長)、西本祐子さん(国立病院機構九州医療センター小児外科医長)、小松良平さん(松下記念病院看護部看護師長)が登壇予定です。奮ってご参加ください!

https://www.19jhm-f.com/

 

当研究会では勉強会を3年間、東京で定期開催していましたが、2020年は「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していきます。

内容は、PXの初歩的な話と実践事例(事例はスピーカーによって異なります)の紹介です。年10回程度を予定しており、日時、場所は決定次第、当メールマガジンやホームページでお知らせします。自分の医療機関や地域で寺子屋を開催したいというご要望にもお応えできればと思っていますのでぜひお声がけください。

https://www.pxj.or.jp/events/

※研究会員の方が対象です。地方開催の場合は交通費をご負担いただきます

 

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


約1年半前から早起きして筋トレをしています。試行錯誤しながらレギュレーションを決め、小道具も取り入れて10分間。眠気が吹き飛び、前日の疲れもリセットできます!(F)