日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.290

1.EX講座DAY2開催
2.患者に最高のインパクトを与えるには?
3.今後の予定

1.EX講座DAY2開催


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会は6月1日に、2日目となる「ゼロから学ぶEX講座」をオンライン開催しました。

医療機関におけるEX(Employee eXperience;従業員経験価値)向上を目指し、EXを学ぶ場として企画しています。5月25日開催の1日目は、「EXとは何か」「EXを可視化する」「EXを改善する」の3つをテーマとして取り上げました。

この日は事例紹介および、ジャーニーマップ作成を行いました。

日本原病院診療部課長で言語聴覚士(ST)の平尾由美さんが、自院の取り組みとして、ある患者との関わりのなかでのSTの働きがいにフォーカスしたことを紹介。ジャーニーマップを活用し、患者とSTそれぞれの感情の変化などを分析しました。平尾さんは、「EXをSTの業務と経験から測ることによって、PXも上がった」と説明。さらに「PX(Patient eXperience;患者経験価値)、EXは自分らしくいられること、が根本にあるのではないか。教育システムや評価のフィードバックを行う仕組みを整えていくことが今後の課題」などと話しました。

続いて、PX研究会が開発したEXサーベイの実施結果について、特定医療法人勝木会法人本部総務人事部の地井卓朗さんが発表しました。

以前からPXに取り組んでいる勝木会ですが、従来の職員満足度調査が改善につながっていないことから法人の全職員を対象に、EXサーベイを実施することになりました。属性やフリーコメントを含めて26の設問とし、回答率は79.5%でした。結果では、対応を優先すべきものとして「幹部は私をサポートしてくれる」「よい働きをして成果を出したら適切に評価されている」といった設問が挙がってきました。地井さんは「EXを高めることによって病院の業績が向上し、離職率が低下する。さらに病院から職員によい経験を提供することで、組織エンゲージメントが高まる」と指摘。サーベイ結果を受けて、人事評価システムを導入したほか、今後コーチング研修を実施する計画があることを話しました。

参加者からは、設問内容をより理解しやすくする工夫や、定性的なコメントの分析、ソフト面でのサポートによるEX向上といった取り組みが必要との意見が出ました。

初の試みとして、EXジャーニーマップを作成しました。「採用」「臨床業務」「指導・育成」「医療チーム構築」「給与」「労働環境」といった軸に対し、「行動」「接点」「その時の感情」「対応」などを参加者で協力しながら書き込みました。改善につながる優先的な取り組みとしては、研修実施や評価・管理業務の見える化、業績の承認などが挙げられました。

EX講座は昨年に続いて2年目の開催でしたが、議論の内容がより深まっていることを実感しました。PX研究会が12月に開催するPXフォーラムではEXをテーマとしています。詳細が決まりましたら、当メールマガジンでご案内します。EXサーベイについて興味のある方は、下記リンクをご確認ください。

Link:https://www.pxj.or.jp/exsurvey/

2. 患者に最高のインパクトを与えるには?


科学者が患者に最高のインパクトを与えるためには、豊富でアクセスしやすいデータがスケールアップしている必要があるーー。PXにも関連する、治療にかかわるデータを扱うことについて、GSKのリサーチテクノロジー担当シニアバイスプレジデントであるChris Austinさんは、その理由を次のように説明しています。

疾病の予防と治療における闘いにおいては、遺伝学から化学、生物学、人工知能(AI)、機械学習に至るまで、科学と技術の両方における目覚ましい進歩により、私たちは信じられないような新たな洞察を深め、創薬を推進できます。

創薬のごく初期段階において、データは、より正確で迅速な賢明な意思決定を行ううえで極めて重要な役割を果たしています。その役割は臨床試験まで続き、そこでは潜在的な医薬品やワクチンから恩恵を受ける可能性が最も高い患者を理解し特定するために、より多くのデータを活用します。

実世界にインパクトを与えるためには、データが高品質で、アクセスしやすく、常に深い注意を払いながら責任を持って使用されるようにする必要があります。それには安全かつ倫理的な方法でデータへのアクセスを共有する意思を持つ、官民のパートナーを味方につける必要があります。

