1.韓国で最もPXの高い病院
2.開催まであと2カ月!PXフォーラム
3. 今後の予定
1.韓国で最もPXの高い病院
韓国仁川市にある仁荷大学校病院は今年、HIRA(the Health Insurance Review and Assessment Service;健康保険審査評価サービス)が実施した3回目のPX(Patient eXperience;患者経験価値)評価で「1位」となりました。同院は、6項目のうち4項目で90点以上を獲得しています。特に、「家族や友人に病院を勧めたいか」などを問う総合評価では、最高得点の93.29点でした。また、同院は45ある3次医療機関のなかで最高得点を獲得しています。
その理由として、「患者中心の文化をつくるための一貫した努力のおかげです」と同院の医療イノベーション本部部長で2回のPX評価にかかわった、アレルギー・臨床免疫科教授の Kim Cheol-wooさんは最近のインタビューで述べています。
同院は、PX評価がなかった2015年から専門医の医療面接コンサルティングを実施。そのほか入院・外来患者満足度(Patient Satisfaction;PS)調査を実施し、その結果をもとにシステムやサービスの改善を行ってきました。その過程で、調査会社の支援も受けています。Kimさんは、「意見を聞いて終わり」ではなく、「反省し、実践しなければならないという信念」が必要だと強調。その結果、内部から変化を起こすことができたと言います。
同本部は、患者中心の活動やPXを担当する「サービスイノベーションチーム」、患者の安全や質の向上を担当する「バリューイノベーションチーム」、保険請求や出費削減の管理を担当する「オプティマルトリートメントチーム」という3つのチームで構成。この3つのチームは、いずれも病院の中核をなす部門であり、多くの仕事をこなしていました。そのため、短期的な目標達成にこだわるのではなく、それぞれの分野でエキスパートになる機会を与え、病院のシステムを改善することに重点を置きました。
「その結果、どのチームもそれぞれの分野で良い結果を出すことができました。私たちは、PX評価で良い成績を取るために短期間で準備したわけではありません。病院は「PXと患者中心の文化」を作るために継続的な努力をしており、“韓国No.1”の称号はその当然の帰結であったように思います」とKimさん。
前2回と比較し、3回目で高い評価を得たのは、継続的なモニタリングとフィードバックに重点を置いたことだと言います。PX評価を3回実施したことで、受審に向けた準備の具体的な事例が共有されました。「何をしたらいいか 」ではなく、「それができているか 」を継続的にモニタリング、管理することが重要でした。
同院では、さまざまな満足度モニタリングを行っています。特に、PS調査は、PX評価のサイクルに関係なく、毎日実施しています。これらのモニタリングから、根本的な問題解決やシステム改善の提案を行っています。例えば、オーダーメイドの指導計画を立てて教育を行い、サービス向上に役立てるなどといったことです。Kimさんは、「このような客観的かつ継続的なデータ管理は、PX評価の準備の何が問題で、何を完成させるべきかを職員に理解させるのに、とても役に立ったようです」と話します。
また、院内のモニタリングとは別に、客観性や専門性を高めるため、外部調査会社を利用してサービスの質を検証しています。評価項目によるPSにとどまらず、予約から帰宅までの滞在全体の評価、他院でのエクスペリエンスとの比較・分析、患者さんの根本的な不便さの把握、自院のメリット・デメリットの確認など、より包括的な調査を行っています。
PS調査はPX評価のためだけではないので、2年ごとのPX評価に関係なく、毎年実施しています。また、入院、外来、検査、救命救急センター、集中治療室など、サービス全般のモニタリングと評価も行っています。その結果は部門トップはもちろん、全職員で共有し、問題意識と改善意欲を植えつけています。また、役員報告を通じ、積極的なリーダーシップから派生する業務の改善にも取り組んでいます。
PX評価が病院に与えるプラスの効果、評価方法を含めて改善すべき点として、「評価結果をもとにランキングしたり、数値的に見たりすることに限界があるかもしれません」とKimさんは指摘します。PXは他の評価と異なり、患者さんのエクスペリエンスに対する「客観的な意見」に基づいて、患者さん「自身」が行うものだからです。
また、病院の規模や評価にかける時間や費用によって、結果が異なることは今後も考えていく必要があります。質問によっては、内容がわかりにくかったり、主観的な要素が多すぎたりします。疾患の種類や重症度、患者の特性によって評価点が異なるのは当然です。従って、PX評価の妥当性を継続的に評価・補足していくことが必要となります。さらに、すべての医療機関がより良いPXを目指して努力できるように、評価結果を医療機関の種類ごとに評定したり、レベル分けしたりして、単純なスコアリングによる問題点を補完する必要があります。
PX評価は、各医療機関の考え方によって、さまざまな形で用意されているようです。単に「評価」を意識すれば、”スコアカード “だけを見ることになります。しかし、これを機にどのようなプラス展開ができるかを考えれば、現場がPXに目を向けることになるのです。さまざまな評価ツールを開発・補完することは、患者さんの「真心」に少しでも近づき、PXを根本的に改善することにつながります。
