日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.144

1.PXJ
2.医療の質向上コンソーシアム
3. 今後の予定

1.PXJ


米国のPX推進団体「The Beryl Institute」では、PXに関するさまざまな最新情報を提供しています。その1つに、PXJ(Patient Experience Journal)があります。査読付きのオープンジャーナルで、自由にダウンロードして読むことができます。これまで342のペーパーを発行し、約77万回ダウンロードされています。

COVID-19のパンデミックにより医療、患者を取り巻く環境は大きく変わりましたが、PX、患者中心という考え方はどうなのでしょうか。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した最新の論文の概要を紹介します。

 

 

《タイトル》

COVID-19パンデミック下で患者エンゲージメントを高めるための患者中心性の文化とその影響

 

《概要》

いくらかの人は、患者エンゲージメントを医療の「聖杯」(人々が探し求めている、これ以上ない目標)とみなしています。なぜなら、医療システムへの問題の見方と対処方法に革命をもたらす可能性があるからです。世界中で患者中心性の文化を普及しようとさまざまな努力が試みられてきました。それにより、患者のニーズと希望に基づいた医療サービスが行われるようになりました。

近年、医療サービスを提供する組織は、調査や医療の質の改善を含んだ幅広い活動に積極的に患者を関与させています。患者の自尊心と信頼の向上、及びコストパフォーマンスの向上など、患者エンゲージメントには多くの倫理規範と経済的、社会的な利益がありますが、これらがすべての医療サービス提供者や医療現場で認知されているわけではありません。

 

この分析では、3つの「I」フレームワーク(アイデア(idea)、利益(interest)、制度(institution))を使用して、患者中心性の医療文化を支持する2つの見識(倫理規範と経済的、社会的利益)と、反対する1つの見識(患者エンゲージメントに対する否定的な態度と認識)について、調査しています。

1つ目の見識では、納税者、利用者、および医療サービスの消費者としての役割を担うための患者エンゲージメントの動きの強化、患者への権力移譲と説明責任を補強する倫理規範を特定します。2つ目の見識では、患者エンゲージメントに関連する経済的および社会的利益を説明します。そして、なぜこれらの利益が一部の状況でのみで観察され、他の状況では観察されなかったのかも説明しています。3つ目の見識では、医療専門家が患者と患者エンゲージメントに対して抱く可能性のある否定的な態度と認識について検証します。COVID-19パンデミックの状況下で、患者エンゲージメントに対するこれら3つの見識の関連性について説明します。

 

《結論》

患者中心性の医療文化の構築には倫理規範や、社会的、経済的利益がかかわるといった有力な論拠があります。

患者中心性を実現するには、医療機関は、①患者に与えられてきたとされる表面上の主導権を特定、評価、及び解決するといった患者エンゲージメントの倫理規範を内在化させる、②それぞれの患者に応じたサポート、情報、リソース、及びガイダンス(指導)を行う、③患者を含む多様なステークホルダーと協力することにより、積極的に環境から学ぶ――ということをすべきです。

患者中心の文化に反対する見解を特定して対処し、患者中心の文化を支持する特権を与えるための多大な努力があれば、患者エンゲージメントは医療の「聖杯」および次の「大ヒット薬」になる可能性があります。

 

全文は下記リンクからご一読ください。

Link:https://pxjournal.org/journal/vol7/iss3/2/

 

 

2. 医療の質向上コンソーシアム


2月に開催された厚生労働省補助事業「第2回医療の質向上のためのコンソーシアム」で、PXに関する講演が行われました。日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会の世話人である東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター臨床疫学研究部講師の青木拓也さんが、医療の質の対人関係的な指標としてPXを紹介しています。

 

「PXを用いた医療の質評価・改善」と題した講演では、信頼性・妥当性が担保されているPXと従来のPS(Patient Satisfaction;患者満足度)との違い、国際的にPSからPXに移行している現状に触れました。諸外国では、▽各施設での継続的質改善、▽第三者評価、▽診療報酬の成果払い、▽専門医取得・更新の評価基準、▽パブリック・リポーティング――などにPXが活用されています。

また、PXの分析事例として、米国の病院向けのPXサーベイであるHCAHPSの日本語版を使い、日本ホスピタルアライアンス(NHA)と共同で開催しているサーベイについて紹介。国立病院機構九州医療センターでのPXサーベイと、PX向上のための改善活動についても紹介しています。

 

同コンソーシアムでは、PXのほかOI(Quality Improvement)といった医療の質の指標についても事業報告がありました。講演資料および動画は下記リンクから確認できます。

 

Link:https://jq-qiconf.jcqhc.or.jp/event/dai2kaiqiconf/

 

 

3. 今後の予定


2021年も引き続き、PXを学べるオンライン勉強会「PX寺子屋」を開催します。今後5月15日、8月21日、11月13日の開催を予定しています。

 

第4回PX寺子屋

・日時:2021年5月15日(土)13:00-14:00

・テーマ:「PX概論」

※詳細は決まり次第、ホームページ、当メールマガジンに掲載します

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

 

編集部から


先日、思いがけず菜の花畑を見ることができました。鹿児島に住んでいた時以来の、黄色いじゅうたんが広がる美しい風景に癒されました。(F)