日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.216

1.対面トレーニングでPX向上
2.患者と従業員のエンゲージメントを上げる方法
3. 今後の予定

1.対面トレーニングでPX向上


オハイオ州立大学医学部の研究者らは、患者ポータルの使用方法について対面でトレーニングを受けた入院患者は、ビデオによるトレーニングを受けた患者よりも、そのポータルを頻繁かつ適切に使用する可能性が非常に高いことを発見しました。それによりPX(Patient eXperience;患者経験価値)も高くなったとしています。米国のマルチプラットフォームメディア、Health Leaders Mediaの記事を紹介します。

 

オンライン患者ポータルは、医療資源へのアクセスを求める入院患者にとって大きなメリットをもたらすかもしれませんが、患者がその使い方を知らなければ機能しません。

同大学医学部で行われた新しい研究では、医療従事者から直接トレーニングを受けた患者は、ビデオを使ってトレーニングを受けた患者よりもデジタルツールの使い方をよりよく理解できることがわかりました。つまり、医療機関は、患者用ポータルサイトのメリットを最大限に享受したいのであれば、対面での実地トレーニングを重視し、投資すべきです。

「入院患者用のポータルは、検査結果などの臨床データ、ケアプランに関する情報、医師や看護師とのコミュニケーション手段へのアクセスを患者に提供することで、患者の力を高めます」と、同大学医学部・ウェクスナー医療センターの家族・地域医療学科教授、 The Center for the Advancement of Team Science, Analytics, and Systems Thinking in Health Services and Implementation Science Research(CATALYST)のエグゼクティブディレクター、医療サービス研究部門の副学部長であるAnn Scheck McAlearneyさんは述べています。「ポータルの使用は、患者が自分の健康管理についてより関与し、知識を持ち、患者として大切にされていると感じる、患者中心のケアモデルをサポートします」

 

研究では、デジタルヘルスを十分に理解している患者と、知識が乏しい患者の両方について、対面トレーニングとビデオチュートリアルを比較しました。テストは2016年12月から2019年8月にかけて6つの病院で行われ、2800人以上の患者が参加しました。

テクノロジーの使い方を十分に理解している人については、オンデマンドで食べ物を注文する機能、チュートリアル、患者教育リソース、ケアスケジュール、ケアプロバイダーとのメッセージング、外来患者ポータルなど10の機能に焦点を当てました。そのうちオンデマンド注文、チュートリアル、患者教育リソースの3つの機能について、テクノロジーへの理解が浅い人たちにテストが行われました。

対面式のトレーニングは、ビデオチュートリアルを利用した人よりも「入院患者ポータルの利用を著しく増加させ」「総合的なポータルユーザーになる確率が著しく高かった」ことが判明しています。また、実地トレーニングを受けた人は、6ヵ月後に行われた調査で、オンラインポータルでの体験に満足する確率も高くなりました。

Annさんは、「個別トレーニングを受けた患者は、トレーニングビデオを見ただけの患者に比べ、より頻繁にポータルにアクセスし、包括的なユーザーとして分類される可能性が高いことがわかりました」と述べています。「同様に、入院患者ポータルのすべての機能にアクセスできる患者は、限られた機能にしかアクセスできない患者よりも、より多くデバイスを使用していました」。

医療機関の担当者はこの研究結果を、患者ポータルを通じて健康データを収集するアウトカムの改善に利用すると述べています。

 

 

記事全文は下記からご一読ください。

Link:https://www.healthleadersmedia.com/technology/new-study-touts-value-person-training-patient-portal-use

 

 

2. 患者と従業員のエンゲージメントを上げる方法


医療機関では、患者や従業員のエクスペリエンスを改善し、フィードバックを収集、医療従事者のストレスを軽減するために、さまざまな方法で調査を行うことが重要視されています。近年では、テクノロジーの力によって、調査をはるかに超えた新しい革新的な方法で、リアルタイムのエンゲージメントを実現できるようになりました。

医療機関がコミュニケーション・プラットフォームの柔軟なメッセージ機能を利用して、ビジネスの推進、コミュニケーションの増加、ケアの向上、従業員という4つの分野でエンゲージメントを向上させている例を紹介します。

 

1. エンゲージメントによるビジネス促進 
メッセージ(のやりとり)は単なるコミュニケーションにとどまらず、ヘルスケアにおけるビジネス推進のための貴重なツールです。その目的は、患者を来院させながら、医療機関のPRと認知度を高めることです。

たとえば、予約のリマインダーを利用することで患者が来院を忘れないようにできます。ウェルネスリマインダーも、患者に予約を取ってもらうための有効な戦略です。乳がん啓発月間などの全国的なキャンペーンは、毎年の健康診断やマンモグラフィーの予定を提案する絶好の機会です。コミュニケーション・プラットフォームを使えば、患者がクリックひとつで参加できるよう、直接リンクを貼ることも簡単です。

フロリダ州内に600以上のプロバイダーと150以上の拠点を持つMillennium Physician Groupは、メッセージを利用してビジネスを拡大し、患者の予約再取得の支援に成功しました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの初期に、医師を直接訪問することに対する恐怖や不安から、患者数が急激に減少しました。そこで患者支援プラットフォームを利用して、予約を逃したすべての患者にアウトリーチを開始し、対面診療を遠隔診療の予約として再スケジュールするオプションを提供しました。最終的には8週間以内に2000件以上の予約を取り直し、患者を再び遠隔診療の形で来院させ、収益を上げることができました。

 

