日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol. 29

1. 「患者協働の医療を推進する会」で曽我代表理事が登壇
2. 〔連載〕各国のPXサーベイ~第22回 サウジアラビア・UAE(後編)~
3. 第1回PXフォーラム紹介(スペシャル企画など)

1. 「患者協働の医療を推進する会」で曽我代表理事が登壇


10月14日、東京大学医学図書館において 患者協働の医療を推進する会(AMCOP;Association of Advancing Medical Collaboration with Patient )が主催するイベント「いまこそ、患者協働の医療の実現を!2018」が開催され、日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会の曽我香織代表理事が登壇しました。

AMCOPは、医療にかかわる患者、医療者、支援者などが立場を超えて、より良い医療を実現するために立ち上げた団体です。「『医療をかたち作るのはすべての人々である』という考え方が広く浸透し、それに基づく医療が当たり前に行われている社会の実現」をビジョンに掲げ、定期的にイベント等を開催しています。

今回のイベントのサブテーマは、“違いを知る・自分を知る”。約50人が参加し、基調講演、活動事例発表、パネルディスカッション、「患者協働」から医療を変える手かがりを探るワークショップなどを通じて、医療コミュニケーションについて深掘りする機会となりました。

フリージャーナリストの村上和巳さんは講演のなかで、イラクやキューバなど海外の医療事情と、患者と医療者との関係性について紹介。「これからはコミュニケーションがより重要となるので医療者に共感がないと通用しない。医療者が患者の“翻訳者”に、患者は自らの“第2の主治医”になってほしい」と話しました。

「患者協働の医療」の実現に向けた活動についての事例発表、パネルディスカッションで登壇した曽我代表理事はPXの概要およびPX研究会の活動を報告。パネルディスカッションでは複数名から対患者コミュニケーションの重要性に関する質問やコメントが寄せられるなど、PXへの関心の高さがうかがえました。

https://amcop.jimdofree.com/

 

2. 〔連載〕各国のPXサーベイ~第22回 サウジアラビア・UAE(後編)~


前回はサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)でPXサーベイが行われた背景について紹介しました。

クイズは、患者のPXに大きな影響を与える要素について聞きました。次のうち、要素に含まれない1つを選ぶというものでした。

1.食事と入院施設

2.家族への対応

3.看護師の対応

答えは、2.家族への対応 でした。病院での患者経験においては、家族が大きな役割を果たすことに前編で触れていたこともあり、今回は難しかったと思いますがいかがでしたか。

患者のPXに影響を与える要素として、上記の1、3の他に「入院料金」「患者個々のケアのとらえ方」「医師の対応」「総合評価」の4つが挙げられています。

特に、看護と患者個々のケアのとらえ方については強い相関があると分析しています。いい看護を受けることで、病院でのさまざまなケアを肯定的にとらえられるようになるということです。中東では看護師の職業的地位が低いということでしたが、看護がPXに大きく影響することが明確になれば今後変わってくるかもしれません。

PXに影響を与える要素として家族は含まれていないものの、中東の文化では家族という要素が重要であると指摘されています。病院では、患者だけでなく家族も快適さを感じることが患者自身の行動や認知に大きくかかわるとしています。

今回紹介したサウジアラビアとUAEのPXサーベイは2015年4月〜2016年3月の期間に、5つの私立病院で実施されたトライアル版です。研究の考察では、公立病院や軍病院などでの実施、ケアの質や病院機能を問うような項目を立てること、他の患者満足度などのスケールとの比較が必要だと指摘しています。今後の取り組みにも注目していきたいですね。

Journal of Survey Statistics and Methodology, Volume 5, Issue 3, 1 September 2017

 

3. 第1回PXフォーラム紹介(スペシャル企画など)


PXフォーラムの趣旨にご賛同いただいた企業を紹介する企画の2回目は、株式会社ホギメディカルマーケティング課の坂本正宏さんに、企業としての取り組みやPXについて、Q&A形式で回答いただきました。

 

