日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.239

1.医療の変革に必要なHXのマインドセット
2.「ELEVATE PX2023」開催
3. 今後の予定

1.医療の変革に必要なHXのマインドセット


PX(Patient eXperience;患者経験価値)、EX(Employee eXperience;従業員経験価値)、安全性において真の変化を促すには、データの背後にある人間を理解する必要がある――。4億人以上の患者の声をもとに、PXを向上させる戦略を設計、開発、提供している米国Press Ganey社のChrissy Danielsさんは、医療の変革にはHX(Human Experience;人としての経験価値)マインドセットが必要だと指摘しています。Chrissyさんの話を要約します。

 

PXとEXは切り離すことができません。優れたケアを提供するためには、従業員全体のwell-beingとレジリエンスを高めることに注力する必要があります。またHXマインドセットの採用は、安全性と臨床の質で卓越した成果を上げる唯一の方法です。患者の安全を維持するためには、従業員のレジリエンスや高い信頼性の構築、EXやPXにおける多様性、公平性、包摂性の向上への取り組みなど、全体的なアプローチが必要です。

HXのアプローチを取り入れることで、医療における最も重要な課題を克服する大きなチャンスが生まれます。重要なのは、あらゆるタッチポイントからHXに目を向け、ギャップを予測し、個人のニーズを予測することです。そのためには、あらゆる角度からデータを見て、サイロを壊し、本当の意味でのつながりを作ることが必要です。そうすることで、具体的で実用的なインサイトが明らかになり、今すぐ重要な変化をもたらすことができるのです。そのためのポイントを挙げます。

☆PXのインサイトの全容を解明する

データに関しては、「収集する」「分析する」「可視化する」「行動する」といった手順が必要です。そのためには定量的、定性的な情報、そしてフィードバックとインプットを結びつける必要があります。

フィードバックは、「どうでしたか?」「私たちが提供したケアはいかがでしたか?」という質問に答える、PXのバックボーンとなるものです。すでに起こった出来事に対する反応であり、私たちが何を正しく行い、どこで患者の期待に応えられなかったかを知ることができます。一方、インプットは、「どうしたらいいですか?」「どうしたらよかったですか?」という問いかけに答えるものです。個人の生活での経験、願望、ニーズ、恐怖に基づいたアドバイスを私たちに伝えてもらうことで、私たちは消費者や患者個人の声を医療機関に届けることができるのです。その声を通して、私達は魅力的で居心地の良い環境を作るために何ができるかを発見します。患者がデザインに参加することで、私たちは患者とともにデザインし、私たちの仕事が患者ニーズを満たすことを確実に行います。構造化された調査によって、キードライバー分析や根本原因分析など、実用的なインサイトを得ることができます。

 

☆患者、消費者、そして人間

ヘルスケアにおける大きな課題は、患者と消費者のジャーニーを2つの異なる戦略としてアプローチしていることです。成功するためには患者と消費者、両方の視点を取り入れる必要があるのです。患者の50%以上が、ヘルスケアにおけるジャーニーで摩擦に遭遇し、ロイヤルティに大きな影響を与えています。消費者の62%は、顧客サービスの質が病院へのロイヤリティに影響すると回答しました。

私の「患者時代」は、私のニーズと臨床専門家との相互作用によって定義されます。患者との信頼関係は、唯一無二のものです。人として、医療の必要性を議論するときほど、脆弱性と恐怖を伴う可能性がある対話はほとんどありません(そのため、PXを他の業界のエクスペリエンスと比較することは非常に難しいのです)。患者として、私は自分の弱さ、感情、質問に対する敬意と対応を求めます。私は答え、専門知識、快適さ、そして安心感を求めています。

一方で医師、看護師、理学療法士、薬剤師、その他の臨床専門家の元を離れた瞬間、私は再び消費者となります。そして消費者として、医療機関から他のサービス産業との出会いと同じもの、すなわち利便性と個別対応を受けることを期待します。PXは、消費者としてのエクスペリエンスには結びつきません。消費者はオンラインポータル、予約、駐車場、フロントデスク、入院、請求など、臨床以外のさまざまなインタラクションから構成されます。

 

☆介護者の経験価値

最後に、介護者の声を取り入れることです。人間中心の設計には「消費者は何を望んでいるのか?」「データは何を裏付けているのか?」「チームとして何ができるか?」の3つの要素があります。患者を巻き込んで患者のためにデザインすることで、より予測可能な改善効果を得ることができます。同様に、私たちは実際にケアを提供する人々を取り込む必要があります。変革を実施する前に、ケアチームがそれを達成できるかどうか、そのために感情的・運営的に何が必要かを尋ねる必要があります。

