日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.272

1.第6回PXフォーラムを開催!
2.今後の予定

1.第6回PXフォーラムを開催!


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会は9日、第6回PXフォーラムを開催しました。過去最多の約200人に参加いただき、EX(Employee eXperience;従業員経験価値)をテーマとした講演やシンポジウムを行いました。

PXフォーラムは、PX(patient eXperience;患者経験価値)の認知度向上のためのイベントで、第6回となる今年は、「選ばれる医療機関の条件~EX~」を掲げました。3つの講演と2つのシンポジウムが開催されました。

講演①「PX研究会による『EX講座』総括」は、PX研究会代表理事の曽我香織さんが登壇。EX講座、EXサーベイの開発と3回実施した講座内容を紹介しました。EX講座には医療職の24人が参加し、曽我さんは「他施設と情報共有、意見交換ができたといった参加者の声が一番多かった。熱量の高い方に参加いただいた」などと振り返りました。

講演②「PXサーベイ導入報告(国立病院機構 全140病院)」は、国立病院機構九州医療センター小児外科医長・MCCセンター長で国立病院機構 九州グループ診療専門職を兼務する西本祐子さんが発表しました。国立病院機構では2004年度から2021年度まで、PS(Patient Satisfaction;患者満足度)調査を実施していましたが、今年度からPXを評価する調査項目に変更。患者サービスのさらなる向上、結果から改善点を見出すことを目指しています。設問総数が大幅に減ったことで、回答しやすくなったといいます。「活用ハンドブックを添えてサーベイ結果を各病院にフィードバックすることになっている」などと西本さんは説明。先行してPXサーベイを行ってきた九州医療センターでは、PX改善だけでなく、「職員に寄り添うプロジェクト」を開始するなど、個々を尊重し合う風土づくりに取り組んでいるといった現状報告を行いました。

やわたメディカルセンター法人本部総務人事部の地井卓朗さんが登壇した講演③「医療機関におけるEX向上の重要性とは~従業員経験価値(EX)の実施とその結果から考察する改善ポイント~」は、EXサーベイの実施について取り上げました。地井さんは、「これまで行っていた職員満足度調査をEXサーベイに切り替えることで、従業員がどんな場面で満足や不満を抱くのか、改善点が明確になるのではないかと思った」と経緯を説明しました。

同院のEXサーベイは設問数26であり、加えて属性に関する設問が5つ、フリーコメント1つという構成です。サーベイの回収方法を工夫した結果、回答率は約8割と高くなっています。肯定的な回答が多かった設問として、「職場では同僚と協力的に働くことができ、上司はサポートしてくれている」「業務を通して自身のスキルアップにつながっている」があり、否定的な回答としては「病院幹部に対しての、フィードバックや個人のキャリア形成、評価に対する不満」「業務量が多い」ということが明確になりました。「従業員のエンゲージメントを高めることが重要だが、まずは施設側から従業員に対し、よい体験を提供することがスタートだ」と地井さんは総括したうえで、EXサーベイの設問の検討や再分析が必要としました。

シンポジウム①は、PXE4期生が自院での取り組み事例を紹介しました。

飯塚病院で連携医療・緩和ケア部長を務める柏木秀行さんは、中長期計画にPXが明記されていることや、同計画の遂行にあたり、PX向上委員会を立ち上げ、初のPXサーベイ実施に触れました。サーベイ結果について、最良回答割合と相関係数を出すことで改善点を明確にしています。

次に登壇した、国立病院機構埼玉病院事務部長の菅原猛志さんは、参加病院に対してPXサーベイを毎年実施しているNHA(日本ホスピタルアライアンス)への加入を推進。今年度からPXサーベイを実施したことなどを紹介しました。「PXの推進には病院の風土やトップの理解が欠かせない」としました。

小松市民病院薬剤科主査の小川依さんは、入院患者への薬物療法や服薬指導を通して薬剤師としてPXについて考えました。「コロナ禍で患者さんは医師と話す機会が減り、患者家族から不満が出ました。人手不足が深刻で、PXだけでなくEXも下がった」と分析。PXに求めたこととして、EX向上のためにスタッフが頑張っている姿や、人間関係がよい職場であることを伝えることが重要としました。また、院内のPXワーキンググループで広報チームとしてSNS運用を行った実績を紹介。カンファレンスの様子などをインスタグラムの動画に投稿した結果、アクセス数が増え、「頑張っているスタッフにスポットを当てることでEX向上につながった」と説明しました。

シンポジウム②「EXコーチングを考える」は医師の働き方改革、バーンアウトなどによるネガティブな反応に対し、EX高めるためにコーチングを活用した事例を取り上げました。

訪問看護を展開する株式会社スペースなるの石井尚美さんは、看護師のEXの課題として「プラスのフィードバックがない。そのため自己肯定感は低く、業務はやらされ感が強い」と指摘。コーチングスキルを活用した結果、スタッフに行動変容が起きたこと、グループ内での意見交換が活性化し、目標達成に向けて一人ひとりが取り組めるようになったといったメリットを挙げました。

日本原病院診療部課長の平尾由美さんは、禁食・看取りを宣告された70代男性患者と担当STに対してコーチングを実施しました。「嚥下の困難事例ではリハビリの成功体験を感じることが少ない。このSTは自分の目標がわからなくなっていたが、コーチングにより目標が定まり、認定士を取得することとなった」などと成果を紹介しました。

特別講演「EXをさげるPX、PXをあげるEX」の詳細は、次回メールマガジンで紹介します。来年のPXフォーラムは、2024年12月7日の開催です。テーマは決まり次第、PX研究会ホームぺージや当メールマガジンで紹介します。

2. 今後の予定


※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

編集部から


PXE養成講座でおなじみのスターバックスでは、ドリンクをオーダーする際に低確率でアンケートレシートが出てきます。簡単な回答を寄せることで、トールサイズのドリンクが無料になるというものですが、最近4回連続で当該レシートが出てきました。運を使い尽くしてしまった感があります。(F)