日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.256

1.思いやりと共感を生む6つの方法
2.体験レビューを依頼するタイミングは?
3.今後の予定

※配信が遅れましたことお詫び申し上げます。

1.思いやりと共感を生む6つの方法


コミュニケーションの強化、アクセシビリティの向上、退院プロセスの改善などは、病院が患者に共感を示し、結果として安全性を向上させることができる6つの方法について、北米の医療キャンパスなど公共の安全などに関するサービスを提供するCampus Safety Magazineの記事を紹介します。

病院は、患者が最も傷つきやすい時期にケアを行います。患者やその家族は、しばしば不安、恐怖、疲労、不確実性などを抱えています。このため、思いやりと共感は、患者の最適なアウトカムを生み出すうえで、医療技術や知識と同じくらい重要です。また、患者の満足度、スタッフの士気、全体的な安全性を向上させるためにも不可欠となります。

優れた“ベッドサイド・マナー”を持つ熟練した医療従事者を雇用することに加え、病院環境において思いやりと共感を優先する文化を創造し、安全性を向上させる最善の方法の一つは、これらの価値をサポートすべく院内施設をアップグレードすることです。

患者にもスタッフにもより良い体験を提供できるように、病院施設を改善する方法は次の6つです。

1.誰もが歓迎される環境を作る

患者は、ドアを入った瞬間から歓迎されていると感じるべきであり、快適で心地よい内装にすることが大切です。パブリックエリアや病室にアートや観葉植物などのテイストを加えることで、より温かく思いやりのある雰囲気になります。ちょっとした個性やアメニティ、例えばエンターテインメントのインフラを整えたり、さまざまな食事に対応できるように選択肢を充実させたりすることで、大きな効果が期待できます。
出迎える人がいれば、サポートされていると感じ、患者や家族は探しているものをすぐに見つけることができます。たとえば建物の近くに駐車するのが難しい場合は、無料のバレーサービスを利用することで患者のストレスを軽減することもできます。来訪者や患者を適切に選別することができるため、常駐してサポートできる体制を整えることは、セキュリティの向上にもつながります。

2.コミュニケーションの強化と重視
典型的な病院環境では、誤解やコミュニケーション不足がしばしば問題となります。多忙な医療提供者は、患者に必要最低限の情報しか伝えないことが多く、それがそっけない態度や無愛想な態度に映ることもあります。思いやりのあるコミュニケーションを重視することは、患者を安心させ、不安を取り除くために不可欠です。

翻訳サービスを提供し、病院のある地域で一般的な複数の言語を含むように看板を更新することは、患者や家族が、患者の健康状態や個々のニーズに関する重要な情報を受け取りやすくするのに役立ちます。また、患者と母国語でコミュニケーションできることは、患者の安心感にもつながります。

3.アクセシビリティの向上
アクセシビリティの問題に悩む患者の多くは、自分のニーズに合った思いやりのあるケアを受けることができないことが多いです。患者に対する真の思いやりとは、言葉の壁があろうと、障害があろうと、移動に問題があろうと、患者がサポートを受け、必要なサービスにアクセスできるようにすることです。

病院内は、患者が医療者とコミュニケーションを図り、効率的に移動できるように整備されていなければなりません。スロープ、便利なエレベーター、点字の標識などはすべて、思いやりと共感の文化を支えるアクセシビリティ向上の例です。一般的にアクセシビリティの問題に直面する人々への思慮深い配慮は、彼らの全体的な経験と満足度に大きな違いをもたらすでしょう。

4.医療提供者の協働の促進
個々の患者のために協力してケアを提供する医療従事者は、より良いアウトカムを促進し、より個別化された入院患者のケア経験を生み出すことができます。医師や看護師がそれぞれのサイロで活動しているようだと、患者は重要な情報を何度も説明しなければならないように感じたり、薬の相互作用のような問題を心配したりすることになります。また、医療提供者が患者全体の健康に投資していないように感じさせます。

スタッフ間のコミュニケーションに優れた技術を与えることで、PX(Patient eXperience;患者経験価値)と患者のアウトカムに大きな違いをもたらすことができます。その1つの方法として、安全なクリニカル・メッセージング・アプリを使用してコラボレーションを促進し、効率化することが挙げられます。医療従事者は、ケアプロセスの事務処理面を効率化するモバイルデバイスにアクセスできれば、互いにコミュニケーションを取りやすくなます。

患者の記録にアクセスし、他の医療従事者とコミュニケーションを取ることができれば、ミスを防ぎ、異なるワークステーションを行ったり来たりする時間を短縮し、他の医療従事者や患者とのコミュニケーションを向上させることができます。このような技術インフラの改善には、機密データを保護するための強固なサイバーセキュリティ戦略も必要です。病院が患者に遠隔監視サービスを提供できることで共同作業を促進し、何か問題が発生すれば医療提供者が知らせてくれるという安心感を患者に与えることができます。

5.患者の退院プロセスの改善
退院を控えた患者の中には、行き場のない人もいます。たとえ直接家に帰れたとしても、本人や介護者は、自宅で自分の健康を管理する準備ができていないと感じることが多いです。

