第22回 8月18日(土): CXからPXを考察/摂食嚥下リハ学会研修報告

PXとは何か、という本質に迫る

研究会を立ち上げて22回目となった勉強会は、PX(患者経験価値)とは何か、自分たちの足元を見つめ直す機会となりました。

最初に医療の質とPXとの関係について、日本PX研究会理事の安藤潔理事からレクチャーがありました。米国医学研究所が2001年に提唱した、医療の質改善に必要な6つの要素について説明があり、そのなかの1つに「患者中心性」が含まれています。患者中心性とは患者の意向・価値・ニーズを尊重することで、イコールPXとなります。PXは医療の質を評価する指標であり、医療者が生き生きと働き、かつ患者ニーズにも対応するための改善につながっていくものです。

PXは企業におけるCX(Customer eXperience;顧客経験価値)から派生した言葉。CXからPXを考えてみようということで、曽我香織代表理事が解説とワークを担当しました。

CXとCS(Customer Satisfaction;顧客満足)との違いは「結果志向」「プロセス志向」とのこと。PXとPS(Patient Satisfaction;患者満足度)との違いも同様で、PXは患者がいつ、どこで、どのような経験をしたかというプロセスを評価する一方、PSは結果を評価するものだとされています。「プロセスがあるからこそ結果がついてくるともいえる。PXに注意を払えば自然と満足が生じる」と曽我代表理事は指摘。さらに一人ひとりの付加価値を見つけたうえでニーズに応えることが、CXと同じようにPXでも重視されると説明しました。

ワークでは、CXにおける顧客視点について学びました。全顧客が共通して期待するもの(顕在ニーズ)と顧客によって異なる付加価値(潜在ニーズ)があり、参加者全員がスターバックスでの自身の経験から顕在、潜在ニーズを考え、さらにPXに置き換えたうえで患者にとっての価値とは何かを話し合いました。

PXにおける潜在ニーズについて、安藤理事は「病院はできればかかりたくない場所である一方、入院することで健康のありがたさや家族の支えを感じたことが大事となることもある。そういった潜在ニーズ、プロセスを引き出すにはNBM(Narrative Based Medicine;物語と対話に基づく医療)が欠かせない」と説明していました。

「あなたにとってのPXとは何か」。参加者一人ひとりが考え、導いた答えとして次のようなものが挙がりました。

・患者ニーズをあぶり出すもの

・双方のQOLとQOTを高める

・新しいことに気づかせてくれる

・病院で働くうえで大事なもの、患者さんとつながるもの

・予想外の価値を越えた共感・愛着・信頼の道しるべ

・QOLの原点

・患者と能動的にかかわれるもの

・患者と医療者が思いやりをもって接することができる特別なもの(スペシャリティ)

勉強会では毎回、参加者同士で話し合い、さまざまな意見を出し合うことを大事にしています。今回のワークは、一人ひとりが考え、他者の考えを知ることでPXへの理解がより深まったことが実感できました。

勉強会前には研究会メンバーの名刺授与式を行いました。11月3日の第1回PXフォーラムに向けて各メンバーが役割分担し、イベントを盛り上げていく所存です!

 

多職種連携の研修でPX導入

出江紳一理事からは、日本摂食嚥下リハビリテーション学会が主催し、12回にわたって開催された研修の報告がありました。

研修は多職種連携を実践する人材育成モデル事業として、同学会会員の医師・歯科医師や看護師、言語聴覚士、管理栄養士、歯科衛生士など50人が受講。対職員・対患者コミュニケーションに必要なコーチングを学んだほか、PXを活用し、チーム医療が患者にもたらす影響について考察する試みも取り入れられました。

多職種連携でPXを導入したことについて、出江理事は「PXはコーチングによるコミュニケーションスキルが活かされたかどうかのアウトカム、指標になる。PXを理解することがアウトカムを上げるのに重要だとも言える」と説明しました。受講者の有志が勤務先でPXサーベイを行う予定もあり、今後、医療現場でPXが実践されていくムーブメントになるかもしれません!?

勉強会後は「納涼会という名の懇親会」を開催しました。初参加の3人がその場で会員となっていただくなど新たな仲間が加わり、日本PX研究会はパワーアップしました。会員は随時募集しています