日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.282

1.第14回PX寺子屋開催!
2.リソースが限られたなかでのPXの取り組み
3.今後の予定

1.第14回PX寺子屋開催!


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会は3月9日、第14回PX寺子屋をオンライン開催しました。

PX寺子屋はPX研究会が設立当初から続けている、PX(Patient eXperience;患者経験価値)の学びの場です。毎回定番となっているPX概論は、日建設計で医療設計チームに所属し、さまざまな病院の建築プロジェクトに携わっている島崎寛さんが講師を務めました。

島崎さんはPXの定義、国内外のPXサーベイについて説明したほか、PXを推進することによるEX(Employee eXperience;従業員経験価値)への相乗効果について、「患者にかかわる業務であることからPXはEX向上の要素になる。EXの高い病院は、患者から選ばれ、優秀な人材が集まる病院で、マグネットホスピタルの実現につながる」としました。

また、空間からPXを考えるということで、海外と国内の子どもホスピスの事例を取り上げました。ホスピスでの生活に求められる体験として、「遊びの場」「学びの場」「地域とのかかわり」「家族との時間」の4つを指摘。子どもを対象としたホスピスでQOLを高めるための施設について考察し、「レスパイトだけでなく子どもの成長を支援」「ケアの充実だけでなく在宅生活を補完できる施設づくり」「利用者のニーズにカスタマイズできる施設づくり」といったキーワードを挙げました。島崎さんは、「PXを知ることでQOLの高い生活空間を提案できる可能性がある。患者にハード面を改善した空間を提供することで、病院のイメージや体験を変える可能性がある」などと締めくくりました。

今回のトピックは、「医師の働き方改革とPX」でした。PX研究会理事の安藤潔さんが講師となり、医師の働き方改革の概要および勤務実態について説明しました。主たる勤務先の1日あたりの労働時間(日直)は、9時間もしくは10時間以上が44.3%に上っており、現在の働き方について「過重労働で心身への影響が出ている、今後出そう」と回答したのは33.6%でした。

参加者でグループに分かれてのディスカッションでは、「医師の働き方改革、EX、PXの関係を整理する」「これら3つを好循環させるために必要なことは何か」をテーマに話し合いました。「医師の労働時間を減らしたが、他職種の残業が増えてしまい、離職につながっている」「業務改善と同時に、医療DXを進めなければならない」といった意見が出ていました。

次回、第15回目となるPX寺子屋は7月6日(土)開催となっています。扱うテーマなどが決まりましたら、ホームぺージもしくは当メールマガジンに掲載します。

2. リソースが限られたなかでのPXの取り組み


リソースが限られた医療機関でPX向上にどう取り組めばいいのか――。The beryl InstituteのWebに掲載されている、米国アラバマ州のウィットフィールド・リージョナル病院のPX部門のディレクター、Ashley Coplinさんの投稿を紹介します。

地方の小規模病院では、病院業務の性質、限られた財源、人員不足のため、リソースやトレーニングをタイムリーに提供することに課題があります。さらに、研修はシフトの変更やさまざまな勤務体系の従業員(常勤、パートタイム、PRN)に対応できなければなりません。当院のPX部門は今年で2年目を迎えるが、1人しかいない部署です。前述の課題があるため、PX部でも病院でも、仕事をクリエイティブに行うことが当たり前になっています。さらにPXは継続的なものであり、それに関連するリソースやトレーニングも必要です。

当院のPXツールキットは、アクセスしやすく、病院のトレーニングとリソースに特化しています。ツールキットのPXトレーニングには、ベッドサイドハンドオフ、パーパス・フル・ラウンディング、AIDETなど、臨床と非臨床の両方の内容が含まれています。このツールキットは、PXの定義、ペイシェント・ジャーニーとタッチポイント、従業員がPXに与える影響、トレーニングツール、HCAHPSやOAS CAHPSといったPXサーベイなど、PXのガイド付きです。また、患者からのフィードバックをどのように受け取り、病院の各部門に広めるかも示しています。問題発生時の従業員への期待とともに、サービスの回復についても概説しています。


チャップレンは病院に不可欠な存在であり、見過ごされがちなリソースでもあります。このツールキットは、現在のチャプレンのリストを提供し、精神的なサポートのためにチャプレンを利用することを奨励しています。さらに患者擁護者の連絡先を提供し、組織内での擁護者の役割を定義している。

ツールキットは、冊子にして各部署で共有することも、オンラインのフリップブックとして閲覧することもできる文書です。また、研修の代わりではなく、研修を補完するものです。各部門がツールキットを確実に活用できるよう、各部門責任者に対して継続的な注意喚起と連絡を行っています。各部門の責任者にレビューと編集を依頼しており、その意見を参考にしたうえで、将来的には新入社員オリエンテーションに使用したり、部門別のツールキットを開発することも検討しています。従業員向けに、理解しやすく、利用しやすく、経済的なリソースを提供することは、労働力と予算に限りのある地方の病院にとって重要です。

全文は下記リンクからご一読ください。

Link:https://theberylinstitute.org/product/patient-experience-toolkit-a-resource-for-px-departments-of-one/?mkt_tok=NzUzLVpWWC03MTYAAAGRzTcWTWtxxhW_bjQDsUZrL1BRTG9CfRJsVj3ibvqAyuKskGsZ1_Hg8708SU2jkFRxUUEIJwi8PsiI3m3qwtE538BPPCHiEOYNpk7V

3. 今後の予定


2024年度のPXE6期生の募集を開始しました。全5回で、PX概論からペイシェントジャーニーマップの作成、PXに欠かせないコミュニケーションなどを学ぶことができます。PXE同期、卒業生とのネットワークにより、PX実践につながる交流も図れます。

医療者だけでなく企業勤務の方も受講可能です。申し込みは下記リンクからお願いします。https://www.pxj.or.jp/pxe6/

※6期からはPX研究会編著の書籍『ペイシェント・エクスペリエンスー日本の医療を変え、質を高める最新メソッド』(三輪書店)をテキストとして使用しますので、受講生の方は下記から各自でご購入をお願いします。

三輪書店オンラインショップhttps://shop.miwapubl.com/products/detail/2713 

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4895908062?ref_=cm_sw_r_cp_ud_dp_TQ04SWYRV6624N0S4X4K 

※全国の書店でも購入できます。

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

編集部から


かわいい包装紙は、近所のベーカリーのもの。坂の上で並んでいたら風が強くて花粉に曝露してしまい、抗アレルギー剤を初めて処方してもらいました。花粉症の方は、あと1カ月ぐらい我慢ですね涙。(F)