日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.271

1.開催直前!第6回PXフォーラム
2.PXに有効な「退院ラウンジ」
3.今後の予定

1.開催直前!第6回PXフォーラム


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会は今週末の9日(土)に、第6回PXフォーラムを開催します。前回のメールマガジンでお伝えできていなかった、3つの講演の概要を紹介します。

PXフォーラムは、PX(patient eXperience;患者経験価値)の認知度向上のためのイベントとして、2018年から開催しています。第1回、第2回では、PX研究会が発足当初から取り組んできたPXサーベイの開発と実施事例を中心に発表を行いました。第3回はEX(Employee eXperience;従業員経験価値)、第4回は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応、そして昨年の第5回はグローバルにおけるPXをテーマにしました。

第6回は「選ばれる医療機関の条件~EX~」とし、第3回に続いてEXを取り上げます。3年前は米国でEXが重視されるようになった背景など、海外起点の情報でしたが、今回は日本における取り組みとなります。

EX関連の講演としては、講演①「PX研究会による『EX講座』総括」、講演③「医療機関におけるEX向上の重要性とは~従業員経験価値(EX)の実施とその結果から考察する改善ポイント~」、特別講演「EXをさげるPX、PXをあげるEX」の3つがあります。

講演①では、PX研究会が今年始めた「ゼロから学ぶEX講座」を総括します。EX講座を開講した経緯、講座のフレーム、実施した成果などを代表理事の曽我香織さんが話します。講演③は、やわたメディカルセンター(石川県小松市)の法人本部総務人事部の地井卓朗さんが登壇。同院で以前開催していた職員満足度調査からEXサーベイに切り替えた経緯や、EXサーベイの実施状況、人事評価への反映などについて報告します。D&Fクリエイツ株式会社代表取締役の矢野健一さんによる特別講演では、社員満足度と社員エンゲージメントの違いを浮き彫りにすることで現代に求められるマネジメントを提示。そのなかで必要となる社員エンゲージメント、顧客体験、企業(病院)価値のそれぞれの高め方について、事例を交えて説明していく内容となります。

PXに関する講演としては、講演②「PXサーベイ導入報告(国立病院機構 全140病院)」で、国立病院機構 九州医療センター小児外科医長・MCCセンター長で国立病院機構 九州グループ診療専門職を兼務する西本祐子さんが登壇します。国立病院機構の全140病院で実施したPXサーベイについて報告します。

PXフォーラムは12月9日(土)14:00~17:00、オンライン(zoom)での開催となります。参加費はPX研究会会員は無料、一般3000円です。申し込みは9日0:00まで、下記リンクの申し込みフォームから可能です。PXやEXを考える有意義な時間を、多くの方と過ごせることを楽しみにしております。

Link:https://www.pxj.or.jp/pxforum2023/

2. PXに有効な「退院ラウンジ」


米国の病院では、PXや病院の処理能力を向上させるため、「退院ラウンジ」のコンセプトを採用するケースが増えているといいます。このような特別なスペースは、退院手続きの間に患者がリラックスできる静かで快適な場所を提供すると同時に、病床回転率を上げ、来院患者の待ち時間を短縮することを可能にしています。米メディアプラットフォームのBecker’s Healthcareが発行する「Becker’s HOSPITAL REVIEW」の記事の概要です。

ニューヨーク市を拠点とするモンテフィオーレ・ヘルス・システムは、2021年にモーゼス・キャンパスに退院ラウンジを開設しました。病院のフロントロビーの近くにあり、退院ラウンジ・コーディネーターとして働くCNA(Certified Nurse Assistants;認定看護助手)が常駐しています。CNAは患者を病室まで迎えに行き、ラウンジまで案内します。ラウンジでは、退院を待つ間にテレビを見たり、無料の軽食を楽しんだりすることができます。CNAはその後、患者を車まで送り届け、翌日、退院計画が明確であることを確認するために患者に電話をかけています。

救急部の患者の約3分の1も退院ラウンジを利用しており、1日あたり約43人の患者に相当します。ラウンジでの平均滞在時間は約35分。開始以来、同院は1万時間、56床分のベッド数を節約したと2023年8月に発表しました。

モーゼス・キャンパスおよびウェイクフィールド・キャンパスのシニア・バイス・プレジデント兼エグゼクティブ・ディレクターであるPeter Semczukさんは、「モンテフィオーレのモーゼス・キャンパスとウェイクフィールド・キャンパスの上級副社長兼エグゼクティブ・ディレクターであるピーター・セムチャックDDSは、ニュースリリースで次のように述べています。「おまけとして、私たちはブロンクス地域の救命医療へのアクセスを高めています。この状況がベストです」。

イリノイ州パロスハイツにあるノースウェスタンメディスン・パロス病院も退院ラウンジによって臨床的、経営的に大きな利益を得ています。2022年12月にラウンジを開設して以来、救急診療部門の平均待ち時間を4時間から1時間に短縮し、診察を受けずに同部門を出てしまう患者を49%減らしました。

マサチューセッツ総合病院では、2020年に退院ラウンジを試験的に開設し、現在は毎月125人以上の患者にサービスを提供しています。無料の食事券や移動支援サービスが必要に応じて患者に提供されています。病院のリーダーによると、このスペースのおかげで救急診療部門の待ち時間が約1時間に短縮されたとのことです。

退院ラウンジの人気の高まりは、患者中心のケアと運営効率を中心とした病院の幅広い傾向を反映しています。このような革新的なスペースは、患者の快適さと満足度を高めるだけでなく、患者数の増加と人員不足のなか、今日のリーダーにとって最優先事項であるキャパシティ管理の最適化にも効果的であることが証明されています。

退院ラウンジが、通常の待合スペースとどう違うのかが気になって調べてみました。退院ラウンジの導入に共通するのは、退院患者のニーズに焦点を当てていることで、待ち時間の解消のほか、ベッドを円滑に空けるといった意図があるようです。米国のPXサーベイでは、全体的に退院支援の部分のスコアが低いといった特徴があります。PX向上の手段になりそうです。写真はニューハンプシャー州にあるダートマスヒッチコックメディカルセンターで、「患者パビリオン」という名称で呼ばれています。素敵な空間ですね!

全文は下記リンクからご一読ください。

Link:https://www.beckershospitalreview.com/care-coordination/discharge-lounges-gain-steam-in-hospitals.html

3. 今後の予定


※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

編集部から


紀伊國屋で必ず買うものが「ドイツパン」。固くて少し酸味があるので日本では好まれないかもしれませんが、噛むほどに味わい深くてクセになります。ちなみにこのサンドウィッチは、フィンランドバージョンもあります!(F)