日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.106

1. 「PX Asia Summit 2020」が6月にオンライン開催
2.連載「Patient Stories」第42回 COVID-19下での遠隔医療
3. 今後の予定

1.「PX Asia Summit 2020」が6月にオンライン開催


「Patient Experience Asia Summit 2020」が6月23、24日の2日間、オンラインで開催されます。

 

今回で3回目となる同イベントは、アジアにおけるPXイベントとして2018年からシンガポールで開かれており、1回目には日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会代表理事の曽我香織さんも参加しました。

医療分野においてもデジタル化が進むなかで、PXを高めるための方策を探る趣旨で開催。アジア太平洋地域の医療機関、関連企業の幹部が集まり、▽患者の声を聞くための効果的なプログラムづくり、▽AIの活用による効果予測に基づいた治療の実現、▽デジタル時代の患者を視野に入れたオムニチャネル(リアルな店舗、ネットなどあらゆる顧客との接点をつなげることで顧客満足度を高める販売戦略)の展開、▽業務の自動化、デジタル化によるサービスの実現――などの議論を行っています。

 

今回のテーマは、「イノベーションと思いやりがヘルスケアの未来を変える」。トピックとしては、▽ビジネスの変革とプロセスの改善、▽AIによるケア提供を高める、▽患者アウトカムと満足度の改善、▽職員エンゲージメント、▽行動科学――が挙げられています。

23日開催のメインカンファレンスの1つ、「Advancing Humanism in Healthcare:The Importance of Empathy」(ヘルスケアにおけるヒューマニズムの促進:共感の重要性)では、シンガポール保健省が実施したPS(Patient Satisfaction;患者満足度)サーベイで患者の85.9%が総じて満足していると回答したのに対し、PSスコアが29%の米国とどこが違うのかについて、シンガポールの病院のPXディレクターが話します。

24日の「Patient Experience in times of Crisis」(危機に直面した時のPX)は、中国で最初にJCI(Joint Commission International)の認証を受けたUnited Family Healthcareから危機の際、継続してPXを提供し、混乱を最小限に抑えるためのプロセス改善の重要性について話をした後に、「パンデミックへの備えとPX」をテーマとしたパネルディスカッションを行います。

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によりオンラインでの開催となったため、メインカンファレンスは無料で参加できます。ワークショップ、対話型ディスカッションなどに参加できるパッケージは、SGD (シンガポールドル)$600~1299となっています。イベントの詳細、参加申し込みは下記リンクからできます。

Link:https://www.iqpc.com/events-patientexperience/

 

 

2.連載「Patient Stories」第42回 COVID-19下での遠隔医療


第42回「Patient Stories」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行時における医療体制を考えさせられるストーリーです。感染リスクの高い持病から受診を恐れる患者に対し、どういった対応が必要でしょうか。withコロナで日本でもオンライン診療が推奨されていますが、医療のあり方は大きく変わっていきそうです。

 

☆ パンデミック時に受診する恐怖

65歳のLarry Bachさんは4月9日の朝に目が覚めた時、何かがおかしいと気づきました。歩こうとするとつまずき、脚を動かすのに苦労しました。2012年、2015年にも同様の症状を経験していて、脳卒中の可能性が高いとわかっていました。しかし、COVID-19のパンデミック時に緊急治療室に行くことに不安を感じていました。「自分に起きていることを考えるとCOVID-19への感染リスクが高く、ナーバスになっていました」とLarryさん。この“小さな一撃”が、糖尿病による合併症が原因であることと同時に、治療を受ける必要があることもわかっていました。

クリーブランドクリニックの神経科医のAndrew Russmanさんと電話で話した後、ためらいながらも最寄りのクリーブランドクリニック・アクロンヘルスアンドウェルネスセンターの救急部門に行きました。しかし到着すると恐れはやわらぎました。スタッフ全員がフェイスマスクを着用し、医師と看護師は個人用保護防具を付けていて、Larryさんはほかの患者と同じようにマスクと手の消毒剤を与えられ、すぐに検温してもらいました。「COVID-19への備えができていることは明らかで、すぐに落ち着きました」とLarryさん。クリーブランドクリニック・アクロンジェネラルでさらなる治療を受けるまで、救急部門で過ごしました。

Larryさんの懸念をさらにやわらげたのは、北に30マイル以上離れたところにいるAndrewさんの「診る」力でした。現場の救急医に助言するために、ビデオ技術を使ってバーチャル検査を実施。Larryさんの話し方、脚、腕、顔などの動きを見て、詳細なレビューを行いました。バーチャル検査、MRI、心エコー、血液検査などの結果に基づき、Andrewさんは適切な治療方針をアドバイスしました。軽度の抗凝固薬の投与と内分泌などの専門医による診察などが含まれていました。

「パンデミックの最中であっても、脳卒中の患者が救急科を受診することは重要です。安全であり、脳卒中の影響や別の薬のリスクなどを軽減するため、必要な薬を素早く届ける唯一の方法です」とAndrewさんは説明します。

COVID-19の流行前にも、Andrewさんと仲間の神経科医は遠隔医療のための装備をしたロボットデバイスを使い、年間3500件のテレストロークによる緊急評価を行っていました。「テレストロークとバーチャル訪問は、すべての脳卒中患者に同じレベルでのケアを保証し、24時間体制で提供します。これにより、脳卒中患者にとって非常に重要である評価と治療開始にかかる時間が大幅に短縮されます」

Larryさんは脳卒中による後遺症がほとんどなく、リハビリを受け、食事と運動により血糖やコレステロール、血圧の改善が見られます。Andrewさんと内分泌医はバーチャルによるフォローアップ訪問を行いました。

 

出典:https://my.clevelandclinic.org/patient-stories/377-emergency-visit-saves-man-with-stroke-amid-covid-19-fears

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では勉強会を3年間、東京で定期開催していましたが、2020年は「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していきます。

内容は、PXの初歩的な話と実践事例(事例はスピーカーによって異なります)の紹介です。新型コロナウイルス感染症が収束した段階で開催を決めたいと思います。日時、場所は決定次第、当メールマガジンやホームページでお知らせします。自分の医療機関や地域で寺子屋を開催したいというご要望にもお応えできればと思っていますのでぜひお声がけください。

※研究会員の方が対象です。地方開催の場合は交通費をご負担いただきます。

 

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オンラインによる勉強会、「第2回PX寺子屋」を開催します。

6月20日(土) 13:00-14:00

PX概論    北海道大学歯科医師 濱田 浩美

PXE事例紹介:小松市民病院におけるPX学習会

小松市民病院 病院長 新多 寿/日本PX研究会 代表理事 曽我 香織

 

※Zoom(Web会議ソフト)での開催となります。参加者にはリンクをお知らせします。

※研究会会員は無料、会員外の方は有料(1000円、事前に参加費の振り込みをお願いします)。申し込みは下記リンクからお願いします。

Link: https://www.pxj.or.jp/events/

 

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

編集部から


来年もしくは再来年の東京マラソンに向けて減量を継続中。バナナを入れた高タンパク質のヨーグルトがおやつの定番です。しかしまったく結果が出ません……。いい減量法があればご教示ください!(F)