日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.145

1.PXのグローバル協議会に参加!
2.ワクチン接種時のPX
3. 今後の予定

1.PXのグローバル協議会に参加!


米国のPX推進団体「The Beryl Institute」は今年、PX(Patient eXperience;患者経験価値)のグローバル基準をつくって世界で展開するため、「Global Council」(GC)を立ち上げました。日本時間の3月11日に、キックオフ・ミーティングがオンラインで開かれました。日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会も協議会メンバーに入っており、私、藤井が参加しました。

 

GCでは、アメリカ以外の国でPXを推進する組織に所属するメンバーが集まり、広い視点からPXを考え、知恵やアイデアを出し合いながら共有し、具体的なアクションにつなげていきます。参加国はブラジル、シンガポール、コロンビア、スペイン、カナダ、サウジアラビア、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、アメリカ、イスラエル、パキスタン、南アフリカ、ラトビア、ベルギー、そして日本です。

私が参加したアジア・オセアニアグループでは11人がオンラインで集まり、自己紹介と、この協議会でどんなことを実現したいのかという希望と夢を語りました。

 

 

初対面ながら旧知の友のように、距離感なく議論を交わしました。アジア・オセアニアグループでは地域柄、ドリアン(果物)は本当においしいのかという話で盛り上がりました!(写真は北欧グループの参加者です)

 

 

GCの主要なアクションとして、8つが挙げられました。

  1. 組織としてPX・HXを支持/ヘルスケアの未来をリードする
  2. 新しいPXの測定方法を開発/患者と全スタッフの声を聞く
  3. PXにおけるエビデンスのある実践をマッピング、強化する(グローバルな構成・ローカルな適用性を考慮)
  4. PXの質とアウトカムの関連を強める
  5. 研究を通じてPXの影響力を拡大する
  6. 患者パートナーシップの重要性・価値を高める
  7. より広い視点、HXから公平性と格差の問題を考える/健康をグローバルな優先事項とする
  8. エクスペリエンスの学習や知識に影響を与えるために教育・アカデミアに取り組む

 

「2.新しいPXの測定方法を開発/患者と全スタッフの声を聞く」では、

・CAHPSを超える・代わりとなる、PXをより普遍的に測定する信頼性の高い指標をつくる

・PXの世界的な実践と成果の比較ができるか

・患者の声を集める方法、ツールとリソースを拡大する

・単なる測定結果、そのフィードバック以上のもの……本来のPXとは何か

といった意見が寄せられていました。

 

 

今後GCは定期的に開催されますが、PX研究会も引き続き参画します。PXについての世界の動き、最新情報などはメールマガジンでも随時紹介していきたいと思います。

 

Global Council -The Beryl Institute

Link:https://www.theberylinstitute.org/page/GlobalCouncil

 

 

2. ワクチン接種時のPX


日本では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)へのワクチン接種が医療従事者等で始まり、1カ月となりました。4月には高齢者や基礎疾患のある人への接種が始まります。予防接種でいかにPXを高めるか? 先行してCOVID-19のワクチン接種が行われている米国の薬剤関連の雑誌「Pharmacy Times」に掲載された、テキサス大学オースティン・カレッジ・オブ・ファーマシーの臨床助教のAshley Garlingさんの寄稿を紹介します。ワクチン接種に限らず、さまざまな場面で活用できます。そしてPXに大きくかかわるのは、コミュニケーションスキルです。

 

COVID-19のワクチン接種は薬剤師が予防接種の際のPXを最適化することで、地域社会での薬局の評判を高めるだけでなく、薬剤師に対する認識を変えるものです。PXを改善するための最適な方法の1つは、優れたコミュニケーションスキルを身につけること。具体的には自己認識、信頼関係づくり、印象操作、聴取に焦点を当てたメッセージ、気持ちのこもった聞き取り、偏見・スティグマのない言葉遣いなどのコミュニケーションスキルは患者にとって最優先すべきことです。

 

