日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会メールマガジン/Vol.68

1.11月にUAEでPXシンポジウム開催
2.連載「Patient Stories」第9回 人生を最大限生ききる
3. 今後の予定

※来週15日(木)のメールマガジンは配信お休みします。次回は22日(木)となります。

1.11月にUAEでPXシンポジウム開催


「2nd Annual International Patient Experience Symposium」(第2回国際患者経験シンポジウム)が11月18~19日、アラブ首長国連邦(UAE)・アブダビで開催されます。

UAEでは医療提供体制の改善を柱とする「ビジョン2030」を掲げており、持続可能な環境下で優れた医療サービスの提供により個人および社会全体のヘルスケア向上を目指しています。そのためには組織中心のケアから個人中心のケアへのパラダイムシフトと、実現のためにプロセスの管理および刷新を進めていくとしています。

このような背景から、アブダビ保健省ではPXを重視し、質が高くてアクセスがよく、シームレスな医療を提供する医療改革を行っており、その一環として昨年からPXシンポジウムを開催しています。UAE保健予防省やエミレーツ看護協会、急性期後のリハビリや在宅医療サービスを展開するAmana Healthcareなどが後援。国内外のPXを専門とする医療者が集まり、エビデンスに基づいた医療提供について、ケーススタディなどを基に議論をしているとのことです。20日には「患者中心の組織文化づくりの実践的なアプローチとそのためのツール提供」「慢性疾患や難病のストレスを抱える患者と家族への効果的なコミュニケーション法」のマスタークラス(ワークショップ)が開催されます。

 

2回目となる今年は、以下のテーマが議論の中心となっています。

・イノベーションによるケアの提供とエクスペリエンスの再設計

・文化とリーダーシップの変革

・デザイン思考

・すぐれた看護のあり方

・リアルタイムにPXを測定する

・次世代の患者エンゲージメント、エンパワーメント

・介護者のエクスペリエンスと満足度

・共感とコミュニケーション

・医療崩壊への対応

・施設設計の変革:PXを高めるハードウェア

・文化と多様性をケアプログラムに組み込む

 

より詳しい内容については、以下のリンクをご確認ください。

Link: https://ipx.biiconferences.com/

 

 

2.連載「Patient Stories」第9回 人生を最大限生ききる


第9回の「Patient Stories」は末期がんの患者とその妻のストーリーです。残された自分の人生をどう生きるのか、誰もが考えることではないでしょうか。医療者のサポートにより患者の希望を叶えることができれば、患者とその家族の人生はより豊かで、充実したものとなります。

 

☆末期がん患者へのケアと思いやり

リタイア後の生活をサウスカロライナ州ノースマートルビーチの別荘で楽しんでいたAlbert (Al) Nash, Jr. さんは2016年4月27日の朝、目が覚めたら読書をしてビーチを散歩する予定でした。ふと鏡を見ると、自分の顔が黄色いのにショックを受け、妻のJeanneさんに「私を見て。黄色いんだ」と伝え、2人ですぐに地元の病院の救急部門に駆け込みました。CT撮影の結果、膵臓腫瘤が見つかりました。深刻な状況になる可能性があるとわかりました。「ノースマートルビーチの病院では対応が遅く、私はAlに、私たちは家に戻り、すぐにCleveland Clinicに行くべきだと話しました」とJeanneさんは回想します。

700マイルを運転してCleveland Clinic Fairview Hospitalの救急部門を受診し、2日後に検査結果を聞きに行くと、Albertさんは膵臓がんと告知されました。多くの医師がいるメインキャンパスに移り、化学療法と放射線治療を並行しながら6週間受けることになりましたが、5週目の終わりにはAlbertさんの身体が治療に耐え切れず、Fairview Hospitalに2週間入院。その後回復してから膵臓の一部と胆嚢、胃を切除し再建するウィップル法で手術を受け、がんを取り除きましたが、2018年1月に再発しました。2人は膵臓がんが再発の可能性が高いことを知っていました。Jeanneさんは「Alは彼の人生を取り戻したかったんです、彼はどんどん強くなっていきました」と語ります。

がんの進行遅らせる化学療法と併せて、 Cleveland Clinic Cancer Centerでの緩和ケアプログラムを紹介されました。 Cleveland Clinic の緩和ケア医 Renato Samalaさんは、「痛みの症状を和らげる治療計画を立てたことで、Albertさんは旅行をしたり、彼の人生を生き続けることができました」と説明します。翌年にかけて、AlbertさんとJeanneさんはハワイとカリフォルニア、ノースマートルビーチを11往復しました。「Renatoさんと看護師のMollyさんのケアのおかげで、私たちはビーチでの生活を楽しむことができました。旅先で体調が悪くなったときには彼らに連絡し、薬を変えたり、Alの容態がよくなるような解決方法を見つけてくれたのです」とJeanneさん。

Albertさんは2019年1月21日に、Jeanneさんと娘のAmberさんなどに見守られながら自宅で亡くなりました。Jeanneさんは今もノースマートルビーチで過ごし、ビーチでの散歩を楽しんでいます。彼女は1人ではありません、AlbertさんはJeanneさんが亡くなった後も見守ることを約束していたからです。「AlはRenatoさんとCleveland Clinicの緩和ケアチームにとても満足していました。彼らはAlを患者ではなく友人のように扱ってくれました。彼らのケアと思いやりによって、私たち夫婦は一緒に残りの時間を楽しむことができました。彼は人生を最大限、生きることができました」

 

出典:https://my.clevelandclinic.org/patient-stories/315-palliative-care-provides-relief-for-patient-during-final-stages-of-pancreatic-cancer

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日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会では今年から、PXの高い医療機関を投票によって決める「PXアワード」を開催します。医療従事者、患者、企業の方、どなたでも投票可能です。PXの高い医療機関として推薦する医療機関名と推薦理由、あなたの患者としてのストーリーをお寄せください。

PXアワード2019

3. 今後の予定


第29回勉強会は8月24日(土)の開催です。マーケティングとイノベーションを専門とする川上智子さんからCXの話をお聞きし、参加者でPXの考えを深めていきたいと思います。多くの方のご参加をお待ちしています。

 

第29回 PX研究会 勉強会

8月24日(土)15:00-17:00

場所:株式会社イトーキ SYNQA 2F

※通常と開始時間が異なります。

※終了後に京橋付近で納涼会(懇親会)を予定しています。どなたでも参加できます、参加希望の方は8月16日(金)までにPX研究会アドレスinfo@pxj.or.jp までご連絡ください。

 

「PX概論」 日本赤十字社医療事業推進本部財務課長  古源 真

「日本医療マネジメント学会発表報告」 日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会 藤井弘子

「マーケティング最前線におけるCX」 早稲田大学大学院経営管理研究科教授 川上智子

 

会費:勉強会参加費 1000円(研究会員は無料)

 

※【お知らせ】日本PX研究会について※

年会費は5000円となります。また、法人会員も受け付けております。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

 

編集部から


紹介制のお店に友人たちとディナーに行きました。数回しか訪問したことがないのに、スタッフの方が以前のことを覚えていて、さりげない気配りができるエクスペリエンスの高さが、店の価値を決めていると感じました。150年レシピが変わらないという名物のゼリーまでたどり着きましたが、食べ過ぎで胃を壊してしまいました(F)