日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.210

1.第4期「PXE養成講座」スタート
2.第9回PX寺子屋
3. 今後の予定

1.第4期「PXE養成講座」スタート


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では、PX(patient eXperience;患者経験価値)を広めるエバンジェリストであるPXE(Patient eXperience Expert)の養成をスタートし、今年で4年目を迎えました。PX向上に必要な知識を修得するためのPXE養成講座を設けており、7月23日に第1回を開催しました。

 

第4期生は過去最多の42人にエントリーいただきました。職種は看護師、企業社員、医師、理学療法士の順に多くなっています。オンラインによる全5回の講座では、「PXとは何か?」からPXとPS(Patient Satisfaction;患者満足度)の違い、PXサーベイの実施のノウハウ、ジャーニーマップづくり、コミュニケーション論を扱います。

PX概論では、国内外のPXの取り組みの現状について学びました。また、CX(Customer eXperience;従業員経験価値)の視点からPXを考えました。グループで意見交換ができるエクササイズを多く取り入れており、「スターバックスにおける価値の4段階を考える」というセッションは大いに盛り上がりました。

PXE養成講座は、当メールマガジンでも順次紹介していきたいと思います。興味を持った方は少し先になりますが、来年度の講座にぜひエントリーしてください。

 

 

2. 第9回PX寺子屋


同じく7月23日にはPX研究会によるオンライン勉強会、「PX寺子屋」も開催となりました。

 

冒頭では毎回、初めての参加者がPXを理解するための概論を運営メンバーが担当しています。今回は松下記念病院の小松良平さんが、オリジナルのスライドをもとに、わかりやすく説明しました。

PXを理解する際に“立ちはだかる壁”はPSとPXとの違いがわかりづらいという点です。小松さんは、「PSが患者の『満足』を尋ねる主観的なアウトカム指標であるのに対し、PXは患者の『経験』を尋ねる、より客観的なプロセス指標であり、具体的な課題抽出と改善につなげやすい」と指摘しました。

そのほか、米オハイオ州のクリーブランドクリニックでのPX向上のためのさまざまな取り組みを取り上げました。松下記念病院でのPXにつながる対応として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染防止対策で、子どもの呼びかけによるマスク着用の院内アナウンスを紹介しました。実際に収録した子どもの声を聞かせてもらいましたが癒されます!

「患者のストーリー・ニーズに耳を傾けることで、一人ひとりにとって最適な、患者視点の医療サービス提供実現を目指すのがPX。PXに取り組むことが目的ではなく、医療の質を向上させるための手段と考えるべき」と締めくくりました。

 

メインの講義は、「小松市民病院におけるPX向上推進WG立ち上げについて」をテーマに、小松市民病院看護部長の湯野智香子さんが発表しました。

小松市民病院は石川県小松市にあり、地域の急性期医療を担う中核病院です。「共に歩む」を基本理念に、みんなの力で愛され、働きがいのある病院を目指して、今年4月、PX推進ワーキンググループ(WG)を立ち上げました。

湯野さんはPXE3期生であり、PXE2期生である病院長の新多寿さんとともに、WGのメンバーの検討や病院長によるキックオフ会、組織体制などを考えていきました。「PXEとして頑張ろうと、当初はかなり綿密な組織図と担当分けを立案しましたが、PXが何かがよくわからないというスタッフが多いなか、まずはPXを知ってもらうことから始めました」と湯野さん。PX推進にあたってはやらされ感がないように、スタッフが自ら進んで取り組めるような環境づくりを心がけたと言います。

以前、当メールマガジンで取り上げましたが、5月20日に開催したキックオフ会ではPX研究会代表理事の曽我香織さんが講演し、事例を交えながらPXについてさまざまな視点から語り、講演後には座談会を行いました。183人ものスタッフが参加し、57%が「PXへの理解が深まった」、72%が「PXに興味が持てた」と回答しています。「職員のやりがいにつながる」「医療の意識改革になる」といったうれしい感想が寄せられました。

キックオフ会後、病院玄関やベッドサイドでは患者に寄り添うという意識が高まったほか、看護部のがん看護委員会では、がん患者のPXの把握する試みとしてジャーニーマップを作成しました。WGの3チーム(広報、療養環境、患者サービス)はチーム内で今年度の具体的な活動計画を決めるなど、自主的な活動に変化しました。

湯野さんは「立ち上げには、院内の取り組みとして表明することが必要だと思います。キックオフ会はPXへの理解と自主的に取り組める環境づくりにつながりました」と話しました。

 

小松市民病院のPX向上への取り組みは、多くの医療機関がPX向上する際の参考になる事例でした。1年間の成果についても改めて紹介できればと思っています。

次回、「第10回寺子屋」は11月26日に開催します。詳細が決まりましたら、PX研究会ホームページや当メールマガジンで告知します。

 

3. 今後の予定


「患者・家族メンタル支援学会 第6回学術総会」が11月12日、東海大学医学部松前記念講堂(神奈川県伊勢原市)で開催されます。PXをテーマにしたシンポジウムでは、日本PX研究会のメンバー、関係者などが登壇します。登壇者およびテーマは次の通りです。

 

1.医療の質とペイシェント・エクスペリエンス

青木拓也(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター臨床疫学研究部)

2.日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会の活動

曽我香織(日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会)

3.新型コロナ・パンデミックにおけるペイシェント・エクスペリエンス

小坂鎮太郎(練馬光が丘病院総合診療科)

4.ペイシェント・エクスペリエンスとコーチング

出江紳一(東北大学大学院医工学研究科リハビリテーション医工学分野)

 

当研究会理事で、学会長を務める東海大学医学部内科学系血液・腫瘍内科学教授の安藤潔さんによる教育講演「医療と対話」をはじめ、PXの学びにつながる内容となっています。

詳細は学術総会ホームページからご確認ください。

http://smspf.org/6th/index.html

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


BTSがファンにプレゼントした、BULYのリップバームを友人が贈ってくれました。ケースは推しメンバー仕様となっており、エクスペリエンスの高さに感動です。(F)