2. コミュニケーションを深めるエンゲージメント 
医療におけるコミュニケーションは、予約カレンダーの管理をはるかに超えるものであるべきです。メッセージを効果的に活用することで、患者をエンゲージ、教育し、タイムセンシティブなプロセスの更新を認識させることができます。

クリニックや病院の新規患者に送るウェルカムメッセージは、初診の前でも患者を惹きつけることができます。道順と施設の地図をリンクさせることで、初めての患者が道中や到着後に迷うことなく、時間通りに正しい場所にたどり着けるようにします。

インディアナ州の医療サービスが行き届いていない人々のための連邦政府認定医療センターであるValley Professionalsは、この機能を創造的に使って、地域の人々に情報を提供し続けています。同センターでは、年間を通じて開催される教育や情報セッションについて患者に知らせています。これは簡単に登録できるリンクが付いたテキストで直接患者に送られます。

 

3. ケア向上のためのエンゲージメント 
医療においてアウトカムを改善することは金科玉条ですが、メッセージはそのための強力な手段となり得ます。医療機関はコミュニケーション・プラットフォームを利用して、患者やその家族、介護者とかかわり、特に回復期の重要な時期に、よりよいケアの調整を行うことができます。

退院できるようになったことを知らせるアラート、ケアプランの詳細をクリックできる服薬リマインダー、回復のためのリソースへのリンクを含むメッセージは、よい結果をもたらすために大きな役割を果たします。これにより、患者と医療従事者は安心し、最も重要なこと、つまり回復に集中することができます。

モンタナ州の地域コミュニティにサービスを提供するモンタナ・ヘルス・システムでは、このようなメッセージを利用して、ケアコーディネーションと患者の流れを改善しています。この医療機関では、患者が退院できるようになると介護者に通知するだけでなく、患者を迎えに行く予定時刻も聞いています。これにより、医療システムは、患者がどれくらいの時間ベッドにいるか、あるいはその人をどれくらいの時間拘束する必要があるかをよりよく理解し、リソース管理とハンドオフをより効率的に行うことができるようになりました。

4. 従業員とのエンゲージメント 
医療機関では、従業員とのエンゲージメントにもコミュニケーション・プラットフォームの機能を活用できます。医療機関ではパンデミック以来、業務量の増加や燃え尽き症候群に悩まされており、職員のエンゲージメントを高めることが最重要課題となっています。

たとえば、インフルエンザの予防接種が可能になったときに、そのお知らせと申し込みのためのリンクを表示すると、忙しい従業員からは喜ばれます。また、この機能はCOVID-19の予防接種とブースターに関するリマインダーを提供する際にも特に役立っています。メッセージは、退職金計画ポータルなどの新しいリソースや、メンタルヘルスクリニックなどの教育機会について従業員に知らせ、クリックして詳細を確認したり登録したりするオプションも提供する優れた方法です。

アヴェンナ・ヘルスケアは、個人事業主や在宅看護師、管理・運営チームなど、全国に4万人以上の従業員を抱えており、看護師、訪問看護師、事務員、オペレーションチームなど、さまざまな職種の従業員として働いています。コミュニケーション・プラットフォームを使って、COVIDのスクリーニングを行いました。これは、直接監視することができない遠隔地のスタッフに対して特に有効であることが証明されました。

エンゲージメント戦略を成功させることで、PXとEX(Employee eXperience;従業員経験価値)の両方を向上させることができます。多くの場合、シンプルなテキストメッセージを送るだけで、変化がもたらされます。コミュニケーション・プラットフォームの機能をフルに活用する医療機関は、ビジネスを合理化し、よりよい成果と顧客満足の向上を達成することができます。

 

全文は下記リンクから読むことができます。

Link:https://www.healthdatamanagement.com/articles/4-outreach-strategies-to-improve-real-time-engagement-with-patients-and-employees?id=131172

 

 

 

3. 今後の予定


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では、「第5回PXフォーラム」を12月10日(土)14:00〜17:00に開催します。テーマは、「各国の取り組みから学ぶ ~グローバルにおけるPX~」。フランス「French Patient Experience Institute」のCEOであるAmah Koueviさんによる特別講演をはじめ、PXEの第3期生が各医療機関での取り組みを紹介します。参加料は会員は無料、非会員は3000円です。

詳細および申し込みは下記リンクからお願いします!

Link:https://www.pxj.or.jp/pxforum2022/

 

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「患者・家族メンタル支援学会 第6回学術総会」が11月12日、東海大学医学部松前記念講堂(神奈川県伊勢原市)で開催されます。PXをテーマにしたシンポジウムでは、日本PX研究会のメンバー、関係者などが登壇します。登壇者およびテーマは次の通りです。

 

1.医療の質とペイシェント・エクスペリエンス

青木拓也(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター臨床疫学研究部)

2.日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会の活動

曽我香織(日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会)

3.新型コロナ・パンデミックにおけるペイシェント・エクスペリエンス

小坂鎮太郎(練馬光が丘病院総合診療科)

4.ペイシェント・エクスペリエンスとコーチング

出江紳一(東北大学大学院医工学研究科リハビリテーション医工学分野)

 

当研究会理事で、学会長を務める東海大学医学部内科学系血液・腫瘍内科学教授の安藤潔さんによる教育講演「医療と対話」をはじめ、PXの学びにつながる内容となっています。

詳細は学術総会ホームページからご確認ください。

http://smspf.org/6th/index.html

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


朝晩は涼しくなってきて過ごしやすくなってきました。秋といえばぶどう。仕事が終わって夜にふるさと納税で送られてきたぶどうを日々食べています。そしてぶどうといえばワインですね。(F)