日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.258

1.ナーシングホームでのPS測定
2.PX研究会のEX講座
3.今後の予定

1.ナーシングホームでのPS測定


米国の医療機関ではPX(patient eXperience;患者経験価値)を測定するCAHPS(Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)が政府主導の調査として行われていますが、ナーシングホームは対象外です。最近発表された2024年の最終の包括支払い方式により、CMS( The Centers for Medicare & Medicaid Services;メディケア&メディケイドサービスセンター)がナーシングホームでのPS(Patient Satisfaction;患者満足度)測定の義務付けを見送ったことがわかり、議論を引き起こしています。

ナーシングホームは、身体的・精神的理由により日常の介護や医療サービスを必要とする入所者のケアを行う施設で、高額な費用とそれに見合わないケアの質、プライバシーの配慮が足りない生活環境が問題となっています。そのためCAHPSの導入が、長年にわたって議論されてきました。CMSはCoreQ(Consolidated criteria for reporting qualitative research;質的研究報告の統合基準チェックリスト)によるQRP(Quality Reporting Program;質報告プログラム)の、居住者の満足度を測定することの利点は、それが正確に測定されるという条件付きではあるが、計り知れない価値がある、とエルズワースは言う。SNF(高度看護施設)でのPS測定を拒否しました。意見募集期間中に支持が得られなかったことを理由に挙げています。その背景には、ナーシングホームの経営側のPS測定に関連した資金と時間、大きな規制への懸念があると報じられています。

PS調査が義務づけられていないということは、民間の第三者による調査が実施できない施設は、訴訟を起こされたり、欠陥を指摘されたりする可能性が高くなります。特に組織のリソースがない小規模施設は、その対応に苦労するでしょう。

実際に、ナーシングホームの経営者はPSの測定を支持しています。「CS( Consumer Satisfaction;顧客満足度)調査はケアの質を向上させる、より有意義な解決策の一例です。このようなプロセスは、入居者と家族の選択を促進し、熟練した看護施設に質の高いケアを提供するインセンティブを与えるのに役立ちます」とシニアケアサービスを提供する非営利団体である、福音ルーテル善きサマリア人協会のCEOであるNate Schemaは話しています。

CMSは入居者の視点を考慮することを求めています。CMSによって課せられている品質保証プロセスの要件では住民の声を含む、品質のフィードバックループを持つことが求められています。実際に取り組んでいる医療関係者は顧客の声が施設運営のすべてなので、CSに注目しています。中立的な第三者を利用しなければケアを受けている人たちが気軽に発言できないかもしれないこと、質のよいケアを提供するために中立的な意見が必要であるとしています。

CoreQは、施設での滞在に満足した患者のうち、入所から100日以内に退院した患者の割合を算出するためのものです。アンケートではスタッフの質、受けたケアの質、友人や家族への施設の勧め、入居者の退院ニーズがどの程度満たされているかなどの項目について、5段階のリッカート尺度、または数字によるPS尺度を用いて、ケアに対する総合的な満足度を評価します。

しかしCMSは、CoreQが入居者の満足度を正確に測定することを関係者全員が同意したわけではないとして、CoreQの測定を進めないことを決定しました。在宅医療のPS測定が現在実施中であるにもかかわらずです。CAHPSの介護施設調査についてはすでに開発・研究が行われているといいます。


CoreQが米国政府が義務づけた測定法の一部から外された今、業界は患者の声を真に品質と満足度の指針にする機会を失った、と専門家は警告しています。PSは、すべての老人ホームがサポートできるわけではない民間の第三者調査や、不十分な代理測定によって測定され続けることになるでしょう。「ナーシングホームの入所者の満足度の測定については、すべての利害関係者の間でまだコンセンサスが得られていません」とヘルス・ディメンション・グループの公共政策・支払い改革担当副社長であるBrian Ellsworthさんは指摘します。「入所者の満足度を測定することの利点は、それが正確に測定されるという条件付きではあるが、計り知れない価値があります」

「この調査は、ナーシングホーム側の入居者中心の考えを促進するのに役立ちます。調査は、ケア提供のプロセスや運営上の問題について、医療提供者に実用的なフィードバックを与えることができます。しかし問題なのは、こうしたデータ収集手段が詳細になるほど、提供者や入居者にとって負担が大きくなり、回答率が低下することです。そうなると信頼性も低下します。これらは難しい問題であり、慎重な設計と徹底的なテストが必要です」

Brianさんは、SNFのVBPプログラムを拡大し、メディケイドやメディケア・アドバンテージ・プログラムと連携させながら質を向上させるための経済的インセンティブをより有意義なものにすべきだと考えています。

「30年以上にわたるキャリアにおいて、PSの代理となる指標を見つけなければなりませんでした。『褥瘡は重要だと思うし、地域社会への退院を成功させることも重要だと思う』と言おうとしてきたわけですが、それは決して家族や入居者自身の声ではないのです」

全文は下記からご一読ください。

Link:https://skillednursingnews.com/2023/08/with-cms-nixing-mandatory-patient-satisfaction-measure-nursing-homes-remain-behind-the-times/

2. PX研究会のEX講座


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では、「ゼロから学ぶEX講座」を新たに開講します。

EX(Employee Experience;従業員経験価値)は、従業員がその組織で働くうえで得られる体験を指します。海外では一般的な概念として定着していて、一般企業だけでなく医療機関も注力しています。日本でも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを受け、EXを重視する医療機関も出てきています。

講座は、EXの定義、PXとの関連性、EXを高める上でどのような視点が重要なのか、どのような取り組みができるかを初学者向けにまとめたものになります。PXを知っていることを前提とした内容となっています。

講師はPX研究会代表理事の曽我香織さん、理事の出江紳一さん、理事の安藤潔さんが務めます。講座は全1回、2時間で修了となります。今年は9月7日、19日、27日の3日間、いずれも18:00~20:00にオンライン開催します。医療機関だけでなく、企業に所属する方も参加できます。下記リンクから申し込みください。

Link:https://www.pxj.or.jp/ex/

もう1つ、EXに関連するイベントのご案内です。EXを高めるための施策の1っとして、職員・社員研修やコーチングを検討したい法人組織向けの無料体験会が9月26日に東京で開催されます。企業・病院の経営層や人事責任者が対象です。こちらにも代表理事の曽我香織さん、理事の安藤潔さんが登壇します。下記リンクから申し込み可能です。ぜひご参加ください!

Link:https://mypecon.com/event/hr/

3. 今後の予定


PX研究会では11月18日12:30‐13:30、オンライン勉強会「第13回PX寺子屋」を開催します。

・「PX概論」 幌西歯科医院 院長 濱田 浩美

・ゲスト講師(テーマは決まり次第ホームページにUPします) 

 岡山大学病院 医師 卒後研修センター助教 佐藤 明香

研究会会員は無料、非会員は1000円です。申し込みは下記リンクからお願いします!

https://www.pxj.or.jp/events/

***********

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

編集部から


友人が韓国旅行でスイカジュースにはまり、毎日SNSにスイカジュースをUPしているので影響を受けてスイカフラペチーノを飲みました。暑くて長い夏をこれで乗り切りたいと思います。(F)