日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.109

1. デジタルツールとPX
2.連載「Patient Stories」第45回 本来の自分を取り戻すプロジェクト
3. 今後の予定

1.デジタルツールとPX


医療ITの進展によって医療機関ではデジタルツールの活用が進んでいますが、果たして患者中心性、PXを高めることにつながっているのでしょうか。米The Center for Connected Medicine(CCM)による興味深い調査レポートを紹介します。

 

CCMはペンシルベニア州ピッツバーグを拠点とし、GEヘルスケア、ノキア、ピッツバーグ大学医療センター(University of Pittsburgh Medical Center;UPMC)が共同で運営する施設です。テクノロジーと新しいアイデアによる費用対効果や患者中心のケアの新しいモデル開発などを行っています。調査レポート“The Future of the Digital Patient Experience”(デジタルによるPXの未来)は、医療情報管理システム協会(HIMSS)の協力により2019年9月に実施されたサーベイをもとに、まとめられたものです。

レポートでは、デジタルを活用してPXを患者に提供していると回答した組織は3分の1未満だったとし、「医療においても、患者はどこで生活していても同じようにエクスペリエンスが受けられると今では思い込んでいるので、提供できないと不満を示します」という、UPMCエンタープライズのデジタル戦略・イノベーション担当の責任者のコメントを紹介。サーベイ回答者の医療機関で現在使用されているほとんどのデジタルツールは、医療記録へのアクセス、請求書の支払い、予約のスケジュール、医師の検索など、患者ポータルで通常見られるものだったといいます。

 

一方、患者が期待するデジタルツールは、以下のようなものでした。

・自分の健康記録/検査結果にアクセスできる

・ケアチームと直接連絡がとれる

・医療機関へのチェックインツール

・処方箋の記入

・医療機関への支払い/請求書を管理する

・慢性的な健康管理のためのリモート監視/管理

・医師など専門家を探す

・ウェルネス、病気にかかった時の遠隔医療へのアクセス

 

この結果を受けて、サーベイ回答者からは翌年、チェックインおよび到着管理ツールと慢性疾患を監視する機能を追加する計画などのコメントが寄せられ、改善に向けて動いているようです。また、患者ポータルは活用されているものの、モバイルアプリの活用度は低くなっています。デジタルツールとPXがうまく調和していると回答したのは40%にとどまっています。

日本においても、医療やヘルスケアビジネスへのIT、AIの参画は近年めざましいですが、テクノロジーの活用は業務改善や効率化に偏っているように思います。CCMの、PX視点からの新たなテクノロジー開発には今後も注目です。調査レポートは下記リンクからダウンロードできます。

 

Link: https://connectedmed.com/resources/health-system-apps-digital-tools-patients-not-providing-best-consumer-experience-survey/?utm_source=referral&utm_medium=media&utm_campaign=digitaltools-pressrelease-ccmblogreport

 

 

2.連載「Patient Stories」第45回 本来の自分を取り戻すプロジェクト


さまざまな患者のストーリーを紹介する「Patient Stories」。今回の主人公も、少し前の回で紹介した運動療法のプロジェクトに参加しています。減量による健康状態の改善は身体だけでなく、何事にも前向きに取り組めるポジティブさをもたらします。下記リンク先にある主人公の、自信にあふれた美しい姿が何より、その成果を物語っています。

 

☆ ワークアウトがストレスや痛みを緩和

2014年の自動車事故が腰痛を悪化させた時、当時40歳だったTyniece Wingfieldさんは痛みのために身体を動かすことをセーブしました、2018年までに、身長5フィート8インチ(約173cm)の女性の体重は300ポンド(約136㎏)を上回ったため、背中と関節に大きな負担がかかりました、彼女は今が変化の時だとわかっていました。

「2010年から左下腰部の膨らんだ椎間板から背中にかけての問題を抱えていましたが、事故後はさらに悪化し、坐骨神経痛もありました。医師からオステオパシー(手技療法)を勧められ、医師のMatthew Kampertさんに会いました」

当時メディカルレジデントだったMatthewさんはサウスポアント病院での調査研究のことをTynieceさんに話しました。この調査研究、THE BRIDGE PROJECT”は、Targeted Healthcare Efforts to Bridge Resources, Improve the Development of Guideline-Based Exercise Prescription and Reduce Obesity by Joining Education, Community and Technology(リソースを橋渡しするために公衆衛生活動にターゲットを絞り、教育とコミュニティ、テクノロジーによりガイドラインに基づいた運動の処方と肥満を減少させ、健康状態を改善する)”の頭文字です。

 

Tynieceさんは「フラストレーションがたまり、落ち込んでいました。それは私ではありませんでした。300ポンドの身体でジムに行くのが怖かったのです。自分の考えから解脱する必要があり、研究プログラムは気持ちを整理するのに役立ちました」と振り返ります。当時、地区保健センターで働き、クリーブランド州立大学で授業を受けるなど、忙しい生活を送っていました。2020年春にソーシャルワークの学位を取得し、大学を卒業しました。研究プログラムに参加するには少なくても週3日のワークアウトが必要だと言われましたが、Tynieceさんはすぐに同意しました。「プログラムでは目標を超えて取り組みました、目標以上の努力が必要だったからです。なぜなら、私には多くのことが起こっていました」

糖尿病の前段階にあってBMIとコレステロールが高かったほか、プログラムがスタートしてすぐにTynieceさんの母親は心臓手術を受けました。彼女はほぼ週7日、ワークアウトを開始しました。散歩やローラースケート、バレーボール、テニスなどを少なくても1日30分行いました。それが両親のケア、買い物や庭仕事など、やることが大幅に増えたことによるストレスや痛みを和らげ、体重減少につながりました。以前は洗面台をかがんで顔を洗うのに苦労していたのが、身体を動かしていたことにより背中に圧力がかからなくなり、痛みが緩和されたのに気づきました。

Tynieceさんは2019年12月までに、運動と食生活の改善で36ポンド、月平均で2~4ポンド体重が減りました。「体重が減ると新しい服を買い、2年前に着られなかった服も今では着ています。正しい方向に進んでいます」。「私は深みに陥っていましたが、このプログラムは私がつらい状況を乗り越えるのに手助けしてくれました。私はMatthewさんからの教育を受けるのが好きです。彼は『調子はどう? あなたは今日は何を約束するつもりですか? 何か必要としていますか?』と聞いてきます。彼の熱意が伝わってきます。私がその月の目標を達成し、このプログラムが機能していることがわかった時の彼の表情を見るのが好きです」

 

出典:https://my.clevelandclinic.org/patient-stories/380-research-study-helps-patient-conquer-pain-reclaim-agility

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では2020年は勉強会を「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していく予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、すべてオンラインでの開催といたします。

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オンラインによる勉強会、「第2回PX寺子屋」を開催します。

6月20日(土) 13:00-14:00

PX概論    北海道大学歯科医師 濱田 浩美

PXE事例紹介:小松市民病院におけるPX学習会

小松市民病院 病院長 新多 寿/日本PX研究会 代表理事 曽我 香織

 

※Zoom(Web会議ソフト)での開催となります。参加者にはリンクをお知らせします。

※研究会会員は無料、会員外の方は有料(1000円、事前に参加費の振り込みをお願いします)。申し込みは下記リンクからお願いします。

Link: https://www.pxj.or.jp/events/

 

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

編集部から


外に出かける機会がなかったため、春を通り越してもう夏ですね。わが家の猫も夏毛に変わりはじめて、ひと回り小さくなりました。(F)