オートメーション化により、病院施設は退院プロセスを大幅に改善することができます。患者の紹介時にソーシャルワーカーにかかるプレッシャーを軽減し、一元化されたシステムで患者のベッドコントロールを自動更新することで混乱を減らし、プロセス全体をより効率的にすることができます。これらのシステムはまた、退院計画を作成したり、患者の回復をサポートするフォローアップスケジュールを作成したりするのにも利用できます。

6.医療にケアを
多忙な病院環境では、思いやりと共感が後回しにされることがあります。しかし、管理者はPXを重視する文化を作るためにできることは何でもすることが重要です。

最も弱い立場の患者をサポートする仕組みをアップグレードし、医療従事者が思いやりのあるケアに集中できるような、より効率的なワークフローを構築することで、患者はストレスを最小限に抑えた個別化された体験を受けることができます。入院生活は常にストレスの多いものですが、このような改善は患者にとってもスタッフにとっても、より良い経験となります。

全文は下記リンクからお読みください。

Link:https://www.campussafetymagazine.com/hospital/6-ways-hospitals-can-foster-a-culture-of-compassion-empathy/

2. 体験レビューを依頼するタイミングは?


カスタマーに商品の購入や体験についてのレビューを依頼するベストなタイミングはいつなのかーー。PXサーベイ(調査)の実施と、結果の回収タイミングにもつながる興味深い記事がThe Wall Street Journalに掲載されていましたので紹介します。

アリゾナ州立大学W.P.キャリー・スクール・オブ・ビジネスで情報システムの准教授を務めるSang-Pil Hanさんによると、「すぐに何かを求めることは、顧客の主体意識を脅かし、顧客離れを引き起こす可能性がある」と指摘します。Sangさんと、ネバダ大学ラスベガス校リー・ビジネス・スクール助教授(ビジネス分析学)のMiyeon Jungさんは、韓国の2つのオンライン・マーケットプレイスと共同で研究を計画しました。

最初の研究では、商品購入や体験の翌日、5日目、9日目、13日目という、レビュー依頼のための4つの明確な時間を設けました。「こうすることで、早期回答者と後期回答者が重ならないため、潜在的な干渉が効果的に緩和されました」(Sangさん)。レビューを書くようにというリマインダーは、各グループの半数にランダムに送られ、残りの半数は対照グループとなった。


対照群では、何の働きかけもないため、消費者のレビュー投稿率は時間の経過とともに低下する、とSangさんは言います。 体験の1日後は約12%、5日後は6%、9日後は2%、2週間後は1%でした。基本的には3~4日ごとに半減していきました。

結果は、ナッジを受けたグループによって著しく異なりました。最初の研究で、プラットフォームでの体験を終えてから1日後に依頼を受けたグループの投稿率は6%で、1日後の後押しが有害であることを示しています。この場合、ナッジを送らず、消費者自身の意思に任せたほうが良いことを示しています。しかし、9日後の回答率は3%、13日後は2%でした。

「回答率は依然として低下していますが、より緩やかになっています」とMiyeon さんは指摘します。「2週間後だけを見れば、レビュー率は2倍になりました」

この研究を韓国のオンライン・アパレル市場で再現しましたが、パターンは同じでした。どちらの研究でも、リマインダーのタイミングはレビューの質や内容に影響を与えませんでした。


Miyeonさんは、「調査結果は、レビューの依頼に万能な戦略はないことを示唆しています。企業は、顧客が後押しをせずにレビューを投稿するまでに通常どれくらいの時間がかかるかを調べ、それを出発点にするべきです。その閾値より前にリマインダーを送るのであれば、それは早すぎます」と言います。

「マーケティング担当者は、デジタルナッジを検討する際に、提供する商品のタイプも考慮に入れるべきだ」とSangさんは話します。家具やテレビのような長期的な利益をもたらす商品の場合は、顧客が商品の価値を評価するまでには通常ある程度の時間がかかるからです。

さらに、マーケティング担当者は顧客の属性を考慮する必要があります。「我々の結果は、これらのメッセージが顧客の自主性と自由を侵害していると感じる可能性があり、オンラインですべてを行うことに慣れている若い顧客を持つ企業にとっては迅速なリマインダーが特に悪いことを示しています」(Sangさん)

結局のところ、遅延リマインダーは、時間が経つにつれてレビュー投稿の可能性を著しく高めるといいます。通常、マーケティング担当者が各顧客の購入日とレビュー投稿日を調べ、2つの日付の間の平均時間を計算すれば、リマインダーを送る適切な時期がわかるとのことです。

Link:https://www.wsj.com/articles/customer-reviews-best-timing-31bfd8df?mod=series_customerexperiencenav

3. 今後の予定


PX研究会では今年から新たにEX(Employee Experience;従業員経験価値)講座を開講します。

EXは医療現場で働く人が経験する、すべての体験を指します。EXを高めることで組織目的の達成のためのエンゲージメント向上、従業員のwell-being向上、患者へのよりよいPXにつながるとされています。実際に、海外の知見ではEXとPXの関連性が示されています。講座ではEXの定義、EXを高めるうえでどのような視点が重要なのか、医療期間でどのような取り組みができるか、そしてPXとの関連性について初学者向けに解説します。

申し込みは下記リンクからお願いします!

https://www.pxj.or.jp/ex/

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

編集部から


多忙が重なり、2023年はあっという間に過ぎてしまいそうです。写真は、卯年にちなんで最近飲んだワインです。(F)