日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.122

1.第2期「PXE養成講座」がスタート!
2.がん患者向けPXサーベイ
3. 今後の予定

1.第2期「PXE養成講座」がスタート!


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では、医療現場などで患者視点の医療サービスの提供を実現する旗振り役、講演会などでPXを広める演者として、PXE(Patient eXperience Expert)の認定資格制度を昨年スタートさせました。今年は第2期生28人が受講予定です(第1期生も参加いただけます)。第1回となるPXE養成講座を9 月12日(土)、オンラインにて開催しました。

 

PXE取得のメリットとして、▽PXを体系的に学べて現場に活かせる、▽患者満足度向上に必要なアクションが明確になる、▽患者視点の医療実現に関心のある仲間とのネットワークづくり――などがあります。PXE受験の要件となっている養成講座は全5回、PXとPS(Patient Satisfaction;患者満足度)の相違点や関係性、PX向上に必要なコミュニケーションなど、PXを体系的に学びます。

第1回は「エクスペリエンス概論」。PXとは何か?という基礎から始まり、PXへの理解をより深めるためにCX(Customer eXperience;顧客経験価値)についての考え方を学びました。講座は毎回、PX研究会の運営メンバーが講師・ファシリテーターとしてかかわっています。今回は、講内源太さん、能勢恵嗣さんが講師を務めました。

オンラインでの講義のほか、「職員満足度が上がる環境や行動を考えましょう」「スターバックスに行ったときの『価値の4段階』を書いてみましょう」といった複数のエクササイズを設け、グループでの議論は盛り上がりをみせていました。第2回は10月31日(土)に開催します。

 

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受講生向けに第1回の講座の動画、テキスト、スライド資料を講座メンバー専用ページで公開しています。ホームワークの提出が必須となります、第2回講座の1週間前までにご提出ください。

Link:https://www.pxj.or.jp/pxe02/

 

 

2.がん患者向けPXサーベイ


日本の病院におけるPXを指標化するため、PX研究会では「日本版PXサーベイ」を開発しています。イギリスの国営医療制度であるNHS(National Health Service;国民保健サービス)の許可を得て、成人の入院患者を対象としたNHS版サーベイを翻訳、因子分析とバックトランスレーションを実施したうえで、日本の医療に即した内容としたものです。NHSでは成人の入院・外来患者向けのほか、出産女性向けなど、対象患者別にサーベイを実施しています。今回は、がん患者向けのサーベイの概要を紹介します。

 

がん患者と医療者は治療における平等なパートナーであるべきで、がん患者のPXが臨床の有効性および安全と同じぐらい重要である――。このような考えのもとで、NHSでは2010年から毎年、「National Cancer Patient Experience Survey」を実施。結果を国・地域の医療通信システムを使い、医療者にフィードバックすることで、がん患者にとってよりよいサービスを提供することに役立てています。

2020年6月に公開された、2019年のサーベイ結果は6万7858人のがん患者が回答。「ケアの経験はいかがでしたか」(日本版PXサーベイでも同じ設問があります)は10点満点中8.8点と、2018年に続いて過去最高のスコアでした。

「病院に行く前に1~2回、GPに会った」「病院スタッフから自助グループなどに関する情報を提供された」「病院スタッフから経済的サポートや給付制度などの情報提供があった」など8つの設問で大幅な改善が見られました。「ケアプランの作成」は38%と、2018年の35%から3ポイント増と、最も改善した項目でしたが、NHS Long Term Plan for Cancer (がん長期計画)では「2021年までにがんと診断されたすべての人に対し、ニーズの評価とケアプラン作成を含む、個別化されたケアを提供する」となっており、現状からはほど遠いと評価されました。

一方、大幅に悪化したのは「最初にがんの告知をされた時、家族や友人が立ち合うことができた」「患者はすべての重要な質問に対して理解できる回答を得られた」など5項目。CNS(Certified Nurse Specialist;専門看護師)との連絡の取りやすさなど、病院スタッフとのコミュニケーションに関する項目が多く、治療過程における情報共有のあり方などが問われています。

NHS Long Term Plan for Cancerでは、16歳未満のがん患者を対象としたサーベイについて言及しており、NHSでは現在開発に取り組んでいます。「8~11歳」「12~15歳」と子どもの年齢別で設問票を2つ作成し、子どもの治療についての親のエクスペリエンスを記録するアンケートを組み合わせて、ケアの改善につなげるとしています。患者ニーズに合わせたサーベイの開発について、PX研究会でも考えていきたいと思います。「National Cancer Patient Experience Survey2019」の結果(概要版)は下記リンクをご参照ください。

Link:https://www.ncpes.co.uk/wp-content/uploads/2020/06/CPES-2019-National-Report_V1.pdf

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では2020年は勉強会を「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していく予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、すべてオンラインでの開催といたします。「第4回PX寺子屋」は、日程など詳細が決まり次第、掲載します。

 

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12月5日(土)開催の「第3回PXフォーラム~PXとEXから考えるWell-being」の参加受付を開始しました。今年はZoom(Web会議ソフト)での開催となります。フォーラムの概要および申し込みは下記リンクからできます。

Link:https://www.pxj.or.jp/pxforum-2020/

 

今年も「PXアワード2020」を開催します。「こんな医療機関がもっとあったらいいのに!」とほかの人に勧めたい医療機関に投票してください。結果は、12月5日開催の「第3回PXフォーラム~PXとEXから考えるWell-being」で発表。投票は下記リンクからぜひお願いします。

Link:https://www.pxj.or.jp/pxaward/

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


第1回PXE養成講座の講義のなかで、代表の曽我香織さんがCXの高いお店としてリコメンドしていた蕎麦店に行ってきました。お目当ての混ぜごはんとたぬきそばのランチセットが売り切れ。「少量のごはんとそばが食べたい」という私のニーズに合うメニューがなく、どうしようかと思っていた時にスタッフの方が餅を2つ入れたそばを提案してくれました。まさに「予想外価値」への感動でした!(F)