PXフォーラム抄録

 

飯塚病院総合診療科 医療の質の時代に向うために

一般社団法人日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会 世話人
飯塚病院 特任副院長
井村 洋

わが国の医療が「量」の追求から、今後は「質」の追求へと向かうべきことが例えば「保健医療2035」などで示されています。しかしながら現状では診療科が一丸となって追求すべき妥当な質の指標設定が普及しているとは言い難い状況です。特に病院内の新参者である総合診療科の必要性は一部の病院で認められてきた一方、役割定義や医師集めにさえ苦心している現状があります。飯塚病院総合診療科も大規模総合病院でありながら、医師数、入院・外来診療件数、病床占有数などの「量」的な指標については院内随一になり、これからは「質」の向上に取り組む時期がきています。今回は、飯塚病院総合診療科が考える質向上の対象や指標の設定及び今後の課題をご紹介します。

 

PXの測定と活用~国内外の事例の紹介~

一般社団法人日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会 世話人
京都大学大学院医学研究科 医療疫学分野 家庭医療専門医・指導医
青木 拓也

Patient-centeredness(患者の意向・ニーズ・価値に応じたケアの提供)は、医療システムが達成すべき主要目標の一つとして、国際的に注目を集めています。近年では欧米を中心に、Patient-centerednessのQuality IndicatorであるPatient Experience (PX)の測定が、全国的かつ継時的に実施され、継続的質改善のみならず、医療機関の認証やPay for performance等に利用されています。我々は、日本のプライマリ・ケア・セッティングに即したPX尺度:Japanese version of Primary Care Assessment Tool (JPCAT)を開発し、実践と研究の両面で適用を拡大しつつあります。当日は、PX測定における学術や国内外のPX活用状況について解説する予定です。

 

 

患者中心の医療を実現する〜PX概論と研究会の取り組み〜

一般社団法人日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会 代表理事
株式会社スーペリア 代表取締役
曽我 香織

当研究会は、患者中心の医療を実現し「医療の質」を向上させるための指標としてPX(ペイシェント・エクスペリエンス;患者経験価値)の利用を促進することを目的とする日本初の非営利団体です。海外では既に医療の質を反映する一つの指標としPXの評価が診療報酬に反映されている国もみられます。しかし我が国ではPXは認知度が低く、未だ馴染みのない概念です。
第1回PXフォーラムでは、PXの概要及び当研究会の取り組み・今後の展望をお話しします。

 

 

一般社団法人日本摂食・嚥下リハビリテーション学会
「チーム医療実践リーダー育成研修」の取り組みについて

一般社団法人日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会 理事
東海大学医学部 血液・腫瘍内科教授
安藤 潔

一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会では2017年7月から「多職種連携を実践する人材育成モデル構築事業」を実施しています。摂食嚥下リハビリテーションは、多様な診療科・職種・団体が関与し、多職種連携が必須とされる代表的な領域です。今回は多職種連携マネジメントのためにコーチングを利用し、その効果の評価指標の1つとしてペイシェント・エクスペリエンスを測定する予定です。ここでは本事業の概要と実施状況を紹介します。

 

 

なぜ“共感”と“イノベーション”にたどり着いたのか?
~PX SUMMIT 2018 @ Cleveland報告

一般社団法人日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会 世話人
北里大学大学院 医療マネジメント教授
中澤 達

米国のPX状況を報告し、患者中心の医療を実現するために日本で何ができるか、について考えます。
具体的な計測可能な経験プロセスを評価し、それを改善することがPXの目的であるのに、なぜ米国は“共感”と“イノベーション”にたどり着いたのか?その答えを提示しましょう。
PXサミットとはクリーブランド・クリニックがアメリカ病院協会、アメリカ医師会、病院医学会と共催で行っている世界最大規模のサミットです。2018年6月18~20日の3日間開催され、今年で9回目となります。

クリーブランド・クリニックやクリーブランド市内の様子も併せて紹介します。

 

 

従来の満足度調査と比較して

前橋赤十字病院 総務課 広報広聴係 主任
引田 紅花

10年間続けてきた満足度調査に疑問を持ちました。「患者の満足度を追及すること=医療の質の向上」と言えるのだろうか?5段階評価で医療サービスを正しく評価できるのだろうか?と。そんな中で、『患者経験価値(PX)』と出会いました。これまでの調査項目は曖昧な点が多く、具体的な改善策につなげにくいものでした。PXはプロセスに着目し、患者がどのような場面で、どのような医療サービスを、どの程度の頻度で享受したのかを把握できます。そこで、PXを用いて、実際に提供されている医療サービスの現状を把握することにしました。

 

 

患者中心性の視点で医療の質を測り、質向上に繋げる
~日本版PXサーベイ実施報告~

国立病院機構九州医療センター小児外科医長・メディカルコーディネートセンター副センター長
西本 祐子

当院では2015年からQM活動の一環として患者経験価値(PX)調査を定期実施してきました。設問票は米国が使用しているHCAHPS(エイチキャップス)の和訳版を採用していましたが、 2017年秋以降は日本版PXサーベイも並行実施しています。英国のNHSが採用しているものをベースに日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会で開発したもので、日本の医療事情を鑑みた設問で改善行動に繋げ易いのが特長です。本講演では、他院に先駆けて実施した日本版PXサーベイ(入院編と外来編)の結果を報告します。