米国国立衛生研究所(NIH)で取り組んだClinical Data to Healthプロジェクトでは、医療従事者のデータと実世界のデータ、正確でタイムリーかつ適切に管理された臨床試験データとを組み合わせることで、リッチで包括的なデータセットのインフラを構築することができ、テクノロジーや適切な分析とともに複雑な人体の生物学的理解を促進し、創薬を加速させることができました。

これを正しく行うためには、データの人間的な部分を忘れてはならない。データ・ポイントは抽象的に見えるかもしれませんが、実在の人物を表しているのです。すでに多くの素晴らしいデータ共有の協力関係が形成されていて、科学者たちは他者へのリスクを最小限に抑えつつ、病気とその影響を受ける人々をよりよく理解するための豊富なデータにアクセスすることができます。私たちはまた、AI/MLチームを科学者たちと統合し、彼らが肩を並べてビッグ・クエスチョンに取り組めるようにしています。


患者の生命に真に影響を与えることができる医薬品やワクチンを提供するためには、才能ある科学者と技術専門家がスキルを結集する必要があります。そして、さまざまな質問に一度に答えるモデルを並行して作成し、研究開発計画をその場で調整できるようにするために、発病前からPX全体にわたる多様なデータセットが必要なのです。

世界中には、私たちの助けを緊急に必要としている患者が何百万人も何千万人もいます。開業医として働いている間、私たちの病気に対する理解不足、そしてそれがいかに有意義な介入や適切な治療を行うことを妨げているかに、身の引き締まる思いと好奇心を抱いていました。

病気は、私たちが追いつくのを待ってくれません。ですから、データの利用可能性と分析の進歩を、技術革新と驚異的な専門知識と相まって、先手を打つために利用する必要があるのです。

全文は下記からご一読ください。

Link:https://www.gsk.com/en-gb/behind-the-science-magazine/chris-austin-comment-data-scale-drug-discovery/

3. 今後の予定


2024年度のPXE6期生の募集を開始しました。全5回で、PX概論からペイシェントジャーニーマップの作成、PXに欠かせないコミュニケーションなどを学ぶことができます。PXE同期、卒業生とのネットワークにより、PX実践につながる交流も図れます。

医療者だけでなく企業勤務の方も受講可能です。申し込みは下記リンクからお願いします。https://www.pxj.or.jp/pxe6/

※6期からはPX研究会編著の書籍『ペイシェント・エクスペリエンスー日本の医療を変え、質を高める最新メソッド』(三輪書店)をテキストとして使用しますので、受講生の方は下記から各自でご購入をお願いします。

三輪書店オンラインショップhttps://shop.miwapubl.com/products/detail/2713 

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4895908062?ref_=cm_sw_r_cp_ud_dp_TQ04SWYRV6624N0S4X4K 

※全国の書店でも購入できます。

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株式会社スーペリアでは、6月21〜22日に福岡市で開催の「第26回日本医療マネジメント学会学術総会」において、22日12:25~13:15まで、ランチョンセミナーを企画。国内の好事例を示しつつ、医療従事者のEXやワークエンゲージメントを高める働き方改革の実現について話し合います。テーマは、「『医師の働き方改革』を考えるーPX/EX の視点で働き方改革をデザインするー」。6月5日まで事前予約を受け付け中です。

LINK;https://www.congre.co.jp/jhm2024/registration/index.html

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スーペリアでは、医療従事者を対象とした「働きやすい職場づくりのための実践的医療コーチング体験会」を企画しました。チーム医療やPXに関してはもちろん、医療現場でコーチングが求められている背景などもお話しします。ご関心のある方は、ぜひご参加ください。

日時:2024年6月15日13:00~15:00(12:45頃より入室可能)

講師:安藤 潔(東海大学医学部血液・腫瘍内科客員教授)

開催形式:オンライン(Zoom)

対象:病院、クリニックにお勤めの医療従事者 ※管理者を想定した内容となります

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

編集部から


自炊生活を満喫中です。近所のスーパーで珍しい形のキャベツを見つけました。先がとんがっていて面白いなぁと思って調べたら、本当に「トンガリボウシ」という名前でした! (F)