日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.151

1.米国の病院の質ランキング
2.ポストコロナ時代のPXトレンド
3. 今後の予定

1.米国の病院の質ランキング


PX(Patient eXperience;患者経験価値)を評価するためのCAHPS(the Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems;米国のPXサーベイ、病院向けのものはHCAHPS)を提供する米国メディケア・メディケイドサービスセンター(Center for Medicare and Medicaid Services;CMS)では病院の医療の質を格付けしています。2021年4月に最新版が更新されました。

 

格付けは、患者がその地域で評価の高い病院を選択するために行われています。

比較検索サイト: https://www.medicare.gov/care-compare/?providerType=Hospital&redirect=true

1つ星~5つ星で表現され、最新版は20年10月のデータに基づき、4586病院が評価を受けました。最も多かった3つ星が1018病院(全体の30.34%)で、最高ランクの5つ星を獲得したのは455病院(同13.56%)、1つ星は204病院(同6.06%)でした。

 

医療の質評価は、1.Mortality(死亡率)、2.Safety of Care(ケアの安全性)、3.Readmission(再入院)、4.Patient eXperience(患者経験価値)、5.Timely & Effective Care(タイムリーかつ効果的なケア)の5つの測定値グループにカテゴライズされています。タイムリーかつ効果的なケアは12%、それ以外は22%と重みづけされています。従来の調査では単純に平均化されていましたが、今回から評価方法が見直された結果、ケアの質向上や感染症対策など優先度の高い取り組みがより評価されるようになりました。

PXの評価項目としては、▽看護師のコミュニケーションが良好、▽医師のコミュニケーションが良好、▽必要な時にすぐにヘルプを受けた、▽薬が処方される前にスタッフから薬について説明を受けた、▽部屋とバスルームが清潔だった/部屋とその周辺は夜静かだった、▽退院後、家での回復期に何をすべきかの情報を得た、▽退院時に自分のケアを理解した、▽病院にを0(最低)から10(最高)で評価した/友人や家族に病院を薦めた――の8つです。

 

患者視点でのサービスであると同時に、病院にとっても改善につながる評価となっています。公平さの担保など、まだ課題があるようですが、日本でもこのようなシステムができればいいですね。詳細については下記リンクをご確認ください。

Link:https://data.cms.gov/provider-data/topics/hospitals/overall-hospital-quality-star-rating/

 

 

2. ポストコロナ時代のPXトレンド


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってPXはどのような影響を受けたのでしょうか。ヘルスケア関連のBtoBメディア、Xtelligent HealthcareMediaの記事を紹介します。

 

PXサーベイの分析などを行っているPRESS GANEY社のPXチーフ・メディカル・オフィサーのTom Leeさんによると、COVID-19のパンデミックが発生し始めた2020年3~5月は最前線で働く医療者への感謝の高まりから、通常では約1%の上昇が見込めるところ、PXスコアが前月比で約2%増加しました。特に打撃が大きかったニューヨークでは1カ月で12~13%も急上昇しました。

パンデミックにおいては、特に入院患者は臨床医や看護師との関係を大切にしているほか、施設の清潔さ(感染防止対策)についても以前より注意深くみています。そしてPXが患者、医療者双方にとって変わってきていると指摘。PXのトレンドとして、次の4つを挙げています。

 

☆PXはオンラインから始まる

これまで、PXを測るのは患者が医療機関の入口をくぐったところからでしたが、オンラインに移行したヘルスケアではインターネットで調べるところから始まります。「患者は自分の症状や受診しようとしている医療機関、医師について、グーグル検索によるネットサーフィンを始めています」

将来的にはグーグル検索でのレビューを参考に受診する医療機関を判断するため、オンラインプロバイダーのレビューサイトと連携する必要性を指摘しています。「目標はグーグル検索により、すべてのWEBサイトで同じデータを見つけられるようにすること、それによってネット上の情報を信頼するでしょう」

 

☆臨床医にはZoom「家族会議」が必要

チーム医療はケアの調整と最適な結果を得るための最良の方法であり、PXが不可欠であると見なされてきました。COVID-19によって入院患者の医師が外来患者の医師と会うことがない状況のなかで、チームとして統一した見解を患者に伝えることができないことも考えられます。遠隔医療ツールは、入院患者と外来患者それぞれにかかわる医療者、病院のケアチームメンバーをつなぐのに役立ちます。

 

☆ローテクな形式も必要

遠隔医療ツールによる“訪問”が急増しているなかで、医療者は依然としてケアアクセスの障壁に直面しています。医師と対話するプライバシーが担保できないネット環境を持っている可能性がある年配の患者には、電話で会話をします。ローテクによる患者とのやり取りが大幅に向上しており、人口のセグメントからみても非常に重要です。

 

☆率先して組織の回復力を固める

COVID-19が今年なくなることはなく、外来患者が受診できず、予定手術ができない時があった場合、医療機関の順応性が重要になります。スタッフの燃え尽き症候群から患者の信頼まで、組織運営のあらゆる要素において、適応することが重要になるといいます。患者が不安なく戻ってくることと、スタッフ間の調整は組織の回復力によります。「1カ月間手術ができなかった場合、再開した後は週7日手術をしなければならなくなります。その時にスタッフが柔軟に対応できることで、可能となります」

 

Link:https://patientengagementhit.com/news/4-trends-forecasting-the-post-covid-future-of-patient-experience

 

 

3. 今後の予定


5月15日に第4回寺子屋を開催します。PXE(Patient eXperience Expert)1期生が講師として、函館五稜郭病院でのPX向上の取り組みを紹介。PXサーベイを1部門から始めたという試みは、医療機関でのPX導入のヒントになると思います。PXアンケートをPFM(Patient Flow Management;入退院マネジメント)の運用につなげるといった画期的な話をしていただく予定です。奮ってご参加ください!

 

第4回PX寺子屋

・日時:2021年5月15日(土)13:00-14:00

・テーマ:

「PX概論」

「放射線治療科におけるPXサーベイの試み」 社会福祉法人 函館厚生院 函館五稜郭病院 放射線科 小林聖子

「PXアンケートの活用 ~PFMの発展を目指して~(仮)」函館五稜郭病院 企画情報システム課企画係 久米田聖人

 

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PX研究会では12月4日(土)に「第4回PXフォーラム 変革から成熟へーWithコロナ時代のPXがもたらすものー」をオンラインで開催します。PX研究会会員(法人・個人)は無料。会員外の方は第1・2部で3000円となります。第1部、第2部のみ(各1500円)参加も可能です。フォーラムの詳細と申し込みは下記リンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxforum2021/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

 

編集部から


昨年に続いて今年もGWはstay homeでした。もっぱら家飲みで、nightcap用に丸い氷を作れる流し型を買いました。(F)