テクノロジーを使って介護者と患者を結びつけることで、何かを設計し、実施するときに、それがうまくいき、長期にわたって機能し続ける可能性が非常に高くなります。チームは、改善へのアプローチ方法についてアイデアを出し合い、その解決策を設計する際に、クラウドソーシングやインテリジェント調査を通じて、この問題にどのように取り組むことを提案するかについて、患者にポーリングしているのです。患者の代表的な声と介護者の代表的な声を結びつけるには、あまりにコストがかかりすぎました。しかしテクノロジーを使えば、拡張性があり持続可能な方法で実現することができます。

今、多くのヘルスケア事業者は、個人レベルでケアのニーズを理解し、それに応えようとする可能性に圧倒されています。そのため、ワークフローに組み込むためのシステムが必要です。このようなニーズを先取りすることで、明らかになったことに圧倒されることなく、個人の生活に変化をもたらすことに集中することができるのです。

 

すべてのデータ、すべての訪問者の背後には人がいます。個々の人間を理解し、その具体的なニーズに応えれば応えるほど、より良いエクスペリエンスができます。

従業員一人ひとりの経験を理解することも重要です。Press Ganey社の国内データによると、多様性と包括性の認識に関するスコアが高いほど、従業員エンゲージメントのレベルが高くなることが示されています。重要なことは、患者の安全性、品質、経験値の向上は、強固な安全文化と高いエンゲージメントを持つ従業員に根ざしているということです。従業員のサブグループが職場文化をどのように認識しているかには、重要な違いがあることを理解すべきです。継続的なフィードバックをデジタルで収集し、幅広い従業員の声を集めましょう。

 

全文は下記からご一読ください。

Link:https://info.pressganey.com/press-ganey-blog-healthcare-experience-insights/transforming-the-healthcare-journey-through-the-power-of-human-experience-hx

 

 

2. 「ELEVATE PX2023」開催


アメリカのPX推進団体であるThe Beryl Instituteが主催するPXを学べるイベント「ELEVATE PX2023」が3月27~29日、米テキサス州ダラスで開催されます。

 

「ELEVATE PX2023」はヘルスケアにおけるHXの変革に取り組む、グローバルコミュニティの声を結集した集まりです。学習、サポート、アイデアの共有のためにコミュニティをつなぐダイナミックでインタラクティブなイベントで、世界中の医療機関におけるエクスペリエンスにポジティブな影響を与えることができます。ヘルスケアに携わる人たちによる講演やセッションを通して、PXに関するさまざまな先進的な取り組みを知ることができます。

イベントでは、▽エグゼクティブリーダーシップ、▽医師や看護師のリーダーシップ、▽PXとPS(Patient Satisfaction;患者満足度)、▽サービスの卓越性、▽患者と家族のアドボカシー、▽マーケティング/コミュニティへの働きかけ、▽医療の質/安全なオペレーション、▽人事/組織開発、▽臨床教育/スタッフ育成、▽患者と家族のアドバイザー、といった分野について学べるセッションが3日間にわたり繰り広げられます。

『Making Work Work』 『 Go Together』 のベストセラー作家であり、世界中に熱心なファンを持つGo Together Global の CEO 兼創設者Shola Richardsさんによる基調講演をはじめ、エクスペリエンス・ジャーニーを通じて学んだ教訓を共有する機会を提供するオンライン参加限定の「バーチャルPXチャット」といったプログラムが企画されています。

 

参加料は、非会員はオンラインで650ドル、オフライン(現地参加)の場合は1350ドルとなっています。イベントのスケジュールおよび参加申し込みは下記リンクから可能です。

Link:https://web.cvent.com/event/a190c942-7e1f-4837-aabf-5c26ae9af68b/summary

 

 

3. 今後の予定


3月25日にPX研究会のオンライン勉強会、「第11回PX寺子屋」を開催します。病院に日本初のPX部門を開設した、やわたメディカルセンターのPXについての取り組みを紹介します。

 

3月25日(土)12:30-13:30

「PX概論」PX研究会 笹野 孝
「PXの取り組み」やわたメディカルセンター 安田 忍

参加費は会員は無料、非会員の方は1000円となります。下記リンクから申し込みください。

https://www.pxj.or.jp/events/

 

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第5期生のPXEの募集を開始しております。

2023年7月開講の全5回の養成講座では、PXの基本的な考え方からPXサーベイの実践、患者ジャーニーマップの作成、患者の思いを引き出すコミュニケーション法などを学ぶことができます。

患者視点の医療サービス提供を実現したい方であれば、医療者に限らず、どなたでも受験可能です。医療現場や職場でPXを向上させる旗振り役として、私たちと一緒に活動しませんか?

概要および申し込みは下記リンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxe5/

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


WBC盛り上がっていますね。友人が大谷選手のユニフォームをゲットするために朝5時半から並びましたが、抽選で2946番だった……と泣いておりました。今日のイタリア戦はテレビ観戦したいと思います。(F)