日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.187

1.プロセスを見直す方法
2.バーチャル相談のPX
3. 今後の予定

1.プロセスを見直す方法


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、今までのやり方では通用しないこと、医療現場に変化をもたらしました。20年以上にわたって医療ボランティアのマネジメントにかかわってきたKarina Vargasさんの寄稿では、プロセスを見直し、改善につなげる方法を紹介しています。PX(Patient eXperience;患者経験価値)を改善する際にも活用できます。

 

Karinaさんが長年勤めていた病院のボランティア・サービス部門のオフィスでは、パンデミックによってスタッフ全員が戦略の変更を余儀なくされました。「この医療危機のなかで、少しでも希望を持って相対するためにはもう今までのやり方は通用しない」と指摘します。数カ月間ボランティアプログラムを停止することになった機会にプロセスを分析し、選択肢を検討し、戦略を変更することができました。

その際プロセスマップを作成することにより、現在のプロセスを可視化し、可能な選択肢や方向性を検討することで考え抜かれたプランで必要な変革を導くことができたといいます。プロセスを見直すステップとして、次の3つを挙げています。

 

1.現在のプロセスのフローチャートを描く

プロセスマッピングと呼ばれる作業です。Visio や PowerPoint などのプログラムを使用してコンピュータ上で行うこともできますし、紙の上に描くこともできます。枠を描いて、プロセスの最初のステップを書き、次のステップに進むための矢印を描いていきます。単純な四角形に次のステップを示す矢印があれば大丈夫です。

2.プロセスの各ステップを見直し、代替案を検討する

「このステップはこれしかないのか?」「省略したり、アウトソーシングすることは可能か?」など、考えるきっかけとなるいくつかの問いを投げかけます。あくまで検討材料に過ぎないので、すぐに否定してはいけません。

パスタを作るフローチャートの例では、「水の代わりにトマトソースを鍋に入れたらどうでしょう?」「それでもパスタは茹で上がるでしょうか?」「鍋をコンロではなく、オーブンに入れたらどうでしょう?」といった具合に、クリエイティブな発想で代替案を考えます。1人で考えるより、チームメンバーや利害関係者を招き入れ、意見交換をします。楽しいチームビルディングの活動にもなります。

3.検討中の代替案をフローチャートに書き出す

各代替案がもたらす価値とリスクについて、時間と思考を費やします。この代替案が改善(時間や資源を削減すること)となれば、採用する価値があるかもしれません。パスタ作りのフローチャートでは、きっと誰かが伝統的なパスタ作りの工程に代わる創造的な方法を考えたのでしょう。そうでなければ、2020年にTikTokで流行した有名な焼きフェタパスタのレシピを楽しむことはできなかったでしょう(https://fedandfit.com/feta-pasta/)。

 

検討した代替案が何の変化ももたらさなかったのであれば、そもそも中身があるプロセスだったのかもしれません。少なくとも変化の可能性を探った、と言うことはできます。これによって創造力を刺激されたことになります。プロセスに何らかの変更を加える準備ができたならば、チェンジマネジメントやコミュニケーションプランニングなどのトピックに目を通すことをお勧めします。その他にも、参考になるリソースがあります。

提案された変更が複雑であれば、見直しに取りかかる前に、主要な利害関係者とアイデアをソーシャライズする必要があるかもしれません。この変更を社会的に広め、なぜこの変更が行われるのかを伝える準備をしましょう。簡単な変更であれば、フローチャートを更新することを忘れないでください。フローチャートは保存しておくと、他の人にプロセスを教える際に非常に役に立ちます。

 

Link:https://www.theberylinstitute.org/blogpost/947424/422749/Going-Off-on-a-Tangent-Exploring-the-Possibility-of-Process-Change

 

 

2. バーチャル相談のPX


医療ではCOVID-19によりオンライン診療をはじめ、バーチャルの活用が注目されています。PXにはコミュニケーションが欠かせませんが、直接面会ができない状況下でPXをどう担保すればいいのでしょうか。英国ロンドンにあるGuy’s & St ThomasNHS財団のバーチャルでの医療相談のPXに関するレポートを紹介します。

 

Guy’s & St ThomasNHS財団ではバーチャルのPXを評価するため、口腔内科における電話とビデオを使った調査を行いました。以前に検証された質問に、新たに心理測定的な質問を組み合わせることで質問票を作成。30の質問項目に、匿名性を担保したうえで対面ではない形で患者に協力をお願いしました。

115件の調査結果では、82%以上がPXを「良い」「非常に良い」と評価。69%は次の相談もバーチャルでの実施を希望しました。調査でのコメントを分析した結果、利便性、肯定的あるいは有用性を評価していて、身体検査を伴わない場合にはアクセスしやすいものの、臨床ではやはり制限が生じるとの結果でした。

バーチャルでの相談はソーシャルディスタンスの要件を満たし、病院内の人の流れを最小限に抑えることができます。歯科ではPS(Patient Satisfaction;患者満足度)に着目しており、PSレベルは高いとしています。回答の分析を受けて、多くのサービス変更が行われる予定です。例えば仮想クリニックへのレビュー、バーチャルに備えたコミュニケーションスキルトレーニング、予約が通知されるメカニカルレビューなどです。

 

バーチャルこそ高いPXが求められる傾向にあります。レポートでは、「いち早く、そのことに気づくことで対応できるようになる」としています。

Link:https://cdn.technologynetworks.com/ep/pdfs/149patient-experience-of-virtual-consultations-during-the-covid-19-pandemicaaom2021.pdf

 

 

3. 今後の予定


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では、2022年もオンライン勉強会「PX寺子屋」を開催します。3月5日(土)、7月23日(土)、11月26日(土)の3回、いずれも12:30-13:30を予定しています。内容などは決まり次第、メールマガジンやホームページでお知らせします。

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PX研究会では医療機関や企業でPXを広めるエバンジェリストとして、PXE(Patient eXperience Expert)の認定を行なっています。現在、2022年度の第4期生の募集を開始しています。PXについて体系的に学べる絶好の機会です、多くの方のエントリーをお待ちしています。詳細と申し込みはリンクからお願いします。

https://www.pxj.or.jp/pxe/

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

編集部から


仕事が終わって深夜にお酒をぐびっと飲み、さくっと眠るのが習慣化しています。既存のものに新しい価値を付加した生ジョッキ缶はすごいですね。(F)