日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.112

1. 「Patient Experience Asia Summit 2020」開催
2.連載「Patient Stories」第48回 チームワークの賜物
3. 今後の予定

1.「Patient Experience Asia Summit 2020」開催


アジアにおけるPXイベント「Patient Experience Asia Summit 2020」が6月23日に開催されました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によりオンラインでの短縮開催となりましたが、日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会代表理事の曽我香織さんが参加した一部プログラムの概要を紹介します。

 

今回で3回目となる同イベントは、2018年からシンガポールで開催しています。アジア太平洋地域の医療機関、関連企業の幹部が集まり、医療分野におけるデジタル化、ICT活用によるPX向上について、さまざまな議論を行っています。

今回のテーマは、「イノベーションと思いやりがヘルスケアの未来を変える」。トピックは、▽ビジネスの変革とプロセスの改善、▽AIによるケア提供を高める、▽患者アウトカムと満足度の改善、▽職員エンゲージメント、▽行動科学――などでした。

 

COVID-19におけるPXを高めるための職員エンゲージメントについて、フィリピンにあるSt. Luke’s Medical Centreから報告がありました。

フィリピン初のJCI(Joint Commission International)認証病院として知られる同院では、PXチームが“better normal(より日常に近く)”を掲げ、約30人で活動をしています。チームでは1日に100人の患者に対し、状況やニーズをヒアリングするプロジェクトを続けているといいます。その結果、患者の98%が「次も同院にかかりたい」と回答するなど、高いPXを維持しています。

 

タイにあるBumrungrad International Hospitalは、PX向上のための業務変革について発表しました。同院は190カ国からの患者を受け入れており、26カ国語に対応しています。1300人の医師がいる大病院で、多くの患者を受け入れるために顧客管理システムを導入。チャットや電話、メールでの問い合わせ対応をダッシュボードで一元管理したことで、患者に早くレスポンスできるようになったとのことです。2018年では返信までに8日かかっていたのを、問い合わせの75%を4時間以内に、86%を24時間以内に返信できるように改善しました。放棄呼率(かかってきた電話に対し、顧客あるいはシステム側が切断したコールの割合)も30%から3.9%へと大幅に減らすことができました。

 

今年はCOVID-19でオンライン開催だったこともあり200人ほどが参加するなど、前回、前々回よりも多くの方が参加していたようでした。アジア各国でのPXの取り組みを知るいい機会です。ご興味ある方は来年、ぜひご参加ください!

 

 

2.連載「Patient Stories」第48回 チームワークの賜物


第48回「Patient Stories」は、重度の免疫障害に苦しむ女性の命をチーム医療で救ったエピソードを紹介します。症状を見逃さず、効果がある薬を服用できるように医師が保険会社に交渉するといった医療機関としてのプロフェッショナルな仕事が、クリーブランドクリニックのPXの高さを物語っています。

 

☆ 「受け取るより与えたい」が父の性質

2017年4月、インディアナ州に住むCharlotte Garrisonさんはクリーブランドクリニックに救急搬送され、気管切開の緊急手術を受けました。Charlotteさんは1年近く、鼻と口の痛みを引き起こす免疫障害に苦しんでいて、呼吸ができない状態でした。

これらの症状は、極度の疲労や歯茎の出血なども伴って2016年夏に現れました。カトリック校の幼稚園の先生として29年間働いていましたが、半日勤務にし、その後辞めなければなりませんでした。彼女のかかりつけ医は免疫障害と診断しましたが疾患を特定することができず、Charlotteさんはさまざまな薬を処方されました。

最終的にクリーブランドクリニックの皮膚科医Anthony Fernandezさんを紹介されました。Anthonyさんは皮膚に影響を与える自己免疫、炎症性疾患を専門としています。2017年1月、Charlotteさんを最初に診察し、粘膜類天疱瘡もしくは瘢痕性類天疱瘡と診断しました。「彼女は比較的まれな自己免疫水疱性疾患のサブタイプを持っています。原因は不明です」とAnthonyさんは付け加えます。「三次医療センターである当院では比較的頻繁に見られます。実際に、Charlotteさんが初めて来た時に素早く診断することができました」

Anthonyさんは、この病気は典型として口腔、眼、上気道、食道、生殖器を含むさまざまな粘膜に影響を与えると言います。「Charlotteさんの場合、気管と気道の粘膜に影響を受け、気道の深刻な障害が生命にかかわることになりかねないとわかりました。さらに皮膚にも影響が及ぶ可能性がありました」

Anthonyさんと彼のチームのレジデントであるMatt Vasievichさんは、Charlotteさんの症状を制御できるリツキシマブというがん治療薬を特定し、服用するために保険会社の承認を得ようと多大な努力を払いました。それには成功しましたが、Charlotteさんの病状が突然悪化したため、気管切開手術までに薬が効く十分な時間がありませんでした。

さらに瘢痕を取り除き、上気道の狭窄を治療するため、Charlotteさんはその後数カ月で3回手術を受けました。手術前には痛みで食事をとること、呼吸もできない状態でした。

「私たちは難しい気管切開を行う治療を提供していて、炎症を起こした上気道の治療でも多くの症例をもっています」と Head & Neck研究所の咽頭科トップである医師のPaul Brysonさんは言います。「嚥下や声のしわがれで痛みを感じている場合、耳鼻咽喉科医による評価を行います。Charlotteさんの疾患は免疫抑制が関与し、改善するための薬、学術的なチームが必要です」

現在71歳のCharlotteさんは普通の生活を送っています。フォローアップのために半年ごとにクリーブランドに行くことを楽しみにしています。現在では低用量のプレドニゾンの1種類のみを服用しています。リツキシマブとシクロホスファミドの服用により、瘢痕化と出血が止まったのです。「高レベルの免疫抑制剤の投与が、彼女の命を救ったと信じています」とAnthonyさん。

「私は今、呼吸ができます。草刈りや掃除機をかけたりします。望んでいるような普通の生活ができ、クリーブランドクリニックに感謝しています。そこにいるすべての人が素晴らしい。素晴らしいという言葉では十分でありません。クリーブランドへの旅行はすべての時間、価値がありました。3人の医師が協力して私の命を救いました。毎日の祈りのなかで、3人のことを心に留めています」

 

出典:https://my.clevelandclinic.org/patient-stories/384-teamwork-saves-patient-with-rare-immune-disorder

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では2020年は勉強会を「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していく予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、すべてオンラインでの開催といたします。

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オンラインによる勉強会「第3回PX寺子屋」は、8月29日に開催します。内容など詳細は決まり次第、お知らせします。

 

8月29日(土) 13:00-14:00

PX概論など

 

※Zoom(Web会議ソフト)での開催となります。参加者にはリンクをお知らせします。

※研究会会員は無料、会員外の方は有料(1000円、事前に参加費の振り込みをお願いします)。申し込みは下記リンクからお願いします。

Link: https://www.pxj.or.jp/events/

 

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

編集部から


友人の誕生会を企画したら、主賓から白いバラを贈られました。花言葉は尊敬とのこと。涙腺が緩みました。室内に飾っていたら猫が葉を食べようとしたのでベランダの机に置いていますw(F)