Q  貴社が感じられる、医療従事者および医療機関が抱えている経営視点での課題や問題点は何でしょうか。

A 変化していく医療提供体制や、それに連動する診療報酬に対してどのように病院経営の舵を取るか、収益を安定させるかが課題だと考えます。地域医療連携における自院の存在価値を見つけ、ポジションを確立することが必須ではないでしょうか。そのためには、地域でいかに愛される病院になるかが重要であり、医療サービスを受ける患者さんの満足度を高めていくことがその対策となります。一方で、医療サービスを提供する職員の満足度も高めていかなければ、経営面からすると不十分です。医療の質と効率性向上を両立・推進させることが、真の課題だと考えています。

 

Q  初めてPXについて聞いたときの印象と、どういったところに興味を持たれましたか。

A 治療以前の、医療の本質的な部分に焦点を当てた取り組みという印象をもちました。高度急性期ならびに急性期病院の在院日数を短縮させて収益を拡大するという厚生労働省の方針があり、患者さんは回復期・慢性期病院への早期の転院を余儀なくされます。急性期では治療成果も重要ですが、短い滞在期間のなかで患者さんの精神的なフォローに至れるかが課題だと思います。そういった課題に対し、PXは具体策を見いだす重要なツールになるのではないかと感じています。

 

Q  PX向上および患者を中心とした医療の実現に向けて、貴社としてどのようにかかわりっていきたいと考えていますか。

A 当社は高度急性期、急性期の医療機関に対し、370名の営業員がサポートしております。なかでも、手術室の改善システムを導入頂いている施設様においては経営者ともたびたび面会し、医療の質と効率に関して相談を受けることも多くあります。今後、病院経営者や職員向けに、「患者中心の医療」の考えを紹介するセミナーの開催や、機関誌など当社の販促媒体を通じて、医療の本質、患者さんの経験や視点の捉え方などについて有益な情報を発信していけたらと考えております。当社としては日本の医療に貢献し、ひいては企業イメージを向上できればと考えております。

 

株式会社ホギメディカルは院内感染防止をテーマに掲げ、滅菌バッグや手術用不織布製品、キット製品など病院の安全に貢献する製品提供を主とした医療機器メーカー。近年では、手術室の運用をシステムで管理する「手術室マネジメントシステム」で経営改善のソリューション提案を行っています。

昨年、新たなキット製品「PBKIT」の専用工場を立ち上げ、今まで以上に多くの物品をKITに投入できるようになりました。手術室スタッフの業務効率が飛躍的に向上できるようになっただけでなく、間接業務の軽減にもつながります。機器やソリューション提案を通じて、職員満足度の向上にも貢献したとい考えております。

手術室関連の製品について説明するマーケティング課の坂本正宏さん

株式会社ホギメディカル

 

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第1回PXフォーラムの開催が近づいてまいりました。

参加を希望される方は、お申し込みフォームからお願いいたします。尚、本日で懇親会の参加申し込みが〆切となりますので、検討されている方はお急ぎください。

各講演、事例紹介の抄録につきましてはホームページ上で公開しています。

 

第1回 PXフォーラム 医療の質の「未来」を創る

 

あと10席!

第1回PXフォーラム ~医療の質の「未来」を創る~

11月3日(土)13:30-17:30(開場13:00-)

秋葉原UDX(JR秋葉原駅徒歩2分)

演者:

青木拓也(京都大学大学院医学研究科 医療疫学分野家庭医療専門医・指導医)

安藤 潔(一般社団法人日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会 理事/東海大学総合医学研究所所長 東海大学医学部血液・腫瘍内科教授)

井村 洋(飯塚病院 特任副院長)

曽我香織(一般社団法人日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会 代表理事/株式会社スーペリア 代表取締役)

中澤 達(北里大学大学院 医療マネジメント教授)

西本祐子(国立病院機構九州医療センター 小児外科医長/メディカルコーディネートセンター副センタ―長)

引田紅花(前橋赤十字病院 総務課広報広聴係主任)

藤井弘子(一般社団法人日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会 メディア統括マネジャー)

 

※【お知らせ】日本PX研究会について※
会員登録につきましては、2018年11月4日から有料とさせていただきます。

 

編集部から


先日ハロウィーンパーティーなるものに初めて参加してきました。最近では、日本でもハロウィーンがすっかり定着してきましたよね。イベントが増えることは町がにぎやかになり楽しいですが、せっかくなら日本古来のイベントをもっとフューチャーしてもよいのでは、とも感じます。七夕なんか若者受けもよさそうですし、もっと盛り上げてもよいのでは。(K)