日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.108

1. エクスペリエンスを共有しよう!
2.連載「Patient Stories」第44回 熟練した看護チームによるCOVID-19対応
3. 今後の予定

1.エクスペリエンスを共有しよう!


ジョンズ・ホプキンズ大学の集計では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界の感染者数は今日時点で約640万人、日本では1万7000人を超えました。パンデミック(世界的大流行)によって、医療機関はその対応に追われ、患者は受診もままならない状況が続いています。

また、感染防止策のため、COVID-19の患者は家族だけでなく医療者とも距離を置くことになり、孤独や閉塞感を感じています。以前のメールマガジンでもお伝えしましたが、このような時ほど、患者と医療者双方にとってPXが大事だと考えます。

「コミュニティの力とエクスペリエンスの共有がこれまで以上に重要」として、患者と家族、医療者の回復力、精神力、愛情などにスポットを当てたストーリーをシェアするサイト「WE STAND TOGETHER-honoring human service」が開設されています。米ネブラスカ州にあるグッド・サマリタン病院から投稿された内容を紹介します。

 

同病院はバッファロー郡カーニーとその周辺の住民に医療提供をしている、地域に根差した病院です。同時に、米国内のベスト250病院、外科手術トップ100病院に選ばれています。4月27日~5月1日までを“PXウイーク”とし、院内でさまざまな活動をしました。パンデミック下においてもPXは常に重要だと考えているからです。

ウイーク中は毎日、エクスペリエンスを高めている人たちを褒めたたえました。スタッフと患者との間に意図的な接点をつくってリーダーがその様子を観察したほか、お菓子を用意し、病院のトップが患者に1つずつ配りました。PXへのスピリットをあげる試みとして、スタッフがハート型に切り取ったカラフルな紙でデコレーションした“巨大な感謝の壁”を作り、患者と医療者が想いを書いた紙をそこに貼っていきました。病院の片側の窓には虹を飾り、「あなたのためにここにいます」というメッセージを掲げました。あなたはコミュニティに今もいて、私たちはあなたを見守っていて、あなたのサポートに感謝しているということを伝えるためです。ウィークの最後には、ベスト250病院の1つであることを祝い、1200人の全スタッフに記念Tシャツを配りました。同院の取り組みは、サイトにUPされている動画で見ることができます。

 

サイトには患者が医療者への感謝を伝える内容など、さまざまなストーリーが投稿されています。ストーリーは下記リンクから誰でも、写真や動画も投稿できます。世界中の人と、みなさんのストーリーをシェアしませんか。

Link:https://honoringhumanservice.com/

 

 

2.連載「Patient Stories」第44回 熟練した看護チームによるCOVID-19対応


第44回の「Patient Stories」は、この連載で最近取り上げることが多いCOVID-19患者が主人公です。健康問題を抱える人が感染した場合の対応に、複数のユニットチームで取り組みます。

 

☆ SNFでCOVID-19患者を受け入れる

クリーブランドクリニック・ユークリッド病院は20床の高度看護施設(Skilled Nursing Facilities; SNF)があり、その多くは個室です。COVID-19への対応として、同院の管理者はすぐに1フロアを改修し、手厚いケアが必要な患者を個室で行う計画を立てました。

 

58歳のMargaret Stevensonさんはこのユニットに入院した最初の患者でした。准看護師の資格を持っていたMargaretさんは、これまでさまざまな健康問題を乗り越えてきました。3回の妊娠期間中は妊娠糖尿病にかかり、2005年にはブドウ球菌感染症にかかったため、仕事を辞めました。椎骨への感染で首にプレートを埋めたほか、腎臓を患って腎移植の待機中には何年も透析を受けていました。その間、動脈閉塞により、心臓の手術を受けました。体重増加により移植が難しかったことから、肥満外科手術を受けて2014年に腎移植を受け、成功しました。

3月のある朝、Margaretさんは筋肉痛と関節痛で目を覚まし、1日寝て過ごしました。次の日は元気で、翌週、軽い咳の症状が出ましたが、最初は深刻に考えませんでした。しかし3日間飲食がとれなくなった後、ヒルクレスト病院の救急部門を受診しました。「脱水症状により腎臓が心配でした。輸液を投与された後、自宅に帰されると思っていました。その時に病院まで送ってくれた娘とは、数週間後に面会できるまで、再び会うことはありませんでした」

MargaretさんはCOVID-19検査で陽性がでて、隔離フロア、そしてICUに送られました。3日間挿管されたまま腎機能が低下し、尿路感染症を発症しました。その後COVID-19の緊急治療を必要としなくなった時、ヒルクレスト病院のケアチームは、腎機能の低下を心配し、追加のケアが必要と判断。Margaretさんはユークリッド病院のCOVID-19ユニットに移送されました。

Margaretさんの治療はSNFケアチーム、移植チーム間の協力体制を必要としました。両チームはMargaretさんの水分レベルの管理に取り組み、経過とともに病状と血圧は安定したものの、衰弱して歩くことができず、歯を磨くのも困難な状況でした。病室で1日2回のリハビリは、Margaretさんが日常生活を送るための力を取り戻すのに役立ちました。

「この種の集中治療は、熟練した看護ユニットでは標準的です。私たちは患者さんの体力を回復させるために必要な治療を強化しました。また、床上でのサポートを増やし、各患者の複雑なニーズを注意深くチェックするようにしました。治療で何かうまくいかないことがあっても、私たちは対処できるので、患者は集中治療室に戻る必要はありません。事態が深刻化した場合は、病院のすべてのリソースを使うことができます」とユークリッド病院のSNFユニットの医師John Bertschさんは話します。

Margaretさんは現在自宅に戻り、何年にもわたって治療をしてくれた腎臓医と、ユークリッド病院とヒルクレスト病院で彼女のケアをしてくれたすべての人にとても感謝しています。「とても大変な旅だったけど、病気にかかる前より98%、気分がよくなっています」と言います。

 

出典:https://my.clevelandclinic.org/patient-stories/386-covid-19-patient-regains-strength-and-mobility-with-help-of-skilled-nursing-care-team

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では2020年は勉強会を「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していく予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、すべてオンラインでの開催といたします。

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オンラインによる勉強会、「第2回PX寺子屋」を開催します。

6月20日(土) 13:00-14:00

PX概論    北海道大学歯科医師 濱田 浩美

PXE事例紹介:小松市民病院におけるPX学習会

小松市民病院 病院長 新多 寿/日本PX研究会 代表理事 曽我 香織

 

※Zoom(Web会議ソフト)での開催となります。参加者にはリンクをお知らせします。

※研究会会員は無料、会員外の方は有料(1000円、事前に参加費の振り込みをお願いします)。申し込みは下記リンクからお願いします。

Link: https://www.pxj.or.jp/events/

 

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

編集部から


職場オフィスが来週から移転することになり、最後に人気ラーメン店に足を運びました。激辛好きにはたまらない美味しさでした。(食後に胃腸を壊しました)(F)