日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.217

1.第3回PXE養成講座を開催
2.PXで重要な8つの行動
3. 今後の予定

1.第3回PXE養成講座を開催


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会は9月17日、第3回PXE養成講座を開催しました。

PXE(Patient eXperience Expert)は、医療現場や企業でPX(Patient eXperience;患者経験価値)を普及させるエバンジェリストを養成するもので、2019年度からスタート。全5回の講座ではPXとは何かといった概論、PS(Patient Satisfaction;患者満足度)との違い、入院から退院までのプロセスを患者さんの視点で俯瞰し、改善するペイシェント・ジャーニーマップの作成、患者ニーズを引き出すコーチングなどを学ぶことができます。

 

第3回講座では、「PXサーベイの実践」をテーマとし、3病院の導入事例を紹介しました。

国立病院機構九州医療センターの小児外科医長である西本祐子さんは、「以前から実施していた患者満足度調査は、結果が院内で周知されず、年間行事としてのルーティンや病院機能評価の受審のために行っていた状況でした。信憑性の高い結果をもとに現場にフィードバックし、課題がある部署と協働してPDCAサイクルを回すことが大事」と指摘。2015年からPXサーベイを実施してきた経緯や実施するうえでの準備、実際の運用について説明しました。

改善例として、出産時のお祝い膳やトイレのリニューアルにつなげた取り組みを紹介。「多部門が協働することでメッセージ性が増します。取り組みがサーベイ結果に反映されれば現場スタッフの士気は上がり、院内のPDCA活動が活性化します。あきらめずに繰り返し訴え続ける価値は絶対にあると思います」などと話しました。

 

稲波脊椎・関節病院のIT・広報部副部長の古川幸治さんは、iPadを使用してのサーベイ実施について語りました。

同院では調査期間を限定せず、全入院患者を対象としています。電子カルテのコメント機能を使ってアンケートの取得依頼を行い、退院前日もしくは退院日に患者にiPadを渡して回答してもらいます。アンケートアプリの管理ツールから定期的に回答データを取得し、課題などを検討しています。

2019年6月から開始し、2022年4月までに4305件の回答を得ています。経年比較を行い、悪い回答を選択した上位・下位10の質問内容に注目し、結果を分析しています。前年比で悪い回答が増えた項目については追跡。「部屋が清潔だったか」の問いについては、部屋単位での回答を追い、対応を図っています。古川さんは、「今後も一定期間ではなく継続してPXサーベイを実施することでPX向上に取り組んでいきます。法人内の別の病院(岩井整形外科内科病院)でもPXサーベイを展開し、両院のサーベイ結果を比較分析したいです」と今後の展開を話しました。

 

飯塚病院特任副院長の井村洋さんは、病院でPXをどう推進するかの視点から、事例発表を行いました。

冒頭で「何のためにPX活動を行うのか、何をよくしようと思っているのかをまず考えることが大事」と指摘。同院では中長期計画に、自院の強みである2.5次救急、専門医療に加えてPX向上を掲げました。PXビジョンとして、「患者・家族がすべてのプロセスにおいて『ここに来てよかった』と思える病院」を打ち立てています。井村さんは、「スローガンだけでは不十分であり、やはりどうして取り組むのかといった大義名分が必要です。当院ではTQM(総合品質管理)の視点から、顧客満足度=PXの獲得が必要と考え、計画を仕切り直しました」と振り返り、担当部署の設置や推進責任者の任命、年度ごとの具体的な目標(値)の設定など、対応について説明しました。

 

グループワークでは、①組織がPX向上に取り組むとしたら、その理由を何にしますか、②PXに取り組むうえで最初の1年の具体的な達成目標を考える――などを議論しました。PXE養成講座では毎回いくつかのワークを盛り込んで、受講生同士で話し合う場を設けています。今回は白熱した意見交換や質疑応答が行われ、盛会でした。次回はペイシェント・ジャーニーマップを作成します。その様子についてもメールマガジンで取り上げたいと思います。

