日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.81

1.日本のPXサーベイ実施状況/がん患者への寄り添い方のヒント
2.連載「Patient Stories」第19回  試練を乗り越えた“ユニコーン”
3. 今後の予定

1.日本のPXサーベイ実施状況/がん患者への寄り添い方のヒント


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では日本の病院でPXのスコア化=PXサーベイを導入したいと考え、日本版PXサーベイを開発・実施しています。2016年に試行的にスタート、現在ではNHA(日本ホスピタルアライアンス)のPXアンケートを含めて約50病院に広がっています。サーベイの問い合わせが多く寄せられ、新たな実施病院も決まっているなか、日本版PXサーベイの概要を改めて紹介します。

 

日本版PXサーベイは、イギリスのNHS(国民保健サービス)の質問票を参考に、日本の医療環境などに合わせた60の設問からなります。入院編はバック・トランスレーション、因子分析をしており、NHSに許諾をとっています。外来編については、国立病院機構九州医療センターで2回実施しています。

設問の特徴としては、「あなたの意思は、ケアや治療方針に十分反映されたと感じましたか?」「退院後の健康面や社会面のケアをしてくれる専門職から十分なサポートを得られましたか?」など、患者が経験した事実をたずねる内容であり、客観性が高くなっています。結果のみを評価せず、患者がいつどこで、どのような経験をしたかというプロセスも評価します。「当院の食事はいかがでしたか?」といった主観が強く、結果のみを評価する一般的なPS(患者満足度)調査での設問とは大きく異なります。

また、希望する病院に対してサーベイ結果の分析業務を担っており、分析レポートを提供しています。病院全体の総合評価や強み、弱みなどを把握することができ、優先的に取り組むべき課題が明確になるため、改善策を立てやすくなります。

前回のメールマガジンで報告した11月2日開催の第2回PXフォーラムでは、サーベイ実施病院の取り組みと、パネルディスカッションが行われました。パネルディスカッションのなかで、PXサーベイ導入による成果として「客観的な指標による評価が得られる」「改善につながりやすい」といった意見が登壇者から寄せられました。

 

質問票は、PX研究会のホームページからダウンロードして無料で使用できます(使用の際は同意書への署名とサーベイ結果の報告をお願いしています)。不明な点、知りたいことなどがあれば、survey@pxj.or.jpまでお問い合わせください。

Link: https://www.pxj.or.jp/pxsurvey/

 

 

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第30回勉強会、第2回PXフォーラムでお話いただいた、ティーペック株式会社の産業カウンセラーで「がん対策推進企業アクション」認定講師である花木裕介さんは隔週で無料メールマガジンを配信しています。自身のがん患者としての治療中や治療後に感じたこと、うれしかったかかわりなどを、コミュニケーションのノウハウを交えながら紹介しています。患者家族、知人・友人、企業の人事・総務関係者、そして医療従事者にも役立つ内容です。登録は下記リンクからできます。

Link: https://www.mag2.com/m/0001317037.html

 

2.連載「Patient Stories」第19回 試練を乗り越えた“ユニコーン”


クリーブランドクリニックの患者ストーリーを紹介する連載「Patient Stories」を再開します。第19回では、大きな腫瘍を切除する難しい治療を乗り越えた、“ユニコーン”と例えられるスーパーポジティブな女性の闘病をお伝えします。

 

☆「信仰を持ち、あきらめないこと」を伝える

テレビ局の元ニュースアンカーであるBrigitte Colesさんは、心臓と肺の間に、大動脈を包むようなかたちでテニスボールサイズの腫瘍、パラガングリオーマが見つかりました。発見される数カ月前、Brigitteさんは息切れや乾いた咳、疲れ、動悸、発熱などの症状に見舞われました。複数の医師にかかり、最初は感染症という誤診から抗真菌薬を処方されましたが、症状が緩和されず、ついに腫瘍が見つかった時、治療のためにクリーブランドクリニックを紹介されました。

「さまざまな感情、困惑や恐れなどいろんなことが起きていました。この闘いがどうであれ、やるしかないと思いました」とBrigitteさんは振り返ります。

「彼女の腫瘍の位置は非常に珍しい場所にあり、手術前に何が起きているのかを確実に知ることができませんでした」と胸部外科医の Daniel Raymondさんは説明します。 Danielさんは放射線腫瘍医のGregory Videticさんと相談し、腫瘍を治療する方法を決めました。Gregoryさんは「手術後に放射線治療を行うか、最初に放射線で腫瘍を小さくしてからか。2つのアプローチのうち、少し複雑なものを選択しました」と話します。

最初に5週間の放射線治療を行いました。近くの臓器の組織を損傷することなく、腫瘍を小さくするため、Gregoryさんは3Dモデルを作成、使用することでできるだけ正確に標的を定めました。放射線により腫瘍を小さくした後、外科手術を行いましたが、声帯に指令を伝える反回神経が大動脈の周囲を通っており、腫瘍に関与していたことが手術を複雑にしました。

手術は成功し、腫瘍は除去したもののBrigitteさんは声帯の麻痺に苦しむことになりました。数カ月間の言語療法、理学療法により、正常に声が出せるように戻りました。 Danielさんは、Brigitteさんに「何か普通でない、珍しい、ユニークなもの」と定義づけられている“ユニコーン”というニックネームをつけましたが、厳しい放射線治療と手術という試練を乗り切り、現在はコミュニティエンゲージメントスペシャリストとして活躍するBrigitteさんのことを本当にユニコーンにように感じています。

「セカンドオピニオンを得ることに何の問題もないこと、そして信仰を持ち、あきらめないことを人々に伝えることが好きです」とBrigitteさんはほかの患者にアドバイスします。

出典: https://my.clevelandclinic.org/patient-stories/325-former-tv-anchor-has-tennis-ball-size-tumor-removed-near-heart-now-cancer-free

 

 

3. 今後の予定


第31回勉強会を12月14日(土)に開催します。1年の締めくくりとなり、今年の振り返りと来年に向けた活動報告を行います。

 

第31回 PX研究会 勉強会

12月14日(土)15:00-17:00

場所:イトーキ SYNQA

https://www.synqa.jp/access/

※通常と開催時間が異なります。間違えのないようにお越しください。

 

「PX概論」

「PX分科会リーダーによる活動報告」

「1年の振り返り」 公立昭和病院 事務局業務課課長 笹野孝

 

会費:勉強会参加費 1000円(研究会員は無料)

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

 

編集部から


初めて青森県を訪れました。鰺ヶ沢町の食堂でご当地食の平目の漬けが載った三食丼を食べましたが、あまりの美味しさに涙が出ました。(F)