日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.200

1.PXサーベイの今後
2.PX改善のフレームワーク本
3. 今後の予定

1.PXサーベイの今後


PXサーベイは、患者の立場からの医療サービスを提供しているかどうか、PX(Patient eXperience;患者経験価値)を測る一つの手段として定着しています。2002年に世界で初めて、英国NHS(National Health Service;国民保健サービス)で開発・実施しました。米国でも2006年、公的機関であるCMS(the Centers for Medicare and Medicaid Services)によるCAHPS(Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems;米国のPXサーベイ、病院向けのものはHCAHPS)が標準化され、現在に至るまで行われています。

 

HCAHPSではデータへのアクセス性と、誰もがより理解しやすい内容に変えていく必要性が指摘されています。PXPF(The Patient Experience Policy Forum;PXについての政策提唱を行う患者、家族、医療者による団体)共同議長のRick EvansさんとShari Bermanさんらが執筆した方針書では、医療機関に有意義なフィードバックを行い、回答率を維持するために必要なこととして次の5つが挙げられています。

1)患者、家族、医療者からのインプットに基づいたサーベイのコンテンツの定期的な更新

2)自由回答形式の質問プロトコルを実装することで患者のナラティブとコメントを反映させる

3)効率的かつ迅速にフィードバックできる調査とデータ管理方法の開発

4)サーベイの対象となる患者集団のニーズに合わせるなど、「案内メッセージ」をより洗練させる

5)サーベイの調査フィールドの平準化(地域やコミュニティ、医療機関によるスコアの偏りの調整)

 

また、PXサーベイのデータをより使いやすい、アクセスしやすいものとしてサーベイの透明性を高めることの重要性を指摘しています。多くの情報に基づいて患者が意思決定できるようにするためには、▽中立性が保たれた状態での比較ベンチマークデータの公開、▽患者のサーベイ対応への負担軽減と、データ収集の際の医療機関のコスト減のための測定要件の検討、▽患者の意識を高め、医療機関が使用しやすくするなど公開レポートの強化――が求められるといいます。

PXサーベイでは、結果をもとに改善することで医療の質を上げることが第一義ですが、患者へのアプローチが必要だということです。日本でPXを普及するうえでも欠かせない視点が含まれている考察だと思います。

 

Link:https://www.healthaffairs.org/do/10.1377/hblog20200309.359946/full/

 

 

2. PX改善のフレームワーク本


「Reigniting the Human Connection(人と人とのつながりを再燃させる)」というタイトルの書籍がこの5月に出版されました。医療アウトカムを改善するための、PXに重きを置いたフレームワークの開発について紹介する内容です。

 

同書は、米ニューヨーク州最大の医療システムであるノースウェル・ヘルスの医師でありPXや健康の公平性、多様性などを専門とするJennifer Mieresさん、Elizabeth McCullochさん、Michael Wrightさんの共著。同社のCenter for Equity of Careチームでは医師と患者のエクスペリエンス、ヘルスケアの公平性を体系化するため、10年にわたって取り組んできました。フレームワークは、その成果からつくられたものです。PXのあらゆる段階において多様性、包括性、健康の公平性を優先するよう慎重に組み立てられています。

チームでは人種、民族、経済的格差を超えて存在する健康格差の原因のうち、PXの断片化、効率的なコミュニケーションの課題、患者と接するの時間の短縮、健康の社会的決定要因への対処などの解決に着手するために何をすべきか、実践的な道筋を提示しています。

「ノースウェル・ヘルスの特徴であるホリスティックケアのビジョンを中心に、真の健康の公平性への道のりは、患者をケアのパートナー、利害関係者として扱うことから始まります」と著者らは主張しています。PX改善に向けた問題を整理し、具体的な解決策につなげるヒントとなりそうな一冊です。私も購入して読んでみたいと思います。

 

Link:https://www.forbes.com/sites/partnerreleases/2022/05/10/bringing-the-human-connection-back-to-healthcare/?sh=f501f5042373

 

 

 

3. 今後の予定


PX研究会では医療機関や企業でPXを広めるエバンジェリストとして、PXE(Patient eXperience Expert)の認定を行っています。現在、2022年度の第4期生を募集中です。PXについて体系的に学べる内容となっております。詳細と申し込みはリンクからお願いします。

PXEの第1~3期生は5000円で受講可能です。改めてPXを学び直したいという方もぜひエントリーください!

https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

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第9回PX寺子屋を、7月23日(土)12:30-13:30に開催します。PX概論のほか、病院でのPX向上の取り組み事例を紹介します。

 

「PX概論」
松下記念病院 看護師 小松 良平

「小松市民病院におけるPX向上推進WG立ち上げについて」
小松市民病院 看護部長 湯野 智香子

 

研究会会員は無料、非会員の方は1000円です。

下記リンクから申し込みできます、奮ってご参加ください!

https://www.pxj.or.jp/events/

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


今年のGWは長かったですね、どのように過ごされましたか。瀬戸内海で美しい風景とアートを楽しんできたものの、早くもGWロスです。(F)