日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.270

1.第6回PXフォーラムの見どころ・聴きどころ
2.サーバントリーダーシップがEXを向上させる?
3.今後の予定

1.第5回PXフォーラムの見どころ・聴きどころ


日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会の一大イベント、第6回PXフォーラムは12月9日にオンライン開催となります。間近に迫ったところで、今年のフォーラムの見どころ・聴きどころを紹介したいと思います。

フォーラムでは毎回PX(Patient eXperience;患者経験価値)に関連するテーマを設定し、参加者のみなさまとディスカッションを行いながらPXについて考えを深めていく場となっています。

今年のテーマは、「選ばれる医療機関の条件~EX~」。メールマガジンでは海外のPXに関する新しい取り組みを取り上げていますが、コロナ禍で多く目にするようになったのが、EX(Employee eXperience;従業員経験価値)という言葉です。前々回のメールマガジンvol.268でも、米国では燃え尽き症候群などで2020年2月以降、医療従事者が50万人以上減少したといった話題を紹介しました。日本では2024年4月から、医師の働き方改革の新制度が施行されます。それにより、さらなる人出不足や診療科によっては診療の継続が厳しくなることも考えられます。

そこで注目されているのがEXです。EXを高めることによって従業員の離職率の低下だけでなく、医療の質の向上も期待できます。海外では、業務に熱心な従業員がPXを高め、経営的にもプラスにつながるという研究結果が報告されています。

PX研究会ではEXについて、「従業員がその組織で働くうえで得られる体験」と定義づけしています。今年から「ゼロから学ぶEX講座」を開始しました。EXとは何なのかという根本的な問いから始まり、EXの可視化、改善策までを学ぶことができる内容です(2024年も開催予定です。詳細は決まり次第、ホームページやメールマガジンでお知らせします)。

PXフォーラムでは、EX向上の重要性について医療機関の事例を紹介する講演をはじめ、コミュニケーションスキルであるコーチングとEXとの関連性について語るシンポジウムを企画しています。

特別講演「EXをさげるPX、PXをあげるEX」は、ヒト中心の発想による経営戦略を展開するD&Fクリエイツ株式会社の矢野健一代表に、EXとPXの関連性について語っていただきます。患者の幸せ(=PX)と従業員の幸せ(=EX)を両立させる、さらには、お互いの向上が相乗効果となって高め合う運営ができないかを問い、その考え方と方法論を提案していただきます。参加者で議論していくなかで、医療機関において何をすればいいのかをクリアにし、共有できればと考えています。

毎年好評を得ている、PXE(Patient eXperience Expert)が自院でのPXに関する取り組みを語るシンポジウムでは飯塚病院、国立病院機構埼玉病院、小松市民病院の事例を取り上げます。

PXフォーラムは12月9日(土)14:00~17:00、オンライン(zoom)での開催となります。参加費はPX研究会会員は無料、一般3000円です。詳細および申し込みは、下記リンクからお願いします。

Link:https://www.pxj.or.jp/pxforum2023/

2. サーバントリーダーシップがEXを向上させる?


北インディアナ・ヘルスケア・システム、退役軍人局のChief of Veteran ExperienceであるPriscilla DeLeonさんは、アライドヘルス(医師以外の医療従事者)のグローバルリーダーシップに関する論文を投稿しています。Employee Engagement(従業員エンゲージメント)と仕事の満足度向上の支援に、サーバントリーダーシップがどのような役割を果たしたかについて述べています。

サーバントリーダーシップとは、リーダーが部下に対して指示や命令をするのではなく、信頼関係を重視し、部下の声に耳を傾けながら目標やビジョンを達成していく手法です。Priscilla さんの研究では、アライドヘルスのリーダーによるサーバントリーダーシップについて、ケーススタディ研究デザインを採用した質的方法論を用いています。

研究結果では、アライドヘルスのグローバルリーダーにとって、サーバントリーダーシップが非常に重要だと結論づけています。例えば、「傾聴とコミュニケーション」「リーダーシップの重要性」というテーマでは、「傾聴とコミュニケーション」はサーバントリーダーシップの特徴的行動の強い属性であり、スタッフ/従業員を巻き込んで仕事を完了させる組織のリーダーに望まれるものであるとしています。

加えて、サーバントリーダーシップの特性が、従業員の全体的なwell-beingを高める職場づくりに役立つことを認めています。また、「リーダーシップの重要性」は人の成長にコミットするというサーバントリーダーシップの行動とも一致しています。さらに「成功するためのチームづくり」にも、サーバントリーダーシップは寄与していることが指摘されています。

全文は下記リンクからご一読ください。

Link:https://theberylinstitute.org/product/the-role-of-servant-leadership-in-employee-engagement-job-satisfaction/?mkt_tok=NzUzLVpWWC03MTYAAAGPsLTwqm01G_-TU6yrRYu8y3o8-EmL27uTI5cOAQR15x4qhVAZzUsZpBEkTcbd0rw6IXccpAoMZRTnLQesrwjXEjtex58yKLl_IRa9

3. 今後の予定


※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

編集部から


冷え込みが厳しくなってきて、ここ数日は冬が近づいているのを感じます。もうすぐ近所にあるイチョウの大木の紅葉が見られそうです(写真は数年前のものです)。(F)