 

 

2. PXで重要な8つの行動


米のPX推進団体であるthe Beryl Instituteでは、PX向上のために組織が取るべき8つの重要な行動を示しています。その8つの行動とは以下になります。

 

1. エクスペリエンス戦略の策定、指導、実行に必要な時間を確保。集中的な意思を持つ説明責任のあるリーダーを特定し、支援する

2.自分たちの組織にとってのエクスペリエンスとは何かという定義を作成する

3.強く、活気に満ちた、前向きな組織文化を確立し、強化する

4. 患者・家族の継続的な参画と地域社会とのパートナーシップのための明確なプロセスを導入する

5.スタッフ、臨床医、医療従事者の声を取り入れ、包括的かつ持続的な解決策を推進する

6.健康の公平性と医療へのアクセスに対する積極的なコミットメントを確保する

7.病気の治療だけでなく、健康、ウェルネス、well-beingを促進するために、健康上のアウトカムを重視する

8.ヘルスケアにおけるエクスペリエンスが、臨床的な相互作用を超えて、ケアに至るすべての接点におよぶことを認識する

 

優れたエクスペリエンスの達成に注力する組織は、これらの基本的な構成要素にコミットしているといいます。この指導原則はPXへの取り組みをスタートする際、またはエクスペリエンス戦略を構築する基盤を再評価・再設定する際に、基礎固めとして有用です。始めるにあたっては、▽8つの行動原則に対するコミットメントを確認し、リーダーシップを発揮する、▽組織として優先的に取り組むべき領域を決定する、▽自己評価を行い、組織のエクスペリエンス推進能力を支える基本的な問題を特定。それについて共通のコンセンサスを構築する――ことが重要だとしています。

 

全文および自己評価のアセスメントシート、the Beryl Instituteの上級副社長兼COOであるStacy Palmerさんが、エクスペリエンス向上のために組織が取るべき8つの重要な行動について話している動画を下記リンクから見ることができます。

Link:https://www.theberylinstitute.org/page/GuidingPrinciples

 

 

 

3. 今後の予定


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では、「第5回PXフォーラム」を12月10日(土)14:00〜17:00に開催します。テーマは、「各国の取り組みから学ぶ ~グローバルにおけるPX~」。フランス「French Patient Experience Institute」のCEOであるAmah Koueviさんによる特別講演をはじめ、PXEの第3期生が各医療機関での取り組みを紹介します。参加料は会員は無料、非会員は3000円です。

詳細および申し込みは下記リンクからお願いします!

Link:https://www.pxj.or.jp/pxforum2022/

 

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「患者・家族メンタル支援学会 第6回学術総会」が11月12日、東海大学医学部松前記念講堂(神奈川県伊勢原市)で開催されます。PXをテーマにしたシンポジウムでは、日本PX研究会のメンバー、関係者などが登壇します。登壇者およびテーマは次の通りです。

 

1.医療の質とペイシェント・エクスペリエンス

青木拓也(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター臨床疫学研究部)

2.日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会の活動

曽我香織(日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会)

3.新型コロナ・パンデミックにおけるペイシェント・エクスペリエンス

小坂鎮太郎(練馬光が丘病院総合診療科)

4.ペイシェント・エクスペリエンスとコーチング

出江紳一(東北大学大学院医工学研究科リハビリテーション医工学分野)

 

当研究会理事で、学会長を務める東海大学医学部内科学系血液・腫瘍内科学教授の安藤潔さんによる教育講演「医療と対話」をはじめ、PXの学びにつながる内容となっています。

詳細は学術総会ホームページからご確認ください。

http://smspf.org/6th/index.html

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


近所に玄米、野菜たっぷりのデリがあり、平日は週4日のペースで食べています。偏食、B級グルメ好きでしたが身体にいい食べものをとることの大切さが最近わかってきました。(F)