日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.96

1.「患者の語り」から学ぶ
2.連載「Patient Stories」第34回 食と治療が失明から救う
3. 今後の予定

1.「患者の語り」から学ぶ


患者中心の医療を実践する、PXを高めるうえでは患者の「病いの語り」を聴くことが大切です。どのような治療を受けたいのか、治療の過程で何が障害となったのか、生活への影響はどうか――。患者が語ることが新たな病いの経験となって、多くの患者に還元されます。周りの人が語りに耳を傾けることで、患者が病気に立ち向かう力となり、聴き手もエネルギーをもらうことができます。

 

患者の語りを聴き、医療現場に活かすための一助となる本、『患者の語りと医療者教育』(日本看護協会出版会)がこのほど発刊されました。

患者の語りを映像や音声化することで、病気や医療にかかわる当事者の経験を共有し、患者主体の医療を実現することをめざして設立された認定NPO法人健康と病いの語りディペックス・ジャパンでは、病いを経験した本人や家族の語り(映像・音声・テキスト)をウェブサイト上で公開しています。同書は、患者の語りを医療者教育に活用するための意義や方法を整理し、その具体的方法を示したものです。「認知症の語り」を用いた施設内研修、大学院におけるがん看護学教育、薬学教育における医療コミュニケーション、個々の患者への適用を重視した公衆衛生学などでの活用方法が紹介されています。

医療者教育への活用に限らず、患者の語りをどう捉えるか、聴くための一助となる一冊です。

Link: https://www.dipex-j.org/

※ウェブサイト上に公開されている語りは、体験談を語った患者に帰属する著作権・肖像権があり、教育に用いる場合はディペックス・ジャパンへの利用許諾が必要です

 

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患者の語りを聴き、個別ニーズを引き出す手法としてはコーチングがあり、日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会が養成するPX向上のための人材、PXE(Patient eXperience Expert)の講座でも学ぶことができます。現在、第2期生を募集中です! https://www.pxj.or.jp/pxe/

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雑誌『デンタルダイヤモンド 2020年3月号』(デンタルダイヤモンド社)に、PX研究会メンバーの齋藤貴之さんが「摂食嚥下障害患者とのコミュニケーション」について寄稿しています。食べることの支援の際のコミュニケーションスキルとして、コーチングとPXについて語っています。ぜひご一読ください!

 

 

2.連載「Patient Stories」第34回 食と治療が失明から救う


第44回「Patient Stories」は生活習慣を起因とした2型糖尿病患者が主人公。糖尿病性網膜症で失明の危機にあった男性は、食生活を改善したことで健康な身体と仕事を取り戻すことができました。

 

☆ 健康的な食事の重要性に“目を開く”

アメリカでは3000万人が糖尿病を患っていて、多くの深刻な健康問題につながる可能性があります。Mark Campbellさんは2000年に、2型糖尿病と診断されました。「糖尿病は人生に大きな影響を与えています」と53歳で、5人の孫がいるMarkさんは話します。「何年もの間、私は自分でインスリン注射をし、毎日25錠以上の薬を飲んでいました。そのうち腎機能を失い、体重が増え、視力が落ちました」

ウエストバージニア州立大学の元フットボール選手で、長年にわたる有酸素運動とウエイトリフティングをしていたにもかかわらず、糖尿病にかかわる問題を食い止めることができませんでした。

Markさんは、クリーブランドクリニック・コールアイ研究所の網膜外科医、Rishi Singhさんによって健康的な食事の重要性に文字通り、“目を開いた”といいます。2017年にRishiさんを初めて訪ねたとき、Markさんは左目の血管が破裂していて視界がぼやけていることに苦しんでいました。

「食事や糖尿病に関するほかの要因を制御することで視力障害の発生や進行を防ぐことができます。深刻な場合は手術や注射など、さまざまな治療オプションがあり、その選択によって大きな違いが生じます」とRishiさん。

Markさんは注射で薬物を直接目に入れる治療を開始すると、右目も失明しはじめました。「まったく目が見えず、働くことができず、孫の顔も見えませんでした」。Rishiさんが網膜の血管漏出に対し、レーザー光凝固術と、網膜手術を行った結果、視力は完全に快復しました。

Rishiさんからの指導で糖質、炭水化物の摂取を減らすケトン食を実践。肉と野菜を食べ、栄養豊富なスムージーとたくさんの水を飲みます。パンとパスタを控え、チーズと卵はほとんど食べません。その結果、大学でフットボールをしていた時以来、より健康的になっていると言います。「100ポンド減量し、インスリンを30から40に減らしました。薬は1錠しか飲みません」

腎臓移植を待つ間、毎日自宅で血液透析を受けなければなりませんが、仕事に戻り、活力も取り戻しました。2型糖尿病の患者に対し、「あなたの人生に劇的な変化を起こす必要があると気づく前に、私が経験したことを誰も経験しなくて済むよう願っています」

 

出典:https://my.clevelandclinic.org/patient-stories/346-healthy-diet-and-timely-treatment-save-grandfather-from-diabetic-blindness

 

3. 今後の予定


⭐︎当研究会では勉強会を3年間、東京で定期開催していましたが、2020年は「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していきます。

内容は、PXの初歩的な話と実践事例(事例はスピーカーによって異なります)の紹介です。年10回程度を予定しており、日時、場所は決定次第、当メールマガジンやホームページでお知らせします。自分の医療機関や地域で寺子屋を開催したいというご要望にもお応えできればと思っていますのでぜひお声がけください。

https://www.pxj.or.jp/events/

※研究会員の方が対象です。地方開催の場合は交通費をご負担いただきます

 

⭐︎オンラインによるPX勉強会の開催を検討しています。詳細が決まりましたらメールマガジン等でお知らせします。

 

 

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

編集部から


友人たちとりんご飴の専門店に行き、18時前に到着したものの……長蛇の列。寒さに震えながら40分待ち、やっと食べることができました。外側の飴のシャリ感とジューシーな果実が口のなかで絶妙なハーモニーを奏でます。タピオカに続くブーム到来か!(F)