「当院のスタッフは全員、現場に必要な研修をすべて修了し、資格を持ったプロフェッショナルです。その専門性は高い知識、倫理観、責任感に基づいて患者の価値観を尊重し、患者を中心とした適切な治療を行うことによって認められます。病院のメンバー全員がこの流れを理解し、参加できるような組織文化の向上が必要です」(Kimさん)
韓国のヘルスケア分野などのニュースを配信する、Korea Biomedical Reviewの記事全文は下記リンクから読むことができます。
Link:http://www.koreabiomed.com/news/articleView.html?idxno=14730
2. 開催まであと2カ月!PXフォーラム
日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では今年も「PXフォーラム」を、12月10日(土)14:00〜17:00にオンライン開催します。
PXフォーラムは、PXの認知度向上のためのイベントとして、2018年から毎年開催しています。
第1回、第2回フォーラムでは、PX研究会が発足当初から取り組んできたPXサーベイの開発と実施事例を中心に、PXについて紹介しました。昨年の第4回は、「変革から成熟へーWithコロナ時代のPXがもたらすものー」をテーマに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の先進的な取り組み事例を紹介。コロナ禍でのPX対応について考える場としました。
5回目となる今回は、「各国の取り組みから学ぶ ~グローバルにおけるPX~」をテーマに設定しています。
当メールマガジンではPXに関連する話題を紹介していますが、その多くが海外発信のものです。海外事情、事例を知ることで、日本でのPX導入・改善にもつながっていくと考えます。ゲストにフランス「French Patient Experience Institute」のCEOであるAmah Koueviさんを招いての特別講演を行います。また、日本での先進事例についても発表します。当研究会が認定するPXのエキスパート、PXE(Patient eXperience Expert)の第3期生が各医療機関での取り組みを紹介します。
参加料は会員は無料、非会員は3000円です。多くの方とPXについて語り合える場にしたいと思います。詳細および申し込みは下記リンクからお願いします!
Link:https://www.pxj.or.jp/pxforum2022/
3. 今後の予定
PX研究会のオンライン勉強会「第10回PX寺子屋」を11月26日(土)12:30-13:30に開催します。内容は以下になります。
PX概論 やまと診療所医師 松本 卓
「PX・EXを高めるスマートホスピタル実現に向けた取組のご紹介」
大成建設デジタルファシリティソリューション室 小倉環
参加費1000円(会員は無料)でどなたでも参加できます。下記リンクから申し込みください!
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「患者・家族メンタル支援学会 第6回学術総会」が11月12日、東海大学医学部松前記念講堂(神奈川県伊勢原市)で開催されます。PXをテーマにしたシンポジウムでは、日本PX研究会のメンバー、関係者などが登壇します。登壇者およびテーマは次の通りです。
1.医療の質とペイシェント・エクスペリエンス
青木拓也(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター臨床疫学研究部)
2.日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会の活動
曽我香織(日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会)
3.新型コロナ・パンデミックにおけるペイシェント・エクスペリエンス
小坂鎮太郎(練馬光が丘病院総合診療科)
4.ペイシェント・エクスペリエンスとコーチング
出江紳一(東北大学大学院医工学研究科リハビリテーション医工学分野)
当研究会理事で、学会長を務める東海大学医学部内科学系血液・腫瘍内科学教授の安藤潔さんによる教育講演「医療と対話」をはじめ、PXの学びにつながる内容となっています。
詳細は学術総会ホームページからご確認ください。
http://smspf.org/6th/index.html
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※【お知らせ】日本PX研究会について※
年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。
編集部から
先週末、友人に誘ってもらいコロナ禍で初のライブに行きました。仕事で睡眠がほぼとれていなかったのですが、きれいな音にすっかり引き込まれ眠気にも襲われず楽しめました。子どものころに人気だったアーティストなので懐かしくもありました。(F)