日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.174

1.医療データの相互運用性とPX
2.PXの3つの側面
3. 今後の予定

1.医療データの相互運用性とPX


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックのなかで、医療データの重要性が再認識され、データの相互運用性の向上はPX(Patient eXperience;患者経験価値)も向上するーー。Google Cloudのプロダクトマネジメントディレクター、Joe Corkeryさんの投稿を紹介します。

 

患者データは数十年にわたって、サイロ化されたシステムのなかに閉じ込められています。そのため、医療従事者は患者の健康状態の全体像を把握するため、情報のさまざまな断片を複数のソースから探すことを余儀なくされています。このようなデータ相互運用性が欠けていることで、治療にかかる時間とよい治療を提供することにも悪い影響が出ています。

Google Cloudでは米国の医師300人に、データ相互運用性の影響について調査を実施。96%が重要な情報へのアクセスがもっと簡単にできるようになれば、患者の救命につながるという考えに賛同。95%が患者アウトカムの改善、86%が診断にかかる時間を大幅に削減できるとしています。すでにデータ相互運用性への対応を図っている医療機関に勤務する医師の95%が、質の高い医療を提供するうえでデータ相互運用性が役に立つと回答しました。

調査からわかった4つの重要なことの1つに、医療データの相互運用性は患者のPXと予後を改善するとしています。92%がテクノロジーはPXの改善によい影響を及ぼしているとし、患者データへのアクセスの改善は患者とのコミュニケーションを強化できる(60%)、リスクの高い患者をすぐに特定できる(59%)などと回答しています。

また、データ運用の効率性を上げることにより、個々の患者に合わせた医療提供にもっと多くの時間を割きたいと答えた医師は91%。また90%が、患者の診療記録のレビューや更新に使う時間を5%減らすことができれば、個々の患者への医療提供ができる機会を増やせるとしています。

米国のCMS(the Centers for Medicare and Medicaid Services)ではデータの相互運用性と患者アクセスのポリシーとルールが設定されています。日本でもEHR(Electronic Health Record;電子健康記録)の共有・活用が以前から言われています。PX向上につながるという指摘は興味深いですね。全文は下記リンクをご一読ください。

 

Link:https://cloud.google.com/blog/topics/healthcare-life-sciences/google-and-harris-poll-healthcare-interoperability-survey

 

 

2. PXの3つの側面


PXは多面的、知識であり実践的なものであり、概念でもあるが、「ケアを受けている患者にとってPXとは何か?」という本質的な部分を見失ってはいけないーー。米国のPX推進団体「The Beryl Institute」のバイスプレジデント、Tiffany ChristensenさんがPXの専門家ではなく患者としての視点からPXの3つの側面について語っています。

 

1.身体的な強い痛みや症状といった個人的経験はあらゆる注意を引くことができる

患者が物理的に難しい、または不可能なことをするように言われるのは珍しいことではありません。腎臓が機能しなくなり、極度の吐き気の症状があった時、話すのは非常につらく、努力が必要でした。この2日間にスタッフや臨床医など出会ったすべての人のうち、うなずいたり親指を立てるサインで返答するように言った医師は1人だけでした。そのほかの人は口頭で返答するように私に頼み、多くの場合、私がうまく応じられないことに目に見えてイライラしていました。

 

2.人生にとって意味がある、身体的症状に対する感情的・心理的な反応

病気やけがをした時の感情的側面を経験すると、すべてを使い果たしてしまう可能性があります。仕事を辞めたり、痛みを伴って動いたりしなければならないかもしれないという不安は、患者にとって診察の待ち時間や医師とのコミュニケーションよりも重要なことかもしれません。心配や恐れといった感情に乗っ取られたことが、患者が心を閉ざし、何かを思い出すことに苦労したり、行動の異常な変化があったりする理由かもしれません。

 

3.予約や処方箋の受け取り、計画の変更、さまざまな専門家に会うためのジャーニーなど個人的なタスクまたはアクション

患者であることに伴うタスクは、身体状態が悪化するにつれて大きくなります。多くの場合、患者が患者であることは「フルタイムの仕事」のようなものだといいます。PXの側面から考えると、これらのタスクは時間がかかり、圧倒的で、非常にイライラさせるものになる可能性があります。ほとんどのスタッフや医師が見ることがない、患者であるという「生きた経験」ですが、自分自身のためにケアをすることが大部分を占めるということです。

 

医療機関で一生懸命働いていると、医療機関が患者のために設計されたことを忘れることがあります。患者として身体的、心理的、そしてタスク指向の側面に対応していて、こういった認識がない場合は、混乱を招いたり、人を傷つけたりといった断絶を生み出す可能性があります。PXの3つの側面を念頭に置き、注意を払い、認めることは思いやりを示し、コミュニケーションを開くのに大いに役立ちます。

 

Link:https://www.theberylinstitute.org/blogpost/947424/375972/Three-Dimensions-of-Patient-Experience

 

3. 今後の予定


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では「第4回PXフォーラム 変革から成熟へーWithコロナ時代のPXがもたらすものー」を12月4日に開催します。COVID-19の影響により、今年はオンラインのみでの開催です。PX研究会会員(法人・個人)は無料。会員外の方は第1・2部で3000円となります。第1部、第2部のみ(各1500円)参加も可能です。フォーラムの詳細と申し込みは下記リンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxforum2021/

 

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PX研究会では2021年は勉強会を「PX寺子屋」と銘打ち、全国展開していく予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、すべてオンラインでの開催といたします。「第7回PX寺子屋」は11月13日(土)12:30 ~、開催です。申し込みは下記リンクからお願いします!

 

「PX概論」       原町赤十字病院  引田紅花

「摂食嚥下の学会報告」 幌西歯科(札幌市)院長 濱田浩美

https://www.pxj.or.jp/events/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


仕事に追われ、深夜に晩酌するという不健康な生活を送っているので、最近は飲むだけで健康になった感がある青汁をリピートしています。(F)