☆患者の認識と予防接種

ワクチン接種を最適化するための最初のステップは、薬局全体に対して患者の認識をよくし、スタッフが優れたコミュニケーションスキルを使っているかを確認します。特に自己認識は医療提供者の間では、適応能力を高めるために重要な要素です。

ヘルスケアのマルチタスク環境では、非言語コミュニケーションが印象操作に大きくかかわることを忘れがちです。非言語コミュニケーションにはボディランゲージ、姿勢から人との距離感までが含まれます。S.U.R.E.T.YSitting at an angle<90度の位置に座る>、Uncrossing legs and arms<脚と腕を組まない>、Relaxed posture<リラックスした姿勢>、Eye contact<アイコンタクト>、appropriate Touch<適切な接触>、using Your Intuition<直感を働かせる>)はポジティブかつ心を開き、ボディランゲージを行うことをサポートします。マスクの使用により、ボディランゲージと言語コミュニケーションの必要性は最大限に高まります。声のトーンとピッチで強いメッセージを伝えることができ、声のボリュームはさまざまな感情的な影響をもたらす可能性があります。

☆予防接種時のカウンセリング

ワクチン投与の準備をしている間、ワクチン接種の際の主な3つの質問(1.このワクチンについて何か疑問はありますか 2.以前このワクチンを投与されたことがありますか 3.ワクチンの何らかの副作用に気づきましたか)を使います。その際、患者に合わせて会話し、共感を示すために聞き取る姿勢を見せながら、聴取中心のメッセージを与えることに集中します。聴取中心のメッセージは患者を見定め、最も効果的なコミュニケーションを行うために何が必要なのか、どんな言葉を使うかを決定づけます。

☆予防接種の間に役立つ言語マナー

医療における言語エチケットは、医療者が偏見を減らし、患者にとって好ましい用語を使うことで患者への配慮を示します。臨床用語、医学用語の代わりに簡単な、わかりやすい言葉を使うようにします。患者との話し合いでデリケートなトピックが発生する場合、言語エチケットを使うことで快適さと心を開いた状態を保つことができます。言語エチケットはメンタルヘルス、薬物使用、HIV,年齢と体重、性的志向、親しい人を亡くした悲しみのほか、多くのトピックについて話し合うために利用できます。

その人を第一に考えた言葉を使いながら質問を組み立てることは、患者にとってPXを高めるだけでなく、医療者にとってもやりがいといったエクスペリエンスにつながる可能性があります。「どのように話しかけてほしいですか?」とたずねることは、呼ばれたい呼称、肩書きなどを患者から引き出すのに最適です。さらに「以前このワクチンを投与されたことがありますか」の質問からは、運動習慣、仕事関連のタスク、個人的な信念など、患者中心のケアを実践するときに知っておくと有利なトピックも聞き出すことができます。包括的な質問、優先的に使う用語、言語エチケットを利用することで、予防接種という単純なタスクをPXを高める機会にすることができます。

 

Link:https://www.pharmacytimes.com/view/optimizing-patient-experience-with-immunization-counseling

 

 

3. 今後の予定


2021年も引き続き、PXを学べるオンライン勉強会「PX寺子屋」を開催します。今後5月15日、8月21日、11月13日の開催を予定。次回はPXE(Patient eXperience Expert)1期生が、自院での取り組みを紹介します!

 

第4回PX寺子屋

・日時:2021年5月15日(土)13:00-14:00

・テーマ:「PX概論」

「放射線治療科におけるPXサーベイの試み」 社会福祉法人 函館厚生院 函館五稜郭病院 放射線科 小林聖子

「PXアンケートの活用 ~PFMの発展を目指して~(仮)」函館五稜郭病院 企画情報システム課企画係 久米田聖人

 

 

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※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

 

編集部から


ついについに、これを観ました(写真を見てすぐわかった方とは語りたいです)。終盤泣いて鼻をすすっていたら周りに迷惑だと友人に怒られ、感動が半減しました。(F)