第20回 5月12日(土) プライマリ・ケアにおけるPX活用/退院調整とロボット

5月12日に開催した第20回勉強会では、京都大学大学院医学研究科医療疫学分野の青木拓也先生をお招きし、「プライマリ・ケアにおけるPXの活用~実践と研究の両輪~」をテーマに話を聞きました。
青木先生は、プライマリ・ケア分野でのPXの国際的尺度である「PCAT (Primary Care Assessment Tool)」の日本版サーベイ「JPCAT(Japanese version of PCAT)」を開発。すでに100以上の医療機関で活用されています。「PXを測るとき、実践するときに学術的な視点は欠かせない」と指摘したうえで、PXの重要性と測定方法について解説しました。

 

PXを「患者中心性(患者の意向、ニーズ、価値に応じたケアの提供)の質の指標」とし、医療が扱う疾病構造の変化(疾患で定義できない問題)や全人的理解、個別化の重要性、さらに患者と医療者との関係性の構築・協働が求められるなかで重要になってきていると指摘。PXが患者行動、ひいては健康アウトカムといった、ほかの質指標や概念に影響を及ぼすという意味でも重要だといいます。
日本のプライマリ・ケア・セッティングに合わせたJPCATの開発の経緯についても説明があり、どの領域のPXを測定したいかを明確にしたうえで、標準化した尺度を設けて評価項目を設定したとのことです。
青木先生らによるJPCATを用いた研究では、良質なPXが患者の受療行動に好影響を及ぼすことが示されました。「サーベイだけでなく患者インタビューなどを組み合わせる、分析結果を他施設と比較するには年齢、健康状態やQOLなどPXに影響が及びやすい患者要因のスコア補正が必要ではないか」とPXの測定課題を挙げています。

利用者ニーズに応えた保険外サービス

また、PX研究会の世話人で株式会社ホスピタリティ・ワンの代表取締役の高丸慶さんが、自社で提供する訪問看護の保険外サービスと、千葉大学との共同によるコミュニケーションロボットを活用した遠隔医療の実証研究の取り組みを紹介しました。
高丸さんの会社では末期がんの利用者に対し、看取りから葬儀後の家族のケアまでを含めたオーダーメイドの終末期サービスなど、PXの視点に立った事業展開を行っています。「施設から地域へ」という地域包括ケアシステムを推進する国の施策から、公的介護保険外市場の潜在ニーズのとらえ方やICT活用による退院調整の支援についての先進事例